第5話『暗殺計画』
ルーカスが何やら上機嫌だ。
なんて不気味なんだろう。
話しかけるべきか。
見なかったことにしてこの場を去るか。
実に悩ましいものである。
ヴァルとの話し合いも終わった。
ケガ人の手当てがある。
そう言って席を外したんだ。
以外と仲間思いなんだな。
関心してしまったじゃないか。
そして、ヴァルが席を外したすぐのこと。
私が困っているって状況だ。
ことが上手くいって、そんなに嬉しいかルーカス。
どうせ、共闘になるって分かっていたんでしょ。
思惑通りそうなりましたよ。
満足だから上機嫌なんだ。
なんか鼻につくな。
このまま、相手しないようにしておくか……。
さすがに可哀想か。
どうせ、今は私に出来ることなんか無い。
ルーカスと話しをしよう。
「私が参謀なんですって」
「良かったじゃないか」
「狙ってたんでしょ?」
「アリスが決めたことじゃないか」
「口出しはしないって言ってたものね」
「その通り。アリスが決めた選択だ」
「参謀ってきっと難しいわよね」
「残酷な命令を時には、しなきゃならない」
「……ちゃんとやるわ」
「応援しているよ」
やはり、本質は見抜いていた。
どこまで策士なんだルーカスって奴は……。
私よりもよっぽど参謀に向いているだろう。
文句を垂れても仕方ない。
代わりなんていない。
私なんだ。
私がやらなきゃならない。
私の成すべきことが、また一つ増えてしまった。
だけど不思議なものだ。
ルーカスは顔が広いんだなってつくづく思う。
貴族連中じゃ飽き足らず、反乱軍のヴァルとも知り合い。
良いやつだって笑って言っていた。
人を惹きつける力って言うのかな。
ルーカスには、それがある。
私もそうありたい。
この先、国王と戦争をするんだ。
それぐらい出来ないでどうする。
死んでくれ、なんて命令をしたくない。
そうならない為に私はもっと知る必要がある。
誰も失わない戦い方とその術。
しばらくは、ヴァルやルーカスに頼るだろう。
強くなってみせるから。
新しい挑戦。
迷いなく進むべき。
心に響くよう私自身に言い聞かせる。
欲しいものは、復讐のその先。
かつて失った二度と返って来ない幸せを追い求めて。
気持ちを切り替えて次に進む。
私が参謀として出来ること。
標的は変わらない。
それでいて最も崩しやすい相手。
──マリアだな。
私を裏切った幼馴染。
裏で私を嵌める工作をしていた。
あるいは、協力者だったのか。
今となっては、どうでも良いか。
ガゼル殺害の犯人も分かってないんだ。
付け入る隙は充分にあるはず。
マリアを殺せば、私の復讐にまた一歩繋がる。
だけど、私一人の意見は不安だ。
この計画は、入念にヴァルと打ち合わせをしよう。
ルーカスは、机に座り義肢の作成に取り掛かっていた。
さっきまでの腑抜けた様子じゃない。
邪魔にならないよう、ヴァルが帰るのを待つことにする。
「手当ても無事終わった。こっから少し休息だな」
ヴァルが戻ってきた。
酷く疲れているな。
こんな時に計画の話しをして良いものだろうか。
気を使ってしまう。
逆に話さないのはマズいかな!?
なんて切り出したら良いか分からなくなる。
「話しがあるんだろ」
切り出したのは、ヴァルからだった。
焦りが顔に出ていたか。
結局は、気を使わせてしまったな。
どうせなら遠慮はいらない。
共に共闘を誓った仲だ。
「ヴァルにはお見通しなのね」
「アリスは分かりやすいからな」
「恥ずかしいこと言わないで!」
「まぁ……いいか。本題はなんだ?」
「これからの作戦についてよ」
「だと思ったぜ。話してみろよ」
──マリア暗殺計画。
そのフィードバックが欲しい。
それが、成功出来るのか。
成功した場合のメリット。
失敗した場合のリスク。
戦うのは、もちろんヴァルが率いる反乱軍。
私は問わなければならない。
今後、私たちが有利になるか否かを。
「標的をマリアという貴族に絞りたい」
「マリア……だと!?」
「なによ、知っているの?」
「知ってるも何もない。マリアは国王の実の娘なんだ」
「──国王の娘!?」
知らなかった。
私にマリアのことで知らないことがあったなんて。
隠していたらしい。
それは何のためか。
容易に想像出来てしまった。
不自然な冤罪に婚約破棄。
最初から仕組まれていたんだ。
用意周到なこと。
私の処分は最初から決まっていた。
元々は、国王ぐるみの卑劣な罠ってことよね。
動揺はしたけど、これでようやく腑に落ちた。
「何だよ顔が引きつってるぜ?」
「いや……何でもない。話しを続けるわ」
「マリア暗殺計画か。それは俺たちにとっても悲願だ」
「なら決まりよね。早速どう殺すか──」
「──悲願だが、無理な相談だ」
「……何よ怖気づいたの?」
「違うそうじゃない。勝てないと言っているんだ」
「たかが女一人殺せないなんてことないでしょ」
「相手が国王の娘ってのを忘れんな」
「どういうことよ」
「──戦争になればウチが全滅する」
キッパリと言い放った。
負けるなんてことがあり得るか。
国王の娘とはいえ、たかが争いも知らない女。
それに負けるってのか理解出来ない。
何故、勝てないのか。
その答えをヴァルが語る。
この反乱軍の脆弱さ。
どの部隊にここまで不利な状況に陥っているのか。
──その訳の全てを。
「国王の娘には権限があるんだよ」
「どんな権限なの?」
「小隊一つ、中隊一つ。好きに動かせるんだ」
「何よ……その小隊だの中隊だのってやつは」
ヴァルが呆れながら、渋々説明してくれた。
つまり、こういうことらしい。
国王軍には小隊、中隊に、大隊がある。
小隊一つに三百ほどの兵士。
中隊一つに千人ほど。
大隊にもなれば、一万を超えるほどの戦力になる。
今の反乱軍では、小隊にすら歯が立たないのが現状。
それらを束ねた精鋭部隊。
それが国王軍。
万に一つも勝ち目はない。
小隊だけでもそれほどの戦力なのか。
マリアとすら戦いにならないなんて……。
これでは死ねと命令するもんだ。
私の浅はかな考えに嫌気がさした。
「ごめんなさい……少し考え直す」
「いや……案外悪くないかもな」
「負け戦を許容するほど私もバカじゃない!」
「間違えているのはアリスだ」
「間違えている?」
「今のままじゃ勝てないさ。戦力だって揃えられん」
「じゃあ……どうするのよ」
「俺たちも少数精鋭で戦うしかねぇーだろ」
「──少数精鋭!?」
「俺たち反乱軍もまだ戦いに臨める状況じゃない」
「そんなこと分かっているわ」
「だから、今のうちに仲間を集めてこい」
「──急に仲間ですって!?」
「凄腕のヒーラーとタンクが欲しい」
「ちょっと待ってよ。そんなの都合よくいる訳ない!」
「なら、諦めんのか?」
「……その二人がいれば勝てるのよね」
「小隊相手なら五分になるだろうよ」
それでも勝率は50%なのか。
次に繰り出す部隊が中隊の可能性もある。
まさに命を賭けたギャンブルだ。
凄腕のヒーラーなんているんだろうか。
ましては、タンクなんて……。
タンクに関しては、別に役職にこだわっている感じじゃなかったけど……。
ヒーラーは、絶対に必要よね。
反乱軍の生命線になり得る。
死人だって出さなくて済む。
そんなことが私に出来るのか!?
いや、違うな。
しなきゃならないんだ。
この戦いに勝つには、マリアという牙城は堕としたい。
無理でもやってやる。
時間は……待ってはくれないんだ。
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