表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い夢と白い夢Ⅲ ――攻撃の科学――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 土の魔 ――傭兵都市サラマシティ――
10/49

第9話 これはゲームと言う名の――処刑です

 【サラマシティ 保安連隊本部要塞(闘技場北部エリア) 会議室】


 サラマシティ中央部にあるこの闘技場は、サラマシティ軍の本部要塞でもあった。サラマ闘技場内には奴隷と共に無数の軍用兵器が収容されていた。


「パトラー=オイジュスは直ちに処刑するべきだ!」


 財閥連合総督のコマンドが声を張り上げて言う。


「いえ、せっかくの闘技場。我らナノテクノミアの新型兵器を使って盛大に殺しましょう」


 ナノテクノミアの総帥メディデントは、今日使われた新型軍用兵器を使って殺す事を提案する。どうでもいいが、逃げた奴隷は全員捕まえた。


「殺すんですか……?」


 パトラーを捕まえた張本人のケイレイトが控えめに言う。残虐な連合政府リーダーの中で唯一、心あるヤツかもな。

 以前はクラスタという七将軍もいた。彼女は政府特殊軍の上級幹部に対してはきつかったが、市民に対しては優しい方だった。今はもういねぇケド。


「当たり前だ!」

「そもそも殺し方を話し合っているのです。黙っていなさい」


 コマンドとメディデントに反論されたケイレイトは俯いて黙り込む。ケイレイトは所詮、力なき連合政府リーダー。彼らに対抗できるだけの力はない。


「観衆はショーを熱望しています。そこで、チーム戦はどうでしょう?」

「チーム戦?」

「奴隷チームと、賞金稼ぎ・傭兵チームと、我ら連合軍チーム…… 無論、これは事実上の処刑ではありますが」

「盛大に殺すのか」

「ええ…… 政府軍の希望が砕け散る大切な行事。我ら連合軍にとっては記念すべき日となるのですからね……」


 ケイレイトは眉を潜めるが、黙ったまま。メタルメカは何も言わない。あの黒いフェイス・ガードの下ではどんな表情を浮かべているのやら……


「バトル・ラインのホフェット殿は何か意見ありますかな?」


 メディデントが俺の方を向き、今更意見を求めてくる。いや、これは形式的なものか。俺は今までどんな会議でも基本的に何も言わなかったからな。形式、聞いてるだけだ。

 ……にしても、この様子だとコイツら気づいてねぇな。頭の悪い出しゃばりは早死にするぞ? メディデントさんよ。


「ないぜ」

「そうですか…… では、明日の夜、素晴らしい“ゲーム”を始めましょう。コマンド閣下は傭兵と賞金稼ぎを募集してください。会議はここまでです。お疲れ様でした」


 俺はさっさと席を立つと、アヴァナプタとプロパネの2人を伴って会議室から出て行く。あーあ、知らね。アイツら、死んだな。


「アヴァナプタ、プロパネ。すぐに部隊を撤収させ、この街から撤収するぞ」

「えっ? なぜですか?」

「……了解、ホフェット閣下」


 ったく。アヴァナプタも分かってねぇな。この街がもう滅びゆく事に気付いてない。分かったのは、俺とプロパネだけか。メタルメカも気づいてるだろうが、アイツも何も言わんだろうな。


「気付いてないか? パトラーの横にいた女」

「女?」

「アレは政府特殊軍将軍、クェリアだ。更にその横にはクディラスとライト」

「ええっ!? じゃ、まさか……!」

「今頃、兵を整えてるだろう。明日の夜辺りに攻めて来るかもな。特に元老院の副議長がこの街の実態を話していれば、大軍で攻めてくる」


 巻き込まれると厄介だからな。だから、今の内に撤収する。コマンドとメディデントは囮だ。全員で一緒に逃げ出したら、追撃されかねん。

 メディデント、コマンド、ケイレイト。お前たちも、ここまでだな。コメットやララーベルのように死んでいくだろう。



◆◇◆



 【サラマシティ 保安連隊本部要塞 監獄】


 サラマシティの監獄…… まさか闘技場内にこんな施設があるなんて意外だ。監獄は独房というワケではなく、私と一緒に大勢の人々が入れられていた。たぶん、犯罪者ではなく、一般の人間…… 女性や子供も多い。男性が少ないのは、……


「国際政府軍の人、ですか?」


 1人の女性が訪ねてくる。私は小さく頷いた。政府軍の人間だけど、今の私には何も出来ない。


「あなたは……」

「私はリオアという街にいました。でも、連合軍によって…… ……夫と息子は昨日、……」


 その女性の瞳に光はない。彼女は消えそうな声で話してくれた。連合軍はグランド州北部にある3つの街から人々を連れ去り、奴隷にしたらしい。奴隷たちの運命は……

 政府を名乗る彼らが、自らの軍を使い、人々を奴隷にする…… それが連合政府。許されていいハズがない。酷すぎる……!


「絶対に許さない……!」


 私はぐっと拳を握る。


「だったら力を持てばいいのです」


 鉄格子の外から誰かが声をかけてくる。連合政府リーダーのメディデント……!


「偽りの軍隊の指揮官か」

「偽りの軍隊? 何を言っているのです? バカラー将軍」

「人を守るハズの軍隊を使って、人を奴隷にし、不幸にする軍隊。それがお前たち連合軍だ」

「……連合軍が守るのは連合政府。すなわち国、です」

「守るモノを、間違えてる……!」


 私はメディデントを睨みながら言った。軍隊が守るのは、人か国か―― 私は少なくとも、人を守るものだと信じている。人を守らない軍隊は、ただの武装した集団だ。


「まぁ、そんな話はどうでもいいのです。――今日の夜、あなた方には1つのゲームに参加して頂きます」

「ゲーム?」

「ルールは簡単。相手の2チームを1人残らず叩き潰せばいいのです。奴隷VS傭兵・賞金稼ぎVS連合軍。3チームによるサバイバルです」


 今度は私たちを見世物にする気だ! 私たちが殺されていく様子を娯楽にする気だ!


「その2チームに勝てば解放してくれるのか?」

「ええ、そうです……と言いたいところですが、まず勝てません」

「…………ッ!」

「これはゲームと言う名の――処刑です」

軍隊の使命ってなんなんでしょうね? パトラーからすれば「市民を守る組織」なんでしょうが、連合政府からすれば「国家を守る組織」なんですよね。

でも、国際政府軍は本当に「市民を守る組織」かどうかは不明ですよ。これは軍人によって考え方は違います。

国家を守るのか、市民を守るのか。――国家のために市民を犠牲にすることは許されるのか? ――市民のために国家を犠牲にしてもいいのか? 難しい話ですよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ