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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 心の妖 ――連合軍・シンシア支部――
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第25話 機械は嫌いですか?

 私たちの周りにバトル=アルファやバトル=ベータ、バトル=ベーゴマー、バトル=フィルドが集まってくる。完全に囲まれた。ここを突破すれば、エントランスに出られたのに……!


「クラスタ、パトラー、よく戦った。だが……残念だったな」


 低空浮遊型の小型戦車に乗ったログリム。勝ち誇ったような顔で言う。無数のバトル=アルファを倒してきたケド、もう限界だ。これ以上は身体が動かない。


「ふふっ、捕まえましたか」

「……コマンダー・ウォール」


 黒いレザースーツに、肩や腕、首元に同色の装甲服を纏った1人の女性が歩み寄ってくる。赤茶色に同色の瞳をした女性軍人。クローンだ。あの人がコマンダー・ウォール?


「コマンダー・ウォール……!」

「お久しぶりです、クラスタ将軍」


 コマンダー・ウォールは笑みを浮かべ、クラスタに頭を少しだけ下げる。クラスタの元部下だろうか?


「……よし、パトラーとクラスタを拘束しろ。すぐに2人を拷問にかけ、首都攻撃への――」

「いえ、クラスタ将軍への拷問はおやめください」

「なに?」


 ログリムは怪訝な顔で戦車の斜め下にいるコマンダー・ウォールの方を向く。コマンダー・ウォールがクラスタを助けようとしている……?


「クラスタはもはや裏切り者。それに彼女なら首都攻撃の手立てを知っているだろう。彼女を拷問し、得られたデータをオーディン閣下に――」

「――却下」


 コマンダー・ウォールは狂気的な瞳でそう一言言い放つと、素早く戦車に飛び乗り、ログリムに手をかざす。その瞬間、ログリムの首と胴が離れた。おびただしい量の赤い液体が飛び散る。


「ウォール!?」

「ふふっ、あははっ! クラスタ将軍! 私はあなたのことを慕い、尊敬しております!」

[ログリム中将殺害につき、コマンダー・ウォール、お前を逮捕スル]


 指揮官用の人間型機械バトル=アレスがコマンダー・ウォール逮捕の命令を出す。その途端、バトル=アルファやバトル=ベータなどの軍用兵器は一斉にコマンダー・ウォールに銃火器を向ける。


「クラスタ将軍、機械は嫌いですか? あなたを裏切り、失脚させたバトル=オーディンが憎いでしょう? ――バトル=オーディンを、ナノテクノミアを、連合政府を、私と一緒に殺しましょう!?」


 コマンダー・ウォールが叫ぶように言った瞬間、彼女の周りにいた軍用兵器が勢いよく吹き飛ばされる。ビリビリと空気が振動する。吹き飛ばされた軍用兵器は壁に叩きつけられ、バラバラに砕ける。

 なんて強い力……! クローン最上位のスーパー・フィルド=トルーパーの中でも上位クラスだ。


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]

[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 一部の軍用兵器がやられたとは言っても、まだまだ数は多い。残った軍用兵器たちがコマンダー・ウォールを殺そうと、銃撃していく。

 コマンダー・ウォールは大きくジャンプし、その攻撃を避けつつ、バトル=アルファやバトル=ベーゴマーに向けて黄色い電撃を飛ばす。軍用兵器は次々とやられていく。……とは言っても、数が数なだけに中々減っていかない。


「パトラー将軍、今のうちに!」

「あ、うん!」


 ミュートに言われ、私は慌てて出入り口の大扉へと向かう。クラスタが扉の近くに設置されたコンピューター・パネルを操作し、ロックを解除する。灰色の鉄の扉が左右にゆっくりと開いていく。この先はエントランス。連合軍のガンシップがあるらしい。


「邪魔だァッ! あははははっ!!」


 狂気的な声を上げるコマンダー・ウォール。私はその声に背筋が冷たくなる。早く開けと、つい願ってしまう。

 大きな鋼の扉が徐々に開いていく。だが、その先にあった光景は予想だにしないものだった。


「これは……!」


 外はすっかり夜になっていた。だが、夜の光景ではなかった。赤い炎と爆炎で明るかった。冷たい風が私たちに吹き付ける。

 外部エリアでは激しい戦いが行われていた。施設周辺で連合軍の軍艦同士が激しい攻防を繰り広げていた。仲間同士で殺し合っていた。


[攻撃セヨ!]

[破壊セヨ!]


 バトル=アルファやバトル=ベータ同士の殺し合い。銃弾や砲弾が飛び交う。地上も空中も激戦地帯だった。


「パトラー、逃げて!」

「……ケイレイト!?」


 上空から、ジェット機を背負ったケイレイトが戦場に降り立つ。その身体の一部には傷があった。


「ケイレイト、これは!?」

「バトル=オーディンが戻ってきた! 封鎖艦隊とシンシアの兵は全部プログラムを書き換え、私の部下にした! 私たちが防いでる間に――」


 その瞬間、ケイレイトがいきなり横に吹き飛ぶ。後ろを振り返ると、傷だらけのコマンダー・ウォールが足を引きずりながら、こっちに歩み寄ってきていた。


「ク、クラ、スタ、将軍……」

「ウォール……!」


 その時、すぐ近くで爆音が起こる。エントランスの方を向くと、1機の大型軍用兵器がこっちに歩み寄ってきていた。6本の腕に6本の剣を持ち、ボロボロの黒いマントを羽織った機械。バトル=オーディンだ!


[おおっ、コマンダー・ウォール! 生きておったか!]

「ああ、最悪っ!」

[パトラー=オイジュス! 准将小娘にまた会うとはな! コマンダー・ウォールっ! クラスタとパトラーを捕えよ!]

「……却下」


 そう言うと、コマンダー・ウォールはバトル=オーディンに飛び掛かる。こ、これはラッキー、なのか?


[貴様もケイレイトの仲間か! せっかく俺が拾ってやったというのに!]

「“雨宿り”はもう十分なんだな、鉄クズ」


 バトル=オーディンが6本の剣を巧みに操り、コマンダー・ウォールを殺そうとする。だが、彼女は超能力でオーディンの右腕の1本を斬り壊す。斬れた所から火花が散る。

 さらに追撃とばかりにコマンダー・ウォールは強烈な衝撃でオーディンを無理やり押し倒す。倒れたオーディンの首に狙いを定め、斬撃を飛ばす。だが、それは他方向から飛んできた斬撃によって防がれる。


「オーディン将軍っ! 大丈夫ですか!?」

「……お前らッ!」


 オーディンを助けたのは施設から出てきたクローンの女の子たちだった。


「今日まで散々あなたにはひどい目に合わされた!」

「友達をたくさん殺された!」

「絶対に許さない!」

「ははッ、反乱か? クズ共!」


 憎悪のこもった目で出てきたクローンたちを睨むコマンダー・ウォール。……その表情は、どこかフィルドさんと似ていた。


[反乱はお前だ! 殺せぇっ!]

「イエッサー!」

「ははっ、みんな殺してやる。機械の親玉も、人工の魔女も!」

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