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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 水の魔 ――資本都市フランツーシティ――
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第1話 もう私は将軍だ!

「はぁ、はぁっ……!」


 私はサブマシンガンを抱き締め、その場にうずくまる。全身ずぶ濡れで体が重く、冷たかった。遠くからは銃撃音や爆撃音が立て続けに鳴り響く。

 行かなくちゃ…… みんな戦っている。私だけがここで休んでいちゃダメだ。私も、戦わなきゃ……!

 私はその場から立ち上がり、少し間を置いて走り出す。建物と建物の間にある路地を走り、大通りに飛び出す。


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 私の進む方向にある瓦礫の山。そこにいる機械の兵士が、私の方にアサルトライフルの銃口を向け、一斉に発砲する。無数の銃弾が飛んでくる。

 私は素早く横に飛んで避けながら、物理シールドを張る。魔法発生装置。そういう機械を私は持っていた。でも、もうエネルギーは少ない。


[攻撃セヨ!]


 私はサブマシンガンから剣に持ち変える。サブマシンガンも、残り銃弾が少なかった。弾切れは時間の問題だった。

 デュランダルと呼ばれる特殊な剣で、人間型機械の1機を斬り壊す。だが、同種の機械兵士が、すぐに群がってくる。私は疲労が限界に達しつつある体に鞭打って必死に剣を振るう。


「はぁっ、はぁっ……!」


 ナイフを持った機械兵士が私に襲い掛かってくる。彼らはバトル=メシェディと呼ばれる軍用兵器。私たちと敵対する連合政府が作り出した機械だった。

 バトル=メシェディの1体が私を後ろから押し倒してくる。別のバトル=メシェディが私の前に飛んできて、ハンドガンの銃口を向ける。殺される……! 私は一瞬死を覚悟した。

 だが、そのバトル=メシェディは別方向から飛んできた飛んできた銃弾によって、頭を打ち抜かれ、火花を散らしながら倒れる。


「このっ!」


 私は後ろから私を掴んでいたバトル=メシェディの腕を無理やり振り払い、素早くサブマシンガンで銃弾を撃ち込む。ソイツは身体に無数の風穴を開け、倒れ込んだ。

 私の後ろから強化プラスチック性の装甲服を来た兵士が何人も現れ、残りのバトル=メシェディを駆逐していく。


「パトラー将軍、遅くなりました!」


 部下のクロノス中将が私に声をかけながら、2丁のリボルバーと呼ばれる強力なハンドガンを使い、バトル=メシェディを撃ち壊していく。

 私も2丁のサブマシンガンで敵の機械兵を撃っていく。撃ちながら、他の部下と同じように市街地を走ってゆく。


「戦況は?」

「連合軍とほぼ互角状態です! 敵は80万の大軍です! 市民の避難は失敗しました!」

「そうか……」


 私は唇を噛み締める。市民を助ける事は出来なかったか……


「連合軍は軍艦8隻、コア・シップ1隻でこのフランツーシティを攻撃しています!」

「敵指揮官は分かった?」

「指揮官は七将軍の1人、バトル=オーディンです!」


 その時だった。近くの建物に大きな瓦礫が飛んでくる。瓦礫が当たった建物は一気に崩れ落ち、数人の兵士とバトル=メシェディが潰される。くっ!

 私たちは大通りから大きな中央広場へと出る。そこにいたのは巨大なゼリーの怪物だった。人型に似ているが、胴体と頭部、下半身は一塊になっていた。

 連合政府の生み出した巨大な生物兵器・ウォゴプル! そして、その生物兵器のすぐ足下にいる黒い大きな人間型軍用兵器。不気味なレッド・アイが私の方を向く。バトル=オーディン!


[来たか! 准将小娘!]

「もう私は将軍だ!」

[ハハッ! 偉くなったものだな! 死ね!]


 バトル=オーディンは6本の腕で6本の剣を引き抜く。六刀流の機械のボス。連合軍の将軍。残忍な殺戮兵器!

 私もオーディンと同じように剣を引き抜き、斬りかかる。彼は剣の2本で防ぐ。大きな金属音が鳴り響く。それと同時に他の剣が私を斬り裂こうと剣を振り回す。すばやく避ける。空気を切るような音が鳴る。


[勝負は早いところ終わらせてやる! 死ぬのに苦しみはいらんだろう!]

「そうだな。あんまり雨に打たれてるとお前の身体がサビるからな」

[生意気なクソ女が!]


 1本の剣が勢いよく振り下ろされる。私は素早く横に避ける。剣は地面に大きく突き刺さる。チャンス! 私は地面に深く刺し込まれた剣を持つ腕に、剣を振りおろす。オーディンが腕を上げると同時に手首から斬られる。鋼の手と剣は地面に転がる。


[チィ!]


 残り5本の腕が激しく振り回され、その内1本の剣が私の頬をかする。私は素早く後ろに下がり、魔法発生装置が装備された黒の装甲ハンドグローブから魔法を何発も飛ばす。連続してサンダーがオーディンの身体に落ちる。


[ぐっ……!]


 私は攻撃の手を緩めず、次々と火炎弾や衝撃弾、電撃弾なども飛ばしていく。爆発や電撃音が鳴り響き、オーディンは遂に膝を着く。

 私は剣を握り締め、走り出す。煙を上げるオーディン。私は容赦なく彼の胸から首にかけて剣を貫かせる。バチバチと電気と火花が飛び散る。


[ぐっ、うぉぉぉッ!]


 オーディンは苦痛の声を上げながら、その場から逃げ出すとする。そんな機械の親玉に私は更に魔法攻撃を加える。両手から電撃派を飛ばし、その身体に浴びせる。

 だが、彼は背中から小型のジェット機を出し、それを起動させ、勢いよく空中に飛び出す。体に刺さった剣を引き抜き、投げ捨てると、夜空に消えていった。


「パトラー将軍!」

「…………!」


 ふと後ろを振り返ると、ウォゴプルのぷるぷるしたゼリー状の腕が勢いよく迫っていた。私もオーディンと同じように背負っていた小型ジェット機を使って空中に飛び上がる。ギリギリのところで腕を避ける。


「みんなは援護して!」

「パトラー将軍!?」


 私は覚悟を決め、ジェット機の速度を最速まで上げると、凄まじい勢いでウォゴプルの身体に突っ込む! ゼリーの体内にめり込んでいく。ウォゴプルを倒す方法は1つだけ。体内のコアを破壊することだけだった。


――苦しい……! 息、持つかな……!


 ぐいぐいとゼリーの塊の中を進んでいく。半透明の水色の体をしてくれているおかげでコアは見えている。中心の赤い塊がそれだ。あと少し!

 私は呼吸できない苦しさを覚えながらも、中心に辿り着く。赤いゼリーに手を突っ込む。中に硬いモノがある。生命源の魔法クリスタルだ。私はそれに電撃を浴びせながら、装甲ハンド・グローブでそれを握る。


――息が……!


 不意に魔法クリスタルが粉々に砕け散る。その途端、爆発が起こり、ゼリーはバラバラに崩れ、私の体も勢いよく外に押し出される。


「クッ……!」


 転落する寸前に私は指を鳴らし、強力なシールドを張る。体が勢いよくレンガ状の建物にぶつけられる。痛みが体を貫く。シールドを張っていなかったら、恐らく体は砕け散っていただろう。

 叩き付けられた私は地面に落ちる。すぐに立ち上がる。生命の源とコアを失ったウォゴプルはドロドロに崩れ、気化し、消滅していく。ウォゴプルの背後から、金色の朝日が見え始めていた。


「パトラー将軍、大丈夫ですか?」

「私は大丈夫だ! それよりも戦況は!?」

「我が軍が優勢です。連合軍は敗走確実です」

「そうか。ありがとう。まだ、気を抜かないように!」

「イエッサー!」


 いつの間にか雨が上がり、空には雲の裂け目から青空が見えていた。きっとこの戦いは私たちの勝利だ。驚異的な生物兵器ウォゴプルは死んだ。オーディンも重症。勝てる!

 私はクロノスや他の部下たちと共にまだ戦いの続く市街地へと走って行く。もう少しで終わりだ! この戦い、勝てる……!













































 この時、私は、いや私たちは誰も知らなかった。まさか、“あの人”がこの街にいるなんて……

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