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黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 土の魔 ――傭兵都市サラマシティ――
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第11話 マズイ、マズイぞ!?

 【サラマシティ 闘技場】


 それは虐殺だった。


「死にたくないっ……!」

「3人目ぇっ!」

[攻撃セヨ!]


 夜のサラマ闘技場で行われる虐殺。連合政府軍用兵器のチームと、賞金稼ぎ・傭兵チームと、私たち奴隷チームの試合という名の虐殺……


「いやぁっ!」

「ははっ、殺せ!」

[破壊セヨ!]


 私はサブマシンガンを握り、特殊なバトル=アルファを破壊していくが、これじゃキリがない。しかも、特殊なバトル=アルファは肩につけた小型ジェット機で空を飛びまわっていた。これじゃ、もはや1機1機が手強い。

 奴隷チームはバラバラに逃げ出す。そんな彼らを狩るのは連合政府チーム。そして、何もかも倒していくのが賞金稼ぎチーム。


[攻撃セヨ!]

「いやぁっ!」

「クッ……!」


 このままじゃいつか全滅しちゃう! 私がここにいる連合政府軍用兵器と賞金稼ぎを倒すのはどうやっても、不可能だ。


「あーっはっはっは! 男なんてみんな死んじゃえーっ!」


 そう叫びながら大きな鎌で人を人も簡単に斬り裂いていく女賞金稼ぎがいた。傭兵も機械兵もまとめて斬っていく。


「フン、快楽の死神リアーか」

「…………! お前は……賞金稼ぎのディズトロイ!」


 私の横にいるのは、黒色のシャツにジーンズを着た軽装の男。その腕には鋭い刺青タトゥーが彫られていた。

 ディズトロイは6ヶ月前、レーフェンスシティの防衛師団本部要塞に侵入し、マグフェルト総統を人質にした挙句、おカネを奪って逃げた男だ。その際にかつての国際政府女性将軍サファティを拷問した。


「どこの女かと思えば、バカラー少将か。レーフェンスでは会えずじまいだったな。まぁ、お前に用はねぇ」

「そうか。でも、私は用があるっ! お前を捕まえ――」


 だが、私が言い終わる前に彼はリアーに向かっていく。その手には2丁の銀色をしたハンドガン……いや、リボルバーが握られていた。


「……あら、ディズトロイじゃない。あんたも私の首を?」

「魔物を狩るだけだ、“サキュバス”。死体でも連合政府はカネをくれるからな」


 サキュバス? サキュバスは人間女性と全く同じ姿をした生き物だ。いや、違う部分もある。彼女たちの背には黒い翼がある。そして、男性の精液を吸い、それで魔法を使う。

 リアーは黒い翼を羽ばたかせ、空に飛び上がる。あの大鎌を持った女性賞金稼ぎってサキュバスだったんだ……!


「いや、それよりも、私は……」


 ディズトロイを捕まえてる場合じゃない。今は市民を守ることが先だ! こんなことをしている間にも市民が殺される……!

 私はサブマシンガンの銃口を、水色をした新型バトル=アルファに向け、発砲する。1機でも多く倒せば、それだけみんなが助かる確率が増えるっ!

 他の新型バトル=アルファを破壊しようと、走り出した時だった。


「お、おい、ありゃなんだ!?」


 私はふと夜空を見上げる。そこにあったのは、数隻の中型飛空艇と、そこから飛んでくる政府軍のガンシップだった。

 数機のガンシップは闘技場内に乱入してくると、機体の左右に取り付けられたガトリングガンで激しく銃撃を加えていく。……それに市民が巻き込まれていく。


「クソッ、ありゃクェリア率いる政府特殊軍の強襲部隊だぞ!」

「ぐぁっ!」

「いやぁっ!」


 ――クェリア率いる部隊の攻撃。それは、無差別攻撃だった。



◆◇◆



 【闘技場 VIP席】


 な、なんだ、ありゃ……!? 俺は闘技場に侵入してきた政府軍の姿を呆然と見ていた。何機もの白いガンシップが激しい銃撃を加えながら降りてくる。


「コ、コマンド総督、クェリア率いる部隊ですぞっ! しかも、すでにサラマシティ全域に攻撃がっ……!」

「お、おおっ!?」


 マズイ、マズイぞ!? クェリアといえば、政府特殊軍将軍の中でも、特に冷酷無比といわれておるではないかっ! 捕まったら死ぬまで拷問されるかも知れん!

 俺の視界にふとケイレイトの姿が入る。そうだ……


「ケイレイト」

「…………?」


 俺はケイレイトが振り向くとほぼ同時に彼女の体を無理やり突き飛ばし、VIP席から突き落とす。彼女は悲鳴を上げながら落ちて行った。おとり作戦だ。クェリアがあっちに気を取られている隙に、我らは……


「コモット、さっさと逃げるぞ」

「サラマシティは……」

「ホフェットには悪いが、俺の命には変えられん。我らだけで撤収しようではないか」


 コモットと俺はさっさとVIP席を後にし、闘技場の内部へと戻る。闘技場の内部では無数のバトル=アルファやバトル=ベータなどが走り回っていた。彼らは次々と外へと出て行く。

 一方、我らは飛空艇離着陸場に停めてあった黒色の小型飛空艇へと入って行く。グズグズしていると、クェリアに捕まってしまう。


[あ、コマンド総督]

「国際政府のクェリア率いる部隊が攻めてきたようだな」

[中型飛空艇10隻による総攻撃です。兵力は10万ほどと思われ、――]

「おお、それは危ないな。すぐに脱出しよう。ホープ州のダーク・サンクチュアリに向かえ」

[イエッサー!]


 ダーク・サンクチュアリまで行けば安全だ。あそこには巨大な城がある。司令艦1隻、コア・シップ10隻、軍艦30隻による防衛。クェリア程度の軍勢では突破できん。

 小型飛空艇は動き出し、政府軍の攻撃を受けて炎上する街中を飛ぶ。あっという間にサラマシティを飛び抜け、山岳地帯へと入って行く。


「ケイレイトは大丈夫ですかね……?」

「さぁな。俺の知った事か」

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