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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 心の妖 ――連合軍・シンシア支部――
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第19話 ふふ、来たな

 絶望。


 それは希望が一切なく、閉じられた状態。


 だが、どんな絶望にも希望という光はある。


 希望を見つけるには、前に進むしかないんだ。


 例え、前への道が塞がれていても――



























































 【シンシア島 近海】


 小型飛空艇で首都グリードシティを出発した私たちはシンシア島の近くまでやってきた。空はどんよりとした灰色の厚い雲に覆われ、憂鬱な気分になりそうだった。


「こちら、連合政府リーダーのケイレイト。政府首都グリードシティを脱出してきた。通過を許可されたい」

[こちらシンシア防衛艦隊。指紋データとパスコードを送れ]

「イエッサー」


 ケイレイトがデータを封鎖艦隊に送る。窓からはすでに15隻もの黒い軍艦が見えている。軍艦だけじゃない。コア・シップや司令艦の姿まで見える。


[認証完了。ケイレイト将軍、お通り下さい]

「ありがとう」


 ケイレイトがニヤっと笑う。再び小型飛空艇は進み始める。あの軍艦の艦隊がこっちに向けて攻撃してきたら、私たちは一瞬で海の藻屑だろう。

 やがて、小型飛空艇はシンシア島の海岸へと着陸する。もう少し進むとシンシア支部要塞に到達できる。


「……私に出来るのはここまで」

「うん。分かってる。ここからは私たちだけで行くよ」


 ケイレイトは連合政府リーダーの1人だ。私たちと一緒にトワイラルを救出しに行くワケにはいかない。ここでお別れだ。

 私たちを小型飛空艇から降ろすと、ケイレイトだけを乗せた小型飛空艇は軍艦の艦隊の方へと戻って行った。この後、彼女は私たちの侵入を報告する。脅されて、私たちを運んだと報告する予定だ。


「さて、まずは……」


 私たちはシンシア支部がある方を見る。シンシア支部に行くにはこの崖を上らなくちゃいけない。


「行こう、パトラー将軍!」


 ミュートが元気よく言う。彼女は直前に私たち救出チームに加わった。彼女の声に私は笑みを浮かべながら、無言で頷く。トワイラルを助け出し、みんなで首都に帰還するんだ!



◆◇◆



 【シンシア支部 最高司令室】


 シンシアの封鎖艦隊から報告があった。パトラー=オイジュスがケイレイトを脅してシンシアに侵入した、と。


「ふふ、来たな。パトラー=オイジュス」


 私はこの日の為にトワイラルを生かしておいた。彼を生かしておけば、必ずや単独で乗り込んでくると思っていた。あの女はそういうところがある。単独で乗り込むのが大好きだからな。


「ログリム中将、いよいよバトル=オーディン将軍、あなたの友グレートの仇を討つときですね」

「コマンダー・ウォール…… 俺は連合政府のために戦うだけだ」

「そうですか。とにかく、兵の指揮は任せましたよ。間違っても連中を島から出しちゃマズイ」


 ログリム中将は九騎の1人。1ヶ月前、友人のグレート中将は殺害されていた。パトラー=オイジュスの師であるフィルドに(脱走したクローン兵とのウワサもあるが)。

 私は椅子を回転させ、後ろの方を向く。2人のクローン兵に両腕を抱き抱えられた若い男――トワイラルがいた。


「侵入者はパトラーを筆頭に、ミュート、クラスタ将軍の3名だそうだ」

「クッ……ミュー、ト……」


 お? 生気のなかった瞳に少し光が戻ったんじゃないのか? ま、パトラーを捕まえたら、また拷問の日々に戻るんだがな。

 パトラーを単体で拷問しても、恐らく彼女は口を割らないだろう。だが、彼女の仲間が拷問されたら、どうかな? 仲間や友がいるのはつらいな。……なぁ、ログリム中将?


「イェーガーとアサシンを解き放て。封鎖艦隊は政府軍の攻撃に用心しろ。あと少しで首都防衛のカギを握る情報が手に入るのだからな」


 ログリム中将は熱心に司令を出していた。彼は政府軍のフィルドに友人を殺されたと信じている。噂じゃ脱走クローン兵ともいわれているのにな。……もっと悪いウワサに、連合政府の極秘作戦上で殺された説もある。まぁ、私には関係のないことだが。


「トワイラル、どうだ? お前のせいでパトラーやミュートが捕まるんだぞ?」

「や、やめろ、ウォー、ル…… ミュートも、首都防衛は、知らないんだ……!」

「そうだろうな。だが、パトラーはどうかな?」

「…………ッ」


 トワイラルは悔しそうに下唇を噛み締める。自分のせいで仲間が助けに来てしまった。自分のせいで仲間が捕まって、酷い目に合わされるかもしれない。ふふっ、あははっ! 愉快な話だな!


「お前たち、トワイラルを元の独房に戻せ!」

「イエッサー!」


 2人のクローン兵はトワイラルを引きずりながら部屋から出て行く。彼のいた場所には血が付着していた。汚ねぇな。


「おい、この汚れ、なんとかしろ」

「あ、はい。では、すぐに雑巾を――」


 部屋にいたクローン兵は慌てて部屋から出て行こうとする。


「は? どこへ行く?」

「えっ? あのっ、雑巾を……」

「ふざけるな。時間がかかる」

「で、では、どうすれば……」

「頭の悪い女だ。――舐めて拭き取ればいいだろ」

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