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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 心の妖 ――連合軍・シンシア支部――
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第26話 クラ、スタ…たす、け……

 バトル=オーディンとコマンダー・ウォールが戦っている間に私たちはケイレイトと共に戦場となったシンシアを走る。

 ケイレイトの再プログラムしたシンシア封鎖艦隊と、シンシア島の軍勢・バトル=オーディンの軍勢。どちらもほぼ同等の兵力だが、シンシア島の軍勢はバトル=メシェディやバトル=ベーゴマーといった強力な兵員が多い。次第にシンシア封鎖艦隊の軍勢は押され始めていた。


 やがて、私たちはシンシア島の中心部からシンシア東部海岸へと出る。そこにも小型の基地。ヘリポートがある。

 だが、それと同時に陸の方から銃弾が飛んでくる。振り返れば、アサルトライフルを装備し、こっちに向かって来るバトル=アルファの軍勢。戦車まである。


「乗って!」


 私たちはサブマシンガンやアローで迎撃しながら後退し、ガンシップへと乗り込む。クラスタが運転席に座り、操縦する。

 ガンシップ機体の両側にあるプロペラが回転し、黒い小型機は空へと飛び上がる。シンシアを背にガンシップは真夜中の空を飛ぶ。


「このまま首都まで行く気!?」


 ミュートが言う。それは無理だ。ガンシップ程度の小型機で首都までは行けない。距離的に遠すぎる。エネルギーが持たない。


「コア・シップに小型の飛空艇がある。そこで乗り換えて」

「……あれか」


 シンシア島のすぐ側にシンシア封鎖艦隊の3隻ものコア・シップが浮かんでいる。コア・シップの周りには10隻以上もの軍艦が飛んでいる。軍艦同士で撃ち合っている。恐らく、もう一方の勢力はオーディン軍の……

 軍艦だけじゃない。バトル=スカイやバトル=デルタといった小型の軍用兵器まで飛んでいる。かなり数が多い。まるで食べ物に群がる小さなハエのようだ。


「……で、どのコア・シップだ?」

「えっと……」


 3隻あるコア・シップ。一体どれがバトル=オーディンのコア・シップで、どれがケイレイトのコア・シップなのだろうか……? 外見は全て同じで全く判断がつかない。


「まぁ、どれでも長距離用の小型飛空艇はあるハズだから……」


 クラスタはガンシップを一番近いコア・シップへと入れる。辺りでは砲撃・爆撃が頻発している。いつまでもフラフラ飛んでいると、こんな小型機、すぐに撃ち落される。

 飛空艇格納庫へと入るガンシップ。窓から格納庫を見れば、確かに何機も長距離用小型飛空艇が並んでいる。

 私たちはすぐにガンシップを降りると、所々にいるバトル=アルファを相手にしながら、広大な格納庫内を走る。1機の小型飛空艇に入ろうとする。

 だが、その時だった。


[ハハハハッ、もうお帰りかね!?]


 コア・シップの奥から誰かが、――いや、この声は……


「――バトル=オーディン!」


 そこにいたのはバトル=オーディンだった。シンシア支部からこのコア・シップに先回りしていたのか……!

 バトル=オーディンの斜め後ろには2人のクローン兵。彼女たちに腕を掴まれ、ひきずられるのは――


「コマンダー・ウォール!」

「……ク、ラスタ…しょ、軍……」


 かすれた声で敬愛する女性の名前を呼ぶウォールは右脚を失っていた。身体も傷だらけで、血が至る所から流れている。普通に考えれば当たり前だ。いくらウォールが強くても、何十人ものクローン兵や無数の軍用兵器と対等に戦えるハズがない。


[残念だったな、クラスタ! 貴様の今までの行動パターンを分析すれば、ここに来るのは分かっていた! 弱体なガンシップでは首都まで飛べぬ。コア・シップで必ず小型飛空艇に乗り換える。どうだ? 他の2隻のコア・シップは遠いだろう!?]

「…………!」


 クラスタは唇をぎゅっと噛み締める。このコア・シップ、ワザとシンシア島の近くを飛んでいたんだ…… 確かに残り2隻のコア・シップはやや距離があった。


[空中用軍用兵器バトル=スカイやバトル=デルタを全機飛ばし、激戦地にしておいたのも、お前たちをここに引き寄せる為だ!]

「そ、そんな……!」


 ミュートが絶望の表情を浮かべる。完全にワナだったんだ……


[今まで俺をバカにしていただろう!? パトラー=オイジュス、クラスタ、ケイレイト! 今日からその怨みを徹底的に晴らして貰おう! ハハハハハッ!!]


 そう笑い声を上げると、機械の親玉は剣を引き抜き、背後からコマンダー・ウォールを刺し貫いた! 剣を抜かれ、両腕を解放されたコマンダー・ウォールは床に手をつき、咳き込むと、血を吐き散らす。両隣にいたクローン兵たちはニヤニヤしながらそれを見ていた。


「床が汚くなりましたよぉ?」

「あはは、舐めて掃除したら、どうですか?」


 笑いながら言うクローン兵たち。コマンダー・ウォールは身体を支える腕を震わせながら、血を滴らせながら、クラスタの方に視線を向ける。


「クラ、スタ…たす、け……」


 ウォールがその先のセリフを言う事はなかった。重苦しい音が響いた。それと同時にコマンダー・ウォールの背から血が飛ぶ。

 バトル=オーディンの手に、リボルバーが握られていた。そして、クローン兵たちがアサルトライフルの銃口をコマンダー・ウォールに向け、――


「コマンダー・ウォール少将、今までお世話になりました」

「後はごゆっくり。あはは!」


 何度も鳴り響く銃撃音。無数の銃弾が、コマンダー・ウォールの身体を貫き、彼女の命をぐちゃぐちゃに破壊した。

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