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地獄に堕ちた公爵令嬢〜裏切りと婚約破棄の復讐につき、あなたを殺します〜  作者: 久方久米


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第20話『決着は今──』


 ──魔力50%解放。


 これが私の義足が耐えられる最大値。


 これでダメならもう終わりだ。


 義足が外れて、マリアに呆気なく殺される。


 ただし、ただの特攻なんてしてやるものか。


 私にも背負っているものがある。


 ルーカスにヴァルにルミナス。


 これ以上、悲しませる訳にはいかない。


 私の出せる全力のありったけ。


 ──全部ブチ込んでやる!


 飛ばされている内に防壁を阻む浮かんだ岩石。


 その岩が私の邪魔をするようにぶつかろうとしてる。


 撃ち落とされる訳にはいかない。


 せめて、あの防壁を貫くまでは──。


 「──こんの……私の前に現れるなぁ!」


 義足で次々と飛来する岩石を粉砕する。


 脚が当たっただけで簡単に砕けた。


 さすがは魔力を限界まで引き出した義足だ。


 生半可な妨害じゃビクともしない。


 その勢いで防壁まで接近。


 このまま……防壁を貫いて!


 ちゃんと保ってよね私の義足。


 マリアはもう、すぐそこにいるんだから。


 「──貫けぇェェェェ!!」


 義足が防壁にめり込んだ。


 無数のヒビを走らせて、ぽっかりと穴を作る。


 貫き通せばこちらのもの。


 残るは……マリアただ一人。


 防壁を砕ききったその先──。


 そこには、慌てふためくマリアの姿があった。


 「──アリスが防壁を!?」


 「──マリアァァァァ!!」


 もう一踏ん張り。


 身体は、当に限界を超えている。


 これが最後の一撃になるだろう。


 それはマリアもなんとなく察しはついているはず。


 本気で来なさいよ。


 完膚なきまでにあんたの魔法を打ち砕いてやる!


 「くっ……聖なる氷結の守護神よ。その威光を……」

 

 「祝詞が間に合わないでしょー!」


 ここでも、やはりマリアだった。


 完璧な奇襲にも関わらず、すぐさま対応してみせる。


 中途半端な祝詞のおかげで魔法の威力も弱い。


 弱いって言ったら語弊かな。


 私が受けてきた魔法では最強クラスの魔法だ。


 氷山をそのまま持ってきた。


 そう言って、遜色そんしょくない。


 荒々しい氷柱に分厚い氷の壁。


 未完成の魔法でこの規模の魔法を使うなんてね。


 ──大勝負なんだ。


 ラストスパートですからね。


 誰も失わない為に、私はあんたの魔法を撃ち破る。


 「──これで終わりよアリス!」


 「──そんな氷なんかァァァァ!!」


 魔法と義足が激突した。


 義足は全ての魔法を撃ち破る。


 最後の撃ち合いは、私が制したんだ。


 けど、やっぱり悔いが残ってしまう。


 限界を迎えて、私の義足はオーバーフロー。


 力尽きたと言わんばかりに外れてしまった。


 ルーカスの救助も間に合わない。


 ヴァルは……大丈夫だよ。


 気にしないで。


 私は今凄く気分が良いから。


 焦ってるのが伝わってくるな。


 もういいんだ。


 楽しかったから。


 ──私の身体は、地面に落下した。


 義足の衝撃と落下のダメージが酷い。


 骨も何本かは折れている。


 完全に行動不能。


 かと言って、マリアにはまだ余裕がある。


 全力を尽くした。


 私に言えるのはそれだけ。


 ──さぁ、マリア。


 私にトドメを刺しなさい。


 「ダサい義足も外れてしまったのね」


 「そうね……もう限界よ」


 「蛆虫のように地を這うしか出来ないなんて」


 「……返す言葉もないわ」


 「勝った……勝ったのよ……アリスに勝った!」


 「そうね……あなたの勝ちよ」


 視界は霞んでいる。


 マリアが狂気に踊らされているのは伝わった。


 思えばマリアと喧嘩なんてしたことなかったな。


 人生初めての喧嘩だった。


 負けたけど……なんて清々しいんだ。


 マリアは凄いな。


 私の一歩もニ歩も先にいく。


 「死になさいよアリス」


 「んッ──!?」


 「これでもう動けないでしょ?」


 私の身体を馬乗りになって抑え込んできた。


 マリアも疲労が溜まってたんだろう。


 立っているのがしんどかったのかな。


 抑え込みに力が無い。


 マリアが左腕にダガーナイフを刺し込んできた。


 「──痛いでしょアリス」


 「……面白いことを言うのね」


 「何が可笑しいのよ!」


 「可笑しいわ。笑っちゃうくらいには」


 「……まさか!?」


 「──私はね……左腕も魔獣に喰われているのよ」


 マリアが見落としていた。


 義足にばかり気を取られていたせいだ。


 気づいた時には、もう遅い。


 ここで自決用のナイフの出番。


 ルーカスめ……。


 この状況を読んでいたな!?


 こうなることを見越して私にナイフを持たせたんだ。


 本ッ当に食えない男よね。


 その油断が生んだその隙を狙う。


 私はマリアの首元にナイフを当てがった。


 「──くっ……」


 「──勝負あったわね」


 「聖なる雷の……」


 「無駄よ……魔法よりナイフを引いた方がずっと速い」


 ──私の勝ちだ。


 後はマリアの首を引き裂くだけ。


 簡単なことじゃない。


 最後の言葉なんか聞く余裕もない。


 速やかに私はマリアを殺す。


 「──じゃあね、マリア。地獄でまた会いましょう」


 マリアを手に掛けようとした時──。


 恐ろしいほどの殺気を放つ物体が迫る。


 何だこれ……。


 腕が動かない……!?


 その殺気は私に向かっていた。


 確実に殺される。


 そんな確信があった。


 闇から現れたのは、歴戦の猛者のような大男。


 その男が巨大な斧を振り下ろしてきた。


 ──ガキンッ。


 激しい衝突音を放つ。


 咄嗟の判断でヴァルも飛び出してきたんだ。


 助かったよヴァル。


 あんな攻撃を受けたら私なんか瞬殺されてた。


 剣と斧の撃ち合いで火花を散らしている。


 「なんだお前。女の戦いに水差すのはヤボだぜ?」


 「この戦い見事であった。強い従者にも恵まれたか」


 ヴァルと互角で競り合っているこの男の正体。


 それは、マリアの言葉で判明することになる。


 「ガトレック中隊長!?」


 「姫様、お迎えに参りました」


 マリアの率いる最高戦力。


 中隊部隊の隊長だった。


 このタイミングで増援が間に合った!?


 ふざけるなよ。


 今は中隊と一戦交えるなんて無理だ。


 そんな余力なんて残ってない。


 これでは私たちの詰みじゃないか。


 時間をかけ過ぎた代償か……。


 こんなところで終わってしまうなんて。


 「我々は撤収する」


 「なんですって!?」


 「このいくさは我々の負けだ」


 「ちょっと待ちなさいよ。決着が……」


 「なら今から中隊とやり合うのか?」


 「それは……」


 「義は尽くしてやる。姫様もお疲れだからな」


 「仕方ない……呑んでやるわよ」


 「礼を言うぞ若き復讐者よ。次の戦場で相見あいまみえようぞ」


 それだけ言って、ガトレック中隊長は去って行った。


 引き際もしっかり分かっているじゃないか。


 絶対に強い……。


 中隊長は伊達じゃないってことね。


 ガトレックの殺気に怯んでしまった。


 ヴァルとルーカスも私に駆け寄る。


 ちゃんと無事だったわよ。


 そう自慢気に呟いてみせる。


 死んでもおかしくなかった。


 戦いには勝ったけど、これではやはりスッキリしない。


 見逃してもらったってのが、正しいのでしょうね。


 ──次は必ず勝ってみせる。


 ギリギリの死闘だった。


 だけど、今回はこれで良かったのかもしれない。


 ──project Alice初の白星となった。


 ここからは、国王軍も黙っていない。


 本気で私たちに向かってくるだろう。


 その時に備えて、私たちも戦力を補強しなくては。


 「お疲れ様アリス」


 「……生きた心地しなかったわ」


 「残念だったね」


 「そうよ……あんな邪魔さえ入らなければ……」


 「得る物はあっただろ?」


 「そうね。敵は強大だわ」


 一歩前進。


 そういうことにしておこう。


 口出しをしない。


 ルーカスとの約束だった。


 また頼ってしまったな。


 手助けが無ければ、ここまでの善戦はなかった。


 素直にお礼を言おう。


 「あのね……ルーカス……」


 「どうしたんだいアリス」


 「──ありがとう」


 これから、ルミナスと合流して基地に帰ろう。


 ルミナスの武勇伝を聞くのも楽しみだ。


 どうやって殲滅したんだろうか。


 気になって仕方がない。


 この戦いのMVPだしね。


 精一杯の労いが必要でしょ。


 ガードナーは……死んだかしら。


 その方が都合が良いのだけれど。


 ──これより、第一次小隊反逆戦争は私たちの勝利で幕引きとなりました。



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