第14話 生きていたのですか
【第11兵団 旗艦飛空艇 最高司令室】
私とケイレイトを引き渡すと、クェリア率いる軍勢はすぐに去って行った。私たちは解放され、第11兵団の旗艦飛空艇にいた。
「クラスタ、ありがとう。助かった」
「……別に。礼なんていらない」
クラスタは最高司令席に座ったまま言った。
彼女は元は連合政府七将軍の1人。連合政府にいた頃は最高位の将軍だった。七将軍筆頭として大陸南部全域を制圧し、首都に向けて進撃していた。でも、ある時、彼女は仲間に裏切られ、失脚した。そして、今は私の仲間になっている。
「でも、なんでここに?」
「お前の父親が首都に戻った時、サラマシティの状況を元老院議会に伝えた。案の定、至急、軍を派遣する事になった。派遣されたのは第12兵団とクディラスの第6兵団」
「全軍がクェリアの第12兵団、だよね?」
あの闘技場で、真っ先に攻撃してきたのは第12兵団だ。連行されるガンシップ内で、あとはクディラス将軍に任せるとか言っていたケド。
「2兵団が出撃してから、私もすぐに首都にいた第11兵団を集め、サラマシティに向かおうとした。――お前の親父が心配していたからな」
「お父さんが?」
「クェリアのこれまでの行動と、お前に対する敵意。それを心配したんだろう」
そういえばサラマシティでクェリアと最初に会った時、その場にはお父さんもいた。クェリアが私のことをどう思っているか、知っている。
私はクラスタ親衛隊の少年が持って来てくれたコーヒーを飲みながらそう思った(うわっ、このコーヒー甘すぎっ)。
「でも、なんで私とケイレイトが捕まってるって知ってたの? もし、捕まっていなかったら反乱軍扱いされちゃうケド……」
今回は本当に私がクェリアに捕まっていたからよかった。でも、もし捕まっていなかったら、クラスタは反乱軍になる。元連合政府将軍。まだまだ信頼度は低い(もちろん、私は信じているケド)。
「サラマシティに向かっていたら、クディラスが教えてくれた」
「クディラス将軍が?」
クディラス将軍はサラマシティで一緒だったあの男の人だ。率いる部隊は第6兵団。第11兵団のあとに来た軍勢だ。たぶん、今もサラマシティにいると思うケド。
「最初の潜入から戻ったのはクェリアとお前の親父。クディラスは街に残っていた」
「クディラス将軍が!?」
「お前を助ける為にだってさ」
「そうだったんだ……」
全く気がつかなかったケド、あの闘技場にいたんだ…… 観客席の方にでもいたのだろうか?
「クディラスがお前とケイレイトをガンシップに乗せ、連行していったのを見ていた。それで私は2人があの飛空艦隊にいることを知れたんだ」
私は中身のなくなったコップをそっとコーヒーを持って来てくれた少年に手渡す。クディラス将軍がいなかったら、私たちはクェリアに首都まで連行されていたんだな……
「パトラー将軍、クラスタ中将、南東より大型飛空艇1隻、中型飛空艇4隻がやってきます」
「えっ!? まさかクェリアの軍!?」
「いや、フランツーシティの第11兵団だ。フランツーでの作業が終わったから合流するように言っていたんだ」
私たちは光の射し込む窓から南東の方を見る。確かに私の旗艦だ。大型飛空艇1隻に中型飛空艇4隻。……来るときはクロノスもいたんだけどな……
◆◇◆
【科学都市テクノシティ テクノミア・エデン】
サラマシティの遥か北にある科学都市。サラマシティから脱出したわたしは小型飛空艇を降り、巨大なタワーの中腹から建物の内部へと入る。
建物の中は不気味な世界だった。壁は青白く光り、複雑な計算式や図形が映し出されている。まさにテクノロジーの都に相応しい芸術だ。
[メディデント閣下、生きていたのですか]
廊下を歩いていると、どこからもなく不気味な機械音が鳴り響く。この建物を支配する人工知能テクノミアの声だ。
「死んだかと思っていたのか?」
[ふふ、まさか。私はあなたのお帰りをお待ちしておりましたのよ]
「……クローン・フィルドを利用した虚騎作戦が失敗した。フィルドの悪名を高め、指名手配するつもりだったのだがな」
[そうですか。でも、いいじゃないですか。私たちの計画にフィルドが必要で?]
「いや、いらんな」
わたしは扉の横にあるパネルに触れ、シールドを解除する。小さな四角形の個室に入り、ベッドに寝転がる。その途端、わたしの意識は消えてなくなる。これも科学技術の賜物だな……
[メディデント、あなたは律儀に背負い過ぎよ]
――そうか?
[ええ…… フィルドを欲するのはあなたじゃないわ。パトフォーやティワードよ。連合政府の支配者たち]
――重要な雇い主(クライアント)だ。
[いいえ、あなたを食い物にする愚か者よ]
――ホフェットが言ってたな。力ないヤツは食い物だと。
[パトフォーになんの力があるのかしら? あなたはこの世界で最も立派よ。世界の真の支配者はあなたが相応しい]
――それは違うな。真の支配者は、――……
[ゆっくり休んで、メディデント。“審判”が訪れるその日まで――]




