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霊魂歌姫(魂の歌姫/サイバー・シンガー)  作者: 林 若川(はやし わかがわ/Rhine Jackson)
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第7話 法の絞首縄

星暦六二〇三年、冬。

秋に発表されたあの『遁世詠詩』が全都市に引き起こした美学的崩壊以来、この幽霊新曲は武江京の地下データストリームの中で、まるで疫病のように数ヶ月にわたって蔓延し続けていた。下京区に電子廃棄物の混じった刺すような最初の冬雪が舞い降りた時、あの廃ガレージのシャッターが、ついに七度目の深夜、無慈悲に打ち鳴らされた。

それは、ファンが送る合図のノックではない。重く、規則正しく、権威の圧迫感を湛えた三回の金属的な打撃音だった。

扉が開くと、酸性雨と残雪の中に、濃いグレーのスーツを纏った三人の男が立っていた。先頭の男が、微かな青い光を放つホログラムの書類を差し出す。その声は、精密に計算された合成音声のようだった。

「緋様。我々は『国響メディア』法務部を代表し、貴殿に対し、正式に『魂の資産保全命令(SAPO = Soul Asset Preservation Order)』を執行いたします」

そのホログラム書類の標題には、赫然とこう記されていた。

『ブランド情動資産の不正流用および派生価値の不法取得に関する訴状』。

「魂の資産?」誠が書類を奪い取り、怒鳴り声を上げた。「この曲の周波数はすべて新しく録り直したものだ。どこに侵害の余地がある!」

「契約の条項、ならびに補充規定を参照してください」弁護士が眼鏡を押し上げると、レンズにマイクロ秒単位のデータ流が走った。「緋様は在職期間中、四年にわたる『情緒モード・トレーニング』を受けられました。彼女が『遁世詠詩』において表現した『神聖さ』や『悲劇性』は、本質的に国響が百億もの演算能力を投じて訓練した特定周波数の導出物です。要するに、彼女の『魂の質感』すら、国響の知財派生物に過ぎない」

弁護士は淡々と背を向け、冷酷に告げる。「これは法廷の臨時差し止め命令です。訴訟期間中、『暁』の全チャンネルは即時閉鎖され、いかなる音声信号の発生も禁じられます。あなたの『音声データ』は、現在、司法凍結下にあります」

弁護士軍団が雨幕の向こうへ消え去った後、ガレージの中は死のような静寂に包まれた。

「あいつら、君を精神的に去勢するつもりだ」

律が沈黙を破った。彼は部屋の隅へ歩み寄り、積み上がった廃パーツの底から、防塵布に包まれた一着の黒いスーツを取り出した。

律は、そのスーツの凛とした仕立てのラインをなぞった。それはかつて、国響法務部のスター弁護士だった頃の彼の『鎧』だった。彼はかつて、自らの手で法理の穴を塞ぎ、人間をデータへと変える無数の『奴隷契約』を締結させてきたのだ。

「僕はかつて、君のような人間を地獄へ送った。……それが罪だ」律は緋を真っ直ぐに見据えた。その瞳には火が灯っている。高階市民の証である『銀翼(シルバー・ウィング)』のバングルが、越権行為によって警告の赤を灯したその瞬間、彼の背筋は出鞘の残剣のごとく鋭く直立した。「アケ、これは僕の唯一の贖罪のチャンスだ。僕は『暁』の代理人として、この腐りきった体制に宣戦布告する」

彼は緋を振り返り、かつてないほど厳粛な口調で続けた。「国響は『非公開審理(クローズド・セッション)』を申請した。君は、誰の目にも触れないブラックボックスの中で、国響の全アルゴリズム論理と対峙することになる。彼らは、君の声が単なる『アルゴリズムの複製(コピー)』であることを証明しようとするだろう」

「誰も私を見ることができず、誰も私を聴くことができない……?」緋が静かに問い返す。指先は、充血し、熱を帯びた自分の喉のラインをなぞっていた。

「法的にはそうだ」律はホログラム画面を展開し、指先を狂ったように走らせた。しかし、その眼差しには、かつて抱いたことのない、芸術に属する狂熱が閃いていた。「だが、奴らは忘れている。熱を感じないはずの純白の大理石の壁でさえ、振動するということを」

緋は微かに目を見張った。次の瞬間、あの氷のような訴状を見つめる。グリュ語の厳格さ、ラトレン語の神聖。それらがその瞬間、彼女の骨に刻まれた鋼へと変わった。

「楽、あんたの古語の組み込み、もっと難易度を上げられる?」緋が傍らの楽に声をかけた。

楽は一瞬呆気にとられたが、すぐに深く得心のいった、狂気に満ちた笑みを浮かべた。「あんたが歌うってんなら、極限まで足してやるよ。あのマシンのプロセッサを、その場で焼き切ってやる」

「ええ、存分に」緋は律を真っ直ぐに見據えた。黒いスーツを纏った今の彼は、近寄りがたいほどのプロフェッショナルな威圧感を放っている。

「忘れないで、」律は特訓を控えたその場で緋の手を強く抑え、声を低くした。「AI審判官は、すでに照合を始めている。歌唱の中に、国響に訓練された『完璧な倍音』がわずかでも混じれば、それはデータ盗用と判定される。君は、自分自身の発声構造を徹底的に打ち砕かなければならない」

「律、そのスーツを着なさい」緋の声は、闇の中で恐ろしいほど透明に響いた。「彼らが私の魂を裁こうと言うなら、私はあのブラックボックスの中で、この街のコードが焼き切れるまで、歌い尽くしてやるわ」

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