第6話『project Alice』
──ヴァルは、ただ黙っていた。
私の出す答えを聞くために。
元から決めていた事を変えるつもりはない。
決意を聞く為の静寂の時間。
どれほどの脅威があるのかも理解した。
仲間を集めたとしても、後は運勝負。
だけど私は……引き下がれない!
──全部背負ってやる。
──みんなの命とその戦いを。
「ちゃんと集めるわ。それで勝負になるなら悪くない」
「……ったく、アリスは肝が据わってるな」
「ヴァルほどじゃないかもよ?」
「俺は前衛でもあり隊長だぜ。そんなこと当たり前だ」
「ちゃんとやれよ。預けるぜ俺らの命」
真っ直ぐ見つめて頷いた。
私に出来ることは、結局その程度。
──結果で返す。
マリアは、私たちが絶対に仕留めなきゃいけない相手だ。
私の手腕が試されるのだろう。
やれなきゃ復讐が無に還る。
それだけは、絶対に嫌なんだ。
必ず勝つ。
その為にやらなきゃならないことをしよう。
「作戦は大いに理解した」
「信じてねヴァル。必ず連れてくるから」
「当たり前だろ。大将は譲ってやる」
「マリアのことね」
「アリスが殺せ。俺は小隊長とサシでやる」
「小隊長は強いの?」
「誰に言ってんだ。俺が強いに決まってる」
国王軍側は魔法だって使ってくる。
それにもかかわらず勝つと言い切った。
剣に絶対的な自信があるのだろう。
単騎での撃破能力は信頼することにした。
だけど、ヴァルだってマリアは殺したいはずだ。
なんで譲るような真似をするんだろうか。
譲ってくれるのは嬉しい。
だけど因縁のある相手だ。
真意を知りたい。
「譲る理由を聞いてもいいのかしら」
「女の喧嘩は女同士でするもんだ」
「なるほど……ここぞって場面ね」
「最も勝算があると思わないか?」
「ヴァルは少し勘違いをしているわ」
「勘違いだと?」
「喧嘩じゃないの。これは女同士の殺し合いよ」
「あらら、こりゃアリスを甘く見てたな」
「もし、その状況になれば必ず勝ってみせる」
「参ったな……アリスの執念は恐ろしいぜ」
これで良い。
これは意地を通す戦いなんだ。
信念を貫けなければ、ただの道化だ。
曲芸でも奇跡でも起こしてやる。
それぐらい出来なければ勝てない相手。
作戦はまとまった。
後は仲間集めだ。
どうしたものかな。
都合良く凄腕のヒーラーなんかいる訳もない。
アテだって有りはしないのに……。
考える時間が欲しい。
だけどヴァルは、まだ話し足りない様子。
言っておかなければならないことがまだあったのかな。
「反乱軍なんて名前はもう無しにしようと思う」
「どういうことよ」
「担ぐ神輿が決まったんだ。チンケな名じゃダサいだろ」
「神輿なんてまた大袈裟な……」
「──project Alice。なんてどうだ?」
「プロジェクトアリス!?」
「ピッタリだろ。俺たちにとってはな」
「まぁ……そうだけど……」
特定の目的を達成するため。
期限とヴァルと私の目標を成す。
計画とその実施される一連の活動。
その戦いの象徴を私にしたってことか。
安直かもしれない。
だけど、何だかしっくりきた。
それで良いじゃないか。
──私が率いる組織にしろ。
ヴァルは結局そう言いたいんだ。
「アリスはこの組織の女王になれ!」
「私が……女王ですって!?」
「命預けてんだ。アリスが女王じゃないならどうすんだ」
「それはそうだけど……」
「連中もとうに腹は括ってる」
それは……参ったな。
もう弱音なんて吐けないじゃないか。
私が死んだら終わりってこと。
この軍の大将ってことよね。
国王側だってマリアが大将の軍を繰り出すんだ。
だったら、私が大将で不思議でもない。
一気にそれっぽくなってきたな。
組織名に私の名前が入っているのも好都合。
どうせ、ガゼル暗殺のことはすぐバレるんだ。
こちらから名乗ってしまえばいい。
復讐をしに来たと伝える為に。
お前らを殺す名だ。
しかと、その眼に焼きつけて貰いたい。
──project Alice。
狙った標的を殺す計画をする者。
その認識に至ってくれればそれで良い。
「それでいきましょう。国王に分からせてやる!」
「その意気だ。我らが女王よ」
作戦の変更はない。
速やかに行動しなくては……。
話しを終えてヴァルはジジカに報告に行くと言った。
そのまま拠点を去っていく。
残されたのは、ルーカスと私だけ。
ルーカスの作業の手が止まった。
きっとヴァルと私の話しを聞いていただろ。
何か言ったらどうなんだ。
意見が欲しいと言ったって無駄なことは分かってる。
どうせ、君が決めたことだろって言われるだけだ。
聞いてなかった前提で話してやろう。
「もう目紛しく時が過ぎるわ」
「そうだね」
「私は指揮官よ?」
「知ってるさ」
「いつのまにか組織のトップにされちゃった」
「責任重大だね」
「返事がテキトーじゃない?」
「そんなことはないさ」
「じゃあ、何なのよ」
「成長が早いと感心していてね」
「確かに……そうかも」
無力な私だった。
絶望に抗う術もない。
ただ拾われただけの命。
そんな私が今や組織を構えて国と一戦交えようとしてる。
アビスに落とされた後では考えつかなかったことだ。
でもね、ルーカス。
あなたがいたから私は今ここにいるのよ。
──命を拾ってくれた。
──再び立ち上がる為の脚をくれた。
──ここまで私を導いてくれた。
直接の感謝は言わないことにしておく。
ルーカスにも目的があるんでしょ?
今の私には、何がしたいのか分からないけどね。
嫌な感じはしない。
ルーカスにもルーカスなりの戦いがあるんだ。
だからどうか私の戦いを見届けてほしい。
たとえ、どんな残酷で無様な死に方をしても。
「ヒーラーを探そうと思うの」
「それはどうして?」
「この戦いに勝つ為よ」
「それがアリスの復讐かい?」
「その一つでもあるわ」
「そうか……分かったよ。僕もついて行くよ」
「どうして来るのよ」
「一人じゃ危ないだろ」
「大丈夫よ……自分でもなんとかするわ」
「ダメだね。アリスはすぐ無茶をする」
「もうしないってば!」
「義足が外れたら大変だろ」
「それはそうだけど……」
「じゃあ、決まりだね」
理由をこねくりつけているだけだろ。
また私を導くつもりらしい。
かと言って、行くあてなんかない。
見切り発車だ。
情報が足りない。
そもそも凄腕のヒーラーってなんだ。
何が出来れば凄腕なんだ。
考えれば考えるだけ分からなくなる。
いっそのことルーカスに聞いてみるか。
素直に答えてくれる訳ないか。
自分で考えるしか……。
時間よ……間に合ってくれ。
「最近のことだけどねぇ……」
「急にどうしたのよ!?」
「冒険者が遭難した森があるらしいんだ」
またそうやって導こうとするのか。
その言い方は間違いなくいる。
冒険者とやらが苦戦する険しい森へ行けってことだろ。
そこで私が待ち望んだヒーラーが困っているはずだ。
ルーカスは、無駄なことは絶対に言わない。
この策士め……。
悔しいながらも少し睨んでやった。
文句が言えないなりの抵抗だ。
でもなんか変だな。
冒険者が遭難するって普通あり得るんだろうか。
慣れていそうな気もするけど……。
とても嫌な予感がした。
私の予感が何も当たっていませんように。
私の願掛けは、意味がないことを知った。
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