第8話『回復術師ルミナス』
──ルミナスには立ち上がる為の脚がある。
私はそう伝えたかった。
紛い物の脚なんかじゃない。
それは……私だけで充分なんだ。
これからどうにでもなる。
事実、私に出来る励ましなんてこの程度。
「お姉さん……脚がぁ……」
「魔獣に喰い潰されたのよ」
「なんでそんなことになるのさ!」
「裏切られたからよ」
「おかしいよ…それでまともでいれる訳ないじゃないか」
「そうね、私はまともじゃない」
「お姉さんの方がずっと辛いよ」
「そうでもないのよね」
「嘘だよ……そんな訳ない!」
「今はね、大事な仲間がいるの」
「……仲間!?」
「大切なものがあるから私はまだ頑張れる」
少し痩せ我慢だったかな。
時々、失った腕や脚が痛む。
ルーカスは幻肢痛って言ってたっけ。
魔獣に襲われた恐怖を思い出す。
泣きたくなるような夜もある。
だけど、私はまだやれるんだ。
──私に出来る復讐がある。
仲間も組織だって今では私の大切なもの。
ルミナスだっていつかその時がくる。
それを教えてあげた。
未来はルミナスのものなんだよ。
そんなに悲観しなくてもいいじゃない。
「お姉さんなら信用してもいいかな」
「この際だから私でもいいけど……」
「ボク……お姉さんに着いて行くよ!」
「いや……それはダメかも……」
「どうしてだよ。ボクが子供だからか!?」
「私……反乱軍の王なのよ」
「もしかして国王の敵!?」
「そういうことになるわね」
信頼してくれるのは別に良い。
嬉しくない訳じゃないから。
ただ……私に着いてくるのは話しが別だ。
正直に言うと、ぜひ仲間になってほしい。
だけど、そうなってほしくもないんだ。
ルミナスの未来を奪うことになる。
私のような復讐者が側に居てはいけないんだ。
まだ分別がつかない内に反乱なんて……。
ましては、命を賭けろなんて言える訳もない。
私は……どうすればいいんだ。
「ボクはもしかしたら国王に嵌められたかもしれないんだ……」
「──何ですって!?」
「国王が編成したパーティだったんだよ」
「きな臭いわね……」
「この森に来た途端に追放の話しになったんだ」
「理由を聞いてもいいかしら?」
「どうやらボクは無能らしいんだよ」
ヒーラーであるルミナス。
戦い方が激しいパーティだったらしい。
回復魔法を唱え続けるのも大変だったとか。
──自動回復魔法。
その回復を行うことで戦況を維持していた。
「思えばそこから狂いだしたのかも」
「どう狂ったのよ」
「仲間たちが慢心してしまったんだ」
「自分たちの実力で魔物を倒したって錯覚したのね」
「おまけにお前は何もしていないって言われたさ」
「酷い話しよね」
ルミナスは国王も怪しいと睨んでいた。
最初からあまり優遇されてなかったみたい。
余り物の無能だと。
後からパーティリーダーに言われていたらしい。
──要らなくなったら好きにしろ。
その約束だったから、追放を言い渡された。
国王は最初からルミナスを殺すつもりだったのでは。
そんな意図を孕んでいる可能性がある。
何の因果かな。
私と関わる人は、どこかしら国王に因縁がある。
ルーカスもそう。
ヴァルもそうだった。
そして……子供のルミナスだって。
──パーティ追放の裏切り。
──国王が企んでいたかもしれない暗殺。
放ってはおけない。
見放してしまったら、また命を狙われてしまうか!?
連れては行きたいない。
だけど……。
私はルミナスをこれ以上、不幸な目には遭わせたくたい。
「私のしようとしてることが分かっているの?」
「何となくだけど……」
「──国王を殺すのよ」
「でも……行きたいよ。もう独りぼっちは嫌だ!」
「しょーがない。連れて行くわ」
「あり……がとぅお姉さん」
「お姉さんは辞めてもらえるかしら。私はアリスよ」
「分かりましたアリス様!」
「今日から私の部下なんだからしっかりしてね」
やってしまった。
何だかんだこうなってしまうのかと落胆した。
ルミナスの引き抜きに成功。
晴れてproject Aliceの仲間入り。
ルーカスが横でほくそ笑んでいた。
いつか……殴り飛ばしてやる。
そう違うことにした。
ルーカスの思惑通り。
手玉に取られているようでシャクに触るのだ。
だけど、私は後悔していない。
それはルミナスの為でもある。
自分で見つけてほしい。
自分自身が成すべきことを。
私はまだその途中なんだけどね。
ヴァルだって歓迎してくれるだろう。
こんな貴族の女を迎え入れるだけの度量がある。
ごめんヴァル。
凄腕のヒーラーかどうかなんて私は知らない。
でも放って置けなかったんだ。
──これは、私のわがままだ。
ダメだった時の責任は全て私にある。
許されないだろうけど……。
命をもって償うぐらいの気持ちはあるんだから。
まずは……説得からだな。
基地に帰る足取りが重たい……。
残る問題が後一つ。
タンク役をどうするのか。
これだけは、誰も情報を持っていない。
単純な自力。
私がどうにかしなければならない。
ルミナスのことは、全てルーカスの予定調和。
助けられているだけだ。
今度は自分自身。
根気よく探さないと……。
とは言っても私は、タンクの重要性が全く分からない。
攻撃を受け止める役職なんだろうか。
それもそれでなんか地味だな。
森からの帰り道。
ルーカスにタンクの重要性について教えてもらう。
「タンク……ねぇ……」
「そうやってまたバカにするのよね」
「失礼だな。たまにしかバカにしてないじゃないか」
「気のせいかしら。いつもバカにしてますけど?」
「気のせいだと嬉しいね」
「無駄口はいいわ。早く教えて」
「攻撃の惹きつけ」
「それで?」
「タフな体力」
「肉体はガッチリめなのね……」
「おや?好みだったかな?」
うるさいぞ、セクハラルーカスめ。
今は健全な男の子も同行していることを忘れるな。
ターゲット集中効果ってところよね。
敵の誘導には最適なんだろう。
ヒーラーと合わされば、確かに組織の耐久力が増す。
ぜひウチに欲しい人材だ。
都合良く、国に仇なすタンクがいればだけどね。
タンクなんて役職は、別に人気ってほどでもない。
あまりやりたくない職業だろう。
成り手がいない。
レアな役職であることは重々承知のこと。
簡単なことじゃないな……。
代わりになれる職業とかないのか。
ルーカスに聞きたい。
でも聞きづらい。
これ以上は、あまり頼りたくない。
下手にヒントを貰うと、私が私で無くなりそうだ。
たまには自分で考える。
これでも私は成長しているんだ。
「作戦前の仕込みは一つクリア出来たわね」
「そうだね」
「この先は自分で考えるわ」
「僕は口を出してないけどね」
「そうだったわね、忘れてた」
「全てはアリスの行動の果てさ」
「そうよね。いつだって私が決めてきたんだから」
無事に森を抜けた。
早くヴァルと合流しておきたい。
今後についても会議が必要なんだ。
マリアの軍の強さがいかほどか。
中隊を呼ばれた時の対処。
考えなければならないことは、山ほどあるというのに。
基地に帰るのが、何だか待ち遠しいな。
お読みいただき、ありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、『ブックマーク』と下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!
※感想、レビュー等、お気軽にお願いします。




