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地獄に堕ちた公爵令嬢〜裏切りと婚約破棄の復讐につき、あなたを殺します〜  作者: 久方久米


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第4話『共闘』


 ジジカの紹介で国家反乱軍の基地にやってきた。


 これを基地と言うのが正しいのか。


 私には理解し難い場所だ。


 大人数の負傷兵たちが横たわっている。


 まともな治療も受けられず、瀕死寸前の者。


 充分な休息を得られず、疲弊する者。


 戦いの果てに死んでしまった者。


 ここは基地なんかじゃない。


 ──正真正銘の地獄、そのものだ。


 ルーカスと共にその様子を観察していた。


 悲惨な光景で言葉が出ない。


 この村の人々は、なぜ戦うんだ。


 勝ち目の戦い。


 国王軍の勢力数万。


 対して、この村の戦力はたたが数十人。


 絶望的なこの状況において、誰も諦めた様子はない。


 絶対に折れない心。


 そんなものを信念として貫いていた。


 この争いの原因。


 それは、国王の圧政政治だ。


 この村から食糧を奪い、多額の税を徴収した。


 人としての尊敬と権利。


 その全てを虫けらのように踏み潰した。


 それが原因である。


 なんか私の復讐なんて霞んでみえてしまうな。


 それでも、私は私の成すべきことを成す。


 いつかは私だって国王を殺さなければならない。


 だとしたら、利害が一致しているじゃないか。


 ジジカは分かっていたのかもしれない。


 この引き合わせは、お互いにとって転機であると。


 相変わらず、ルーカスは何も言ってこない。


 ──自分で考えろ。


 そう言うことなんだろうな。


 「軍団長はまだ帰らないのかしらね」


 「時期に来るさ」


 呑気そうに呟いていた。


 確かに来るだろうけども……。


 ジジカはちゃんとアポを取っているんだろうか。


 待っているのもしんどいものがある。


 万が一にも、貴族の小娘が急に基地に乗り込んできた。


 そう思われたら厄介だ。


 理由も聞かずに襲いかかって来そうだな……。


 なんか怖くなってきちゃった。


 不安で仕方ない。


 「──待たせたようだな」


 ルーカスとは違う男の声。


 どうやら、ちゃんと話しは軍団長に届いていたらしい。


 襲われなくて良かった。


 とりあえずは、安心かな。


 その声に振り向き、挨拶をした。


 「ジジカ様の紹介で参りました」


 「知っているよアリスだったっけ?」


 「挨拶が不要で助かります」


 「有名だからな。死人なんだろ?」


 冗談っぽく茶化されてしまった。


 以外とユーモアのあるやつなんだな。


 「どうも。泣く子も黙る人殺しアリスです」


 「面白いやつだな。自分でそんなこと言うなんて」


 「最近ことですが本当に殺しましたからね」


 「……誰をやったんだ!?」


 「──ガゼル公爵を暗殺しました」


 「……なんて女だ。ガゼルは我らの標的だったんだぞ」


 酷く落ち込んでいた。


 なんか申し訳ない。


 だとしてもあんな男、死んで当然だ。


 殺してやっただけ、ありがたいと思って欲しい。


 だけど、それはお互いにとって第一候補。


 本命は別にいる。


 「ルーカスが着いてるだけあるな。尊敬するよアリス」


 「成すべきことをしたまでです」


 「恐れ入るよ全く……」


 軍団長があらためて自己紹介をしてくれた。


 廃村同然の反乱軍率いる軍団長。


 ヴァルモニア・サーキュラ。


 筋肉質の長身であり、見たところ剣士だ。


 この辺では、あまり見ない金髪が非常に目立っていた。


 魔法は使えないらしい。


 そこは私と一緒だった。


 この先、共にやっていけるだろうか。


 「名前長いだろ」


 「気になる程度じゃありません」


 「まぁいいや。気軽にヴァルって呼んでくれ」


 「そうですかヴァル様。その名前……忘れません」


 私も今の経緯についてヴァルに話しておこう。


 何をして、何を見てきたか。


 何を成すのかを洗いざらい。


 信頼を置ける者に裏切られたこと。


 冤罪でアビスに落とされたこと。


 腕と脚を失ったこと。


 失ったものを取り返すこと。


 その為に国王をも殺すと決めたこと。


 考えてみれば、婚約破棄から怒涛な毎日だったな。


 今では、精神的にも落ち着いている。


 感情を荒立てることなく、ありのまま。


 ヴァルに聞いてもらった。


 「そうか、よくアビスを生き抜いたな」


 「いっそ楽に殺して欲しいぐらいでしたけどね」


 「だけど……諦めなかったんだろ?」


 「諦めましたよ。今なお抗えるのはルーカスのおかげ」


 ニヤニヤと私を見るルーカスに苛立ちを覚えた。


 本当に何も喋らないつもりかコイツ。


 「良いやつだろルーカスは。支援物資も頼んでもないのに自腹で持ってくるんだぜ」


 義肢と少ないながらの食糧のことだろう。


 ルーカスは一体何者なんだ。


 全く意図が読めない。


 国の管轄である義肢装具士が、戦争相手の支援。


 国王軍にバレでもしたらタダじゃ済まない。


 これまでもそうだ。


 瀕死の私なんかを助けたりして……。


 状況を整理してみた。


 これは、もしかすると……。


 ──反乱の口実を狙っている!?


 そうとしか思えない。


 ルーカスは国と真っ向から戦いに行くつもりなんだ。


 出なければここまでお人よしでいられない。


 だとするならば、私は示す必要がある。


 私は戦うのだと。


 軍を率いて国王を討つ。


 その覚悟を見定めているはずだ。


 さっきから黙っている理由はこれか。


 ──全ては私。


 私から動かなければ、何も始まらない。


 「ルーカスは優しい人ですよ」


 「確かにな。だが優しいだけじゃ世界が良くならねぇのも事実だぜ」


 「そこで提案があるのです」


 「何だそりゃ……提案?」


 「──私と共闘しては下さらないですか」


 核心を突いた提案をしたつもり。


 標的も目的も同じなんだ。


 だったら共に戦った方が良いに決まっている。


 ただし、この提案には欠点があるのも事実。


 私が小娘であること。


 吹けば飛ぶような私の命を戦場に繰り出すリスク。


 共闘したところで戦況が良くなる訳でもない。


 仲間が増えること以外メリットがない。


 それがこの提案の欠点。


 言い出した私が考え込んでしまった。


 なんて言い返すか必死に考えていた。


 「いいぜ、その共闘に乗ってやる」


 「──はぃ!?」


 骨折り損じゃないか。


 考えが甘過ぎるんじゃないか!?


 即決とは拍子抜けもいいところ。


 「本当に良いの……私は……」


 「覚悟決まってるぜアリス。気に入ったよ」


 「……それなら、この話しは合意ってことよね?」


 「一つだけ条件がある」


 「条件……ですか……」


 「──なるべく戦場に立つな」


 そう来たか。


 やっぱり、信頼はあまりされていないらしい。


 私が死んだぐらいでは、大きなマイナスにならないだろ。


 何でそんなことを言い出すんだ。


 私が小娘だからなのか。


 少しガッカリしてしまう。


 「そんな落ち込むなよ」


 「戦場に立つなとは、私を舐め過ぎです」


 「なるべくと言っただろ」


 「じゃあ、何をしろと?」


 「アリスには参謀になってもらう」


 「……参謀!?」


 「アリスが戦場に出るのはここぞって時。それ以外はダメだ。そこだけは譲れない」


 信頼されていなかった訳じゃなかった。


 なんなら信用し過ぎだろ。


 何で私が参謀なんだろうか。


 戦略を考える力もなければ知恵もない。


 そんな私にさせて良い役職じゃない。


 ここでも、試されているのか。


 簡単なことじゃないってことぐらい分かる。


 ヴァルは、そんなことを言いたいんじゃない。


 率いる兵士に死ねと命令が出来るか。


 その真意を説いている。


 私はやれるのか……。


 それで後悔はないのか。


 私はヴァルに答えを示した。


 「──私の為に死んでくれる?」


 それが私の覚悟だ。


 何を失っててでも勝ちにいく。


 野心も野望も復讐も。


 ヴァルと眼が合った。


 葉巻を吸い始めてしばらく無言が続く。


 煙を吐き出して、少し口角が上がった。


 「──それで勝てるなら死んでやる」


 了承は得た。


 これから、ヴァルが率いる反乱軍と共闘関係になった。


 そして、私は今や反乱軍の参謀。


 時の流れは早い。


 アビスに落とされてから暫くして、私は国家反逆者。


 国と戦い、国王を殺す。


 ヴァルと共通の敵を相手することになったんだ。


 やったよルーカス。


 私は共に戦う仲間を手にしたんだ。


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