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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第6章 街の闇 ――科学都市テクノシティ――
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第35話 俺の勝ちだぁっ!

 【科学都市テクノシティ 中央市内】


 地獄絵図と化した科学の都。白い魔物が人間を食い殺す。人間が次々と白い魔物へと変わって行く。私やバトル=アルファはそんな魔物を殺していく。


「パトラー!」

「…………!」


 クラスタが剣を私の後ろに投げる。私のすぐ後ろまで迫って来ていたグールの頭にその剣は突き刺さる。グールは呻き声を上げながら、アスファルトの地面に倒れる。

 私たちはそれぞれの武器を手に持ち、叫び声とグールの雄叫びが木霊す市街地を走る。もう少しでテクノミア=エデンだ。

 視線の先に、シールド・ゲートがある。半透明をした赤色のシールド・ゲートによって道が塞がれている。そのゲートを守るかのように、1台の低空飛行戦車と、数体のバトル=アルファ、バトル=ベータ、バトル=ベーゴマーが並んでいる。


[あ、侵入者だ! 殺せ!]


 戦車上部の蓋を開け、指揮をする人間型ロボットのバトル=コマンダーが叫ぶ。護衛のバトル=アルファ6体、バトル=ベータ4体が、私たちに発砲しながら近づいてくる。

 私は素早く手を振って、物理シールドを張る。サブマシンガンを両手に持ち、黒い人間型ロボットたちに向かって発砲する。

 クラスタが剣でバトル=アルファやバトル=ベータたちに向かって行く。


[攻撃セヨ!]


 銃弾が軍用兵器たちの身体に当たり、次々と倒れていく。剣が軍用兵器を斬り裂いていく。連合軍のロボットも、グールとほぼ同等だ。そんなに強くはない。


[ひぃ……! バトル=ベーゴマー、かかれ!]


 バトル=コマンダーが次の命令を下す。すると、飛空戦車の周囲にいたバトル=ベーゴマー6体が刃を回転させ、こっちに飛んでくる。

 1体が私のお腹を狙って飛んでくる。別の1体が首を狙う。私は両手に持つ2丁のサブマシンガンで、首を狙うバトル=ベーゴマーと、お腹を狙うバトル=ベーゴマーに向けて連射する。無数の細かい銃弾が、飛んでくる黒いコマを撃ち壊す。


[破壊セヨ!]

「…………!」


 別のバトル=ベーゴマーが軸で壁を走り、途中で空中に勢いよく飛び出す。そんなに大した動きじゃない……!

 私は冷静に身体を横に傾け、首を狙う刃を避ける。そして、私のすぐ横を通り過ぎるバトル=ベーゴマーをサブマシンガンで狙い撃つ。至近距離で銃弾を受けたそのバトル=ベーゴマーが無事に着地する事はなかった。壊れ、無残に道路に転がった。


「パトラー、危ない!」

「えっ?」


 足元に3体のバトル=ベーゴマーの残がいを転がすクラスタの声に、私ははっと振り返る。シールド・ゲートの前にある飛行戦車の銃砲がこっちを向いていた。しまった……!


[俺の勝ちだぁっ! 死ねぇッ!]


 バトル=コマンダーが手を振る。その途端、銃砲から砲弾が放たれる。当たれば――死! 私は腕を前にし、防御の体制を取る。無論、そんなことをしても変わりはなかっただろう。砲弾が当たれば、確実に死ぬ。

 だが、私の背後から誰かが飛び出す。その男性は、目にも止まらぬ速さで剣を引き抜き、一直線に飛ぶ砲弾を一刀両断にする。真っ二つになった砲弾は左右の壁にぶつかり、爆発する。


[あ、あれぇ?]

「…………!」


 彼はそのまま大きく飛ぶと、戦車の銃砲に飛び乗り、その上を走って、バトル=コマンダーに近づく。すれ違い様にその首をハネた。頭を失ったバトル=コマンダーの胴は戦車の中に消えていく。それと共に、男は戦車の中にハンドボムを放り込む。

 バトル=コマンダーを斬り倒した男が素早く戦車を飛び降り、こっちに歩いてくる。その後ろで戦車が中から爆発する。


「スロイディア将軍!」


 戦車を破壊し、こっちに歩いてくるのは、スロイディア将軍だった。私が彼の名を口にした時、背後で何かが砕ける音がした。振り返ると、そこにはコンクリートの壁に叩きつけられたバトル=ガンマ。その傘状の胴体は、大きくへこんでいた。

 建物の角から姿を現すのは、茶髪をした長身の男。クディラス将軍だ。


「パトラー、クラスタ、無事だったか」

「クディラス将軍もご無事で何よりです」


 私は一礼して言う。その時、後ろでシールド・ゲートが消える音がした。振り返って見れば、クラスタが左腕に装備した小型コンピューターを使い、ゲートを解除していた。


「先に進めそうだな」


 スロイディア将軍が言う。私は少しだけ笑みを浮かべて頷く。スロイディア将軍やクディラス将軍が無事だったことは凄く嬉しかった。

 でも、その一方で不安もあった。ピューリタンやミュート、トワイラルのことだ。3人も簡単にはやられないと思うけど……


「あの3人もテクノミア=エデンに来るさ」


 クラスタが私の不安を見透かしたかのように言う。


「クラスタ……」

「私はあの3人の強さを知ってるからな」

「…………」


 ……あまりいい話じゃないケド、クラスタがまだ連合政府・七将軍だった頃、ピューリタンやミュート、トワイラルに敗北し、それが引き金となって彼女は失脚した。彼女の心は分からないケド、3人のことをどう思っているんだろう……? 表向き、特に目立った敵対心はなさそうだけど……


「…………? パトラー、クラスタ、クディラス、あれを……」


 スロイディア将軍が急に空を指差す。空には煙が蔓延し、雲には都市で起きている火災の赤い光が反射している。そんな中、連合軍の軍艦が浮かんでいた。たった1隻で。


「1隻だけ?」

「他に見当たらないな」


 その1隻だけの軍艦は、砲撃もなにもせずにテクノシティ上空を飛んでいく。何もしてこない、たった1隻だけ、というのが不気味だった。

 なんの目的があるのかも分からない。ただただテクノシティ上空を飛ぶ。よく見れば、旋回している。やがてその軍艦はテクノミア=エデンに隠れ見えなくなってしまう。


「とにかく、まずテクノミア=エデンに向かおう。ここにいても、仕方がない」


 私たちはスロイディア将軍の言葉に頷き合い、その場を離れる。ただ、ここにいた誰もが、不気味な、何の変哲もない軍艦のことが頭から離れられないでいた。

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