表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄に堕ちた公爵令嬢〜裏切りと婚約破棄の復讐につき、あなたを殺します〜  作者: 久方久米


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/20

第2話『人殺しアリス』


 ──ルーカスと出会って二ヶ月が経つ。


 ケガの療養も順調ですっかりと完治した。


 義足にもある程度慣れてきている。


 日常生活をするだけだったら魔力も1%程度で済むらしい。


 意外と便利で助かっている。


 ルーカス邸にしばらくお世話になりっぱなしだ。


 いい加減、出ていかなきゃ。


 国王管轄の義肢装具士だっけか。


 私の存在は居るだけで迷惑になるはず。


 ルーカスに被害を出す訳にはいかない。


 それに、これは私の復讐だ。


 巻き込んでしまうのもいけないこと。


 いつ別れを切り出すか。


 どうも考えがまとまらない。


 一体、どうしたら良いものか……。


 「もう充分に身体を動かせるね」


 「そのことなんだけど……」


 「どうしたんだい?」


 「そろそろここを出て行くわ」


 「そうか、行ってしまうのか」


 なんて寂しそうにショックを受けているんだ。


 そりゃ、行くに決まってるだろう。


 いつまでもこんな優しい場所に留まる訳にもいかない。


 そんなに行ってほしくないんだろうか。


 確かに友達がいなさそうではあるけれど。


 決してバカにはしていないのだけれど。


 結局、これも甘えや逃げの類だ。


 私の復讐心が薄れてしまうから。


 私は目的を成さなければいけない。


 決心が鈍る。


 だから私は、ここから出なきゃならないんだ。


 「成すべきことをしてくるわ」


 「それは大変立派だね」


 「これ以上……迷惑はかけられないもの」


 「そうか……どこへ行くんだい?」


 「ガゼル様に会ってくる」


 ガゼルに会わなければ、真相が分からない。


 それに所在のあてもある。


 ガゼルは決まった夜の刻。


 屋敷の庭園で夜空を眺める習慣がある。


 そこを狙うしかない。


 死んだはずの私が現れたらなんて弁明するんだろうか。


 見ものだな。


 ガゼルの出方次第で今後の方針を決めていく。


 文字通り、国ごと敵に回すかもしれないってこと。


 ルーカスならことの重大さに気づくはず。


 行ってこいと背中を押してくれるだろう。


 「──そうか、なら僕も行くよ」


 何も分かっていなかったみたい。


 どうして後をついてくるんだ。


 私と同行したら反逆罪にだってなり得る。


 ルーカスの意図が全く読めない。


 何を考えてるんだ。


 「私の復讐よ。同行したらどうなるかぐらい分かってるでしょ?」


 「さぁ、どうでしょうな」


 「とぼけないでよ。真面目な話しをしているんだから」


 「義足にはメンテナンスがいる」


 「……うん」


 「万が一にもオーバーフローしたらどうするんだ?」


 「……自分でどうにかするわよ」


 「歩けないのにか?」


 「それは……」


 もっともらしいことを言われて丸め込まれた。


 現状、義手は貰っていない。


 私が受け取りを拒否したんだ。


 この地獄のような屈辱を忘れないように。


 あえて装着していない。


 それ故に、義足が外れたら地を這うにもやっと。


 そんな状態なら今度こそ私は死ぬ。


 かと言って同行するのも都合のいい話しだ。


 私の生死など、どうでも良いだろうに。


 どうしてこうも首を突っ込みたがるのか。


 別に私はもう死にたい訳じゃない。


 あのナイフはいらない。


 もう私は立ち上がれるんだ。


 その過程であり、私の復讐が叶わぬ時。


 死んでも仕方ないと割り切っている。


 気持ちは嬉しいがおせっかいだ。


 「なんでそこまでするの?」


 「なんでって言われても僕はもうアリスと共犯者だろう」


 「……最悪の場合、ルーカスも殺されるわよ」


 「僕も腹を括っているつもりだ」


 「その行動理念はどこからくるのよ……」


 「国のやることには僕も思うことがある」


 国王に対して、多少の鬱憤が募っているようだった。


 それが何なのかは、聞かなかった。


 「それにアリスのことを助ける訳じゃない。見届けたいんだ、君の復讐をね」


 「するのは、あくまでサポートだけってことか」


 「もちろんさ。アリスの復讐の邪魔はしない」


 「だから、私たちは共犯者であり……」


 「傍観者でもあるってことだよ」


 致し方無しにルーカスと手を取った。


 義足である以上、サポートは受けないと私の復讐は終わってしまう。


 物事は成るようにしかならない。


 ルーカスと行動することが最善。


 決められた運命だったと割り切る事にしよう。


 目的を決めて行動に移ることにする。


 ルーカスにガゼル邸の警備の気を引かせる作戦だ。


 アビスを生き抜く術のあるルーカスなら簡単なこと。


 その隙を狙って私が庭園に侵入する。


 それ以上の助けはいらない。


 後は私が考えて行動しなきゃならないんだ。


 人任せなんかにしていられない。


 決行は今日、今夜の夜更け。


 どんな結末になるのだろう。


 おとり役が終われば、私に干渉しなくてよい。


 それだけの取り決めをして、ルーカス邸から出て行くことにした。


♦︎


 「この庭園はいつ見ても美しいわね……」


 夜更けがやってきた。


 ルーカスは、上手くやっているらしい。


 門番も兵士も皆が出払っていた。


 ガゼル邸への侵入も容易なこと。


 後は姿を現すのを待つばかり。


 いつまでも、おとりが通用する訳じゃない。


 すぐに兵士が異変に気付くだろう。


 戻って来てもおかしくない。


 時間はかけられない。


 気を引き締める為、一旦空を見上げた。


 星が綺麗だな。


 そう、ふけっていると──。


 「アリス……なのか……!?」


 ガゼルが現れた。


 幽霊でも見たって様子。


 至って健康なんですけどね。


 「お久しぶりですねガゼル様」


 「君はアビスに落とされて死んだはずだ!」


 「──仄暗い地獄の底から這い上がって来ました」


 死んだとされた無罪の女が生きていた。


 ガゼルもさぞ困っただろう。


 貴族の挨拶として、スカートを少し持ち上げる。


 深々と挨拶をしてやった。


 少しだけ義足が見えてしまったか。


 ガゼルが動揺していた。


 「その脚はどうしたんだ……!?」


 「これ……ですか?」


 義足をガゼルに見せつけてやった。


 気にすることがまずそこか。


 本当に呆れるな……。


 自分たちが、私にどれほどの仕打ちをしたか分かっていないんだ。


 「アビスで魔獣に喰い潰されましたので……それだけのことですよ」


 ついでに失った腕も見せつける。


 ガゼルが青ざめていくのが薄々と分かった。


 どうせ生きながらえた命だ。


 誰にも知らずに隠れていれば良かったんだ。


 本来であればそんなところ。


 私は、わざわざ姿をガゼルに晒しにきたんだ。


 彼の視点からすれば、復讐に来たと考えるのが普通。


 ──命を狙われている。


 そう解釈するだろう。


 どんな言葉を吐くのだろうか。


 それ次第で対応も違ってくる。


 「──アリス……申し訳なかった」


 謝罪の言葉だった。


 欲しかったのは、そんな安い言葉じゃない。


 それは、何に対して謝っている。


 理解の出来ない言葉だった。


 欲しかったのは、謝罪じゃない。


 本当に欲しかったものは──。


 私の身を案じる言葉。


 ──生きていてくれて良かった。


 その言葉一つだけだったんだ。


 ガゼルは最初から、私が死んでいようがどうでも良かったって思っていたんだろう。


 私に興味など無かった。


 なんか、どーでもよくなっちゃったな。


 「それだけ……ですか」


 「バカなまねはよすんだ。復讐に何の意味がある」


 「もう……いいですよガゼル様」


 対話をしようとすらしなかった。


 ガゼルは、自身の保身に走っている。


 もう決定的だ。


 私は私の復讐の方針を決めた。


 ──私の幸せを奪った奴らは全員殺す。


 例え、初恋であったガゼルでさえも。


 私は、ただの悪女になろう。


 元々は、人殺しの冤罪から始まったんだ。


 これ以上の悪い噂なんてされないだろう。


 ──道は決めた。


 ──ここから、私の物語を始めよう。


 「復讐をしに来たのではありませんよ」


 「じゃあ、なんだというんだ!」


 「──あなたを殺しに来たのですよガゼル・テイルナー」


 「やはり……そうなるのか」


 「というか、みんな殺すことにしました」


 「さすがは……人殺しだな」


 「えぇ、ですから私の幸せ……返してください」


 「でもどうやって殺すんだ。君は魔法が使えないだろ」


 もちろんそうだ。


 まともにやったらガゼルから返り討ちを受ける。


 まともであれば……。


 抗う術はある。


 ルーカスから授けられた義足。


 魔力を放出した蹴りを放てば、いくら熟練したガゼルの魔法だって対抗することが出来るはず。


 義足がオーバーフローするその瞬間まで。


 耐えてくれることを信じて……。


 「君じゃ殺せない。楽には殺してやらんぞ」


 ──ブラスト・フォース。


 ガゼルが魔法を詠唱した。


 中級魔法であり、それなり大きさの火球。


 当然、そんな魔法を生身で受けてしまえば死ぬ。


 ガゼルは、本当に殺しにきていたんだ。


 何の感情もなく、ゴミを処分するような目つき。


 冷たい眼差しで私に魔法を放った。


 蹴り以外、私に出来ることがない。


 やってやる。


 こんなところで死にたくない。


 死んでたまるか!!


 ──魔力30%解放。


 覚悟を決めた蹴りで魔法とぶつかり合う。


 「──いけェェェェ!!」


 感じたことのない衝撃が身体を走る。


 魔力のぶつかり合いは全部身体へ。


 反動として返ってくる。


 あと少しだけ、耐えて欲しい。


 筋肉が震える。


 骨がきしむ。


 意識が飛びそうだ。


 私の出来るありったけを全てぶつけた。


 「魔法が消えただと……!?」


 ガゼルの魔法を打ち破った。


 怯んでいるこの隙を狙う。


 動いてよ私の脚。


 限界のその先に走りだせ。


 「──てぃやァァァァ!!!!」


 ──魔力50%解放。


 義足のオーバーフロー限界値。


 死角からガゼルの懐に周り込んだ。


 ──これで最後。


 渾身の蹴りを胴に打ちつけた。


 ガゼルは、不意に現れた私に反応すら出来なかった。


 防御魔法を使う隙もなく、身体は真っ二つに切断される。


 人間の身体なんて、容易くこの義足は潰せてしまうのか。


 ガゼルの意識なんてある訳もない。


 さようなら、私の初恋。


 地獄を生き抜いた私、婚約破棄の復讐につき。


 私は、ガゼルを殺したんだ──。


 蹴った衝撃で身体が吹き飛ばされた。


 この義足は、加減をするのが苦手らしい。


 私だってまともに反動を受けてしまって、身体がピクリとも動かないでいる。


 義足も外れた。


 例のオーバーフローだろう。


 やり過ぎちゃったし、仕方ない。


 ただし、このままって訳にもいかない。


 騒ぎを聞きつけて、兵士たちが戻ってくるはず。


 そうなっては、せっかくの復讐も台無しだ。


 「ねぇルーカス見てるんでしょ。手を貸して」


 試しに呼んでみた。


 作戦通りならルーカスはもう撤退している。


 こんなところにいる訳がない。


 そう思いながらも結局は口に出していた。


 返事は無い。


 まぁいいさ。


 私の復讐に一矢報いることが出来ただけ上出来。


 捕まって殺される。


 それで終わりなんだ。


 「──遅れてすまない!」


 ルーカスの声がした。


 どうして戻ってきたんだ。


 捕まるリスクだってあったはず。


 息を切らしながら真っ直ぐ私に駆け寄ってきた。


 「無茶をし過ぎだよアリス」


 「そうね」


 「──生きていてくれてよかった」


 ──これだ。


 私はこの言葉が欲しかったのだ。


 どれだけ苦しかったか。


 どれほど辛かったか。


 感情の爆発で情緒が乱れ涙を流す。


 「私……やったよ」


 「何をしたんだい?」


 「ガゼルを殺したの」


 「そうなのか」


 「私の復讐……叶ったよ……」


 「良かったじゃないか」


 ルーカスが抱きしめてくれている。


 背中をいっぱいさすって頷いてるだけ。


 それだけのことなのに、それが妙に嬉しかった。


 ガゼルを殺したとこに後悔はない。


 私の復讐がやっと始まったんだ。


 だけど、変な妄想もしてしまう。


 夢だけ見ている少女であれば良かった。


 普通に恋をして。


 ごくありふれた結婚をして。


 家族が増えて、子供に悩まされたりして。


 でもそれは、もう無理な話し。


 貴族殺しの冤罪をかけられた私。


 婚約破棄までされて全てを失った。


 その私が復讐者になり貴族を殺す。


 なんて皮肉が効いているんだろう。


 結局、私は──人殺しアリス。


 名前に遜色ない悪女だな。


 「進むべき道は決めたのだろう?」


 「ちゃんと決めたよ」


 「ならもう何も言うことはない」


 「……少しぐらい何か言いなさいよ」


 「やり遂げてみせろアリス・ローゼン。人生を悲劇で終わらせるな。復讐の果てにきっと笑えるはずだ」


 普段は、こんなにも強い口調で喋らない。


 初めてだったんだ。


 こんなにもルーカスが感情的になっているなんて。


 それが何となく、誇らしいものなんだって思えた。


 義足を装着してもらう。


 ルーカスが私を抱えて走り出した。


 「さて、済んだことですし退散しますか!」


 「ちょ……肩だけ貸しなさいよ。抱っこしないで!?」


 裏道を使ってその場を離脱する。


 兵士からバレぬよう逃走。


 そのままルーカス底へ帰宅した。


 ガゼルの死体が発見されて今頃、国中で混乱に陥っていることだろう。


 まさか、死んだとされる女が殺したなんて思うまい。


 それでいい。


 復讐の魔の手は、悟られないに越したことはない。


 いつか黒幕に辿り着く。


 出来ればその時まで暗躍していたい。


 ──裏切った者。


 ──冤罪をかけて嵌めた者。


 その全てを私は、断罪し殺してみせる。


 かつて描いていた幸せを取り戻す。


 そんないつかのその時まで。


お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、『ブックマーク』と下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!


※感想、レビュー等、お気軽にお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↑の☆☆☆☆☆を押して頂けると執筆の励みになります!!! 応援のほどよろしくお願いします。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ