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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 心の妖 ――連合軍・シンシア支部――
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第21話 ヒュノプスが悪い!!

 【シンシア支部 最高司令室】


 クラスタ将軍…… かつての筆頭将軍にして第1b兵団の指揮官。連合政府グランド・リーダーのティワード総統に次ぐ地位を有した私の将軍。

 私は目の前のシールド・スクリーンにクラスタ将軍の姿を映し出していた。黒いレザースーツに身を包み、白いマントを纏った私の将軍。コマンダー・ヒュノプスなどといった“欠陥クローン”に毒された私の将軍……


「ふふっ、ははっ……! いつか、いつか、いつか、戻ってくると信じてましたよ」


 かつて、私も、あの忌まわしきヒュノプスも、クラスタ将軍の下で戦ってきた。私は多くの敵兵を殺し、連合政府発展の為に何人ものクローンを実験台にし、軍規律の為に見せしめにしてきた。私ほどあの1b兵団で功績を挙げたクローンはいない。

 なのに、クラスタ将軍は私のことを受け入れてくれなかった。最後には使えないバトル=アルファばかりを与え、辺境の守備を命じた。そして、ヒュノプスを側においた。


「あの事件も、全てはクラスタ将軍のためにやったこと……! ヒュノプスの、あの壊れた欠陥クローンが、なぜ、私の――! あの女さえいなければ、クラスタ将軍は! 私を愛してくれていた! 何もかも! ヒュノプスが悪い!!」


 ある時、ヒュノプスの大隊は敗走した。その時、私は逃げてくる彼女の部隊を見捨てた。軍艦を浮上させ、そして、軍艦からの砲撃によって彼女の兵の大半を殺害した。あの大隊が政府軍に降伏すれば、やっかいだからだ。クローン兵はそこそこ強いからな。

 ヒュノプスと一部の兵は生き残った。政府軍によって更なる攻撃を加えられ、壊滅的なダメージを負いながらも、辛うじて戻った。

 それが、私の転落の始まりだった。



◆◇◆



 【シンシア支部 16階 廊下】


 私のすぐ側でバトル=メシェディが倒れる。もう何回戦っただろうか? この施設にはバトル=メシェディが無数に配備されている(連合軍の主要兵はバトル=アルファなのに!)。


「最高司令室は25階にある。25-Gエリア」


 クラスタが言う。トワイラルがどこにいるのかは分からない。だから、まず最高司令室で情報を収集する予定だった。それと、シンシア支部の指揮・機能を停止にする目的もあった。つまり、ログリムとコマンダー・ウォールを倒す。


「いた! 侵入者たちだ!」

「…………!」


 また敵兵が現れる。バトル=メシェディ2体、クローン兵が1人。そして、黒のサングラスに、同色のヘッドアーマー、コートを着た大男。ハンターA型だ。


「これはラッキーだな」

「え?」


 クラスタが走り出す。ラッキー? なにが? 私とミュートはワケも分からず、ひとまず戦闘態勢に入る。今は問答している場合じゃない。

 ミュートが魔法アローを3本連続で放つ。それはハンターA型の胸に刺さる。ハンターA型は耐久力の高い生物兵器。あれぐらいじゃ死なない。

 ハンターA型が走り出す。あの筋肉質な腕の先にある拳でミュートを殴り殺す気だ! アレの物理攻撃は強烈だ。


「グォォォ――!」


 低い雄叫び。私はそんなハンターA型に向けてサブマシンガンで何十発もの銃弾を叩き込む。それでも、ハンターA型はビクともしなかった。

 その時、目の前にバトル=メシェディが飛び込んでくる。バトル=メシェディの持つハンドガンから銃弾が放たれる。それは物理シールドを張った私のお腹に当たる。痛みが走る。


「このっ!」


 私はサブマシンガンを投げ捨てると、デュランダルを引き抜きバトル=メシェディに斬りかかる。ハンドガンを握った右腕が斬れ飛ぶ。その体はやや後ろに下がる。

 だが、バトル=メシェディは無言で背中に背負っていたナイフを引き抜くと、私の方に向かて走ってくる。


[攻撃セヨ!]


 ナイフを振り上げ、飛び込んでくる。私はさっとデュランダルを投げ捨てると、灰色の床に転がったサブマシンガンを握り、発砲する。空中で銃弾を喰らったバトル=メシェディは完全に機能を停止し、火花と破片を散らしながら、床に転がる。


「いやあぁあぁぁっ!」


 ミュートの叫び声。彼女は脚をハンターA型に握られ、持ち上げられていた。ボウガンとアローはハンターA型の足元に落ちている。

 私はハンターA型とミュートの方に向かって走り出す。こんなところで捕まる気も、殺させる気もない!


「ミュートを離せぇ!」


 サブマシンガンじゃ攻撃できない。ミュートに当たるかも知れない。だったら、……


「グォォォ――!」


 サブマシンガンを捨て、素手で飛びかかる。ハンターA型はミュートを私の方に投げ、攻撃(?)してくる。私は飛んできた彼女を抱き留め、素早く床に下ろすとまた走り出す。

 私はハンターA型に突進すると見せかけ、急に彼の足元に飛び込む。そのまま滑りながら、ミュートのボウガンとアローを取る。私の動きが止まった時、私はハンターA型の背後にいた。

 ハンターA型がゆっくりと後ろを向く。その瞬間、私は限界にまで弓を引いていた。鋭い矢じりを有するアローが放たれる。それは正確にハンターA型の額を貫いた!


「グオオォォォッ!」


 お腹に響く雄叫び。ハンターA型の苦痛に満ちた声。私は間髪入れず、2発、3発と急所を狙って射ていく。

 その時、ハンターA型の後ろから頭や首に銃弾が浴びせられる。ミュートだ。彼女の手には私のサブマシンガンが握られていた。

 私は3本まとめて放つ。1本は喉に、1本は眉間に、1本は額を貫いた。ハンターA型は消えるような雄叫びを上げ、ふらりと倒れてくる。うわっ、こっちに倒れてきた!

 私は素早く横に飛び、ハンターA型の巨体の下敷きになるのを免れる。今のはちょっと危なかったかも。


「残念だったな。最後の希望であったハンターA型は倒れたぞ?」

「ひ、ひぃぃっ!」


 クラスタの声に右脚に深い刺し傷を負ったクローン兵は床を這いつくばって逃げようとする。彼女のすぐ横には斬り壊されたバトル=メシェディ。


「さて、案内してもらおうか」


 クラスタが逃げようとするクローン兵の右手を掴んで無理やり立たせる。


「トワイラル救助への近道になりそうだ」

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