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地獄に堕ちた公爵令嬢〜裏切りと婚約破棄の復讐につき、あなたを殺します〜  作者: 久方久米


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第16話『ルミナスは女の子』

【ルミナス視点】


 ガードナーって男が分からない。


 頭が狂っているだけなのか。


 ただ、闇の深い変人なのか。


 理解に苦しんでいた。


 いい歳のおっさんが貧乏で飢えていただけなんて。


 そんなこと、誰にも分からないよ。


 実力を隠してたのかな。


 実力を発揮する場所が無かったのか。


 あるいは、両方もあり得る。


 悲運な男もいたものだ。


 こんな男があんなにも実力のある男だとは思いたくない。


 ボクは、きっと幻を見ていたんだ。


 走馬灯だったのかもしれない。


 実はボクは魔力切れを起こして死んだ。


 強靭な剣に首を落とされてね。


 長くもあり、短くもある。


 そんな最低で最悪の走馬灯。


 そうあってほしかったんだ。


 覚めてくれよボクの悪い夢。


 こんなのに救われただなんて……。


 ──絶対にお断りだ!


 夢は覚めてはくれない。


 だってこれ、現実なんですよ。


 世界は恐ろしいですよね。


 「なんでそんなにしょげてるんだよ」


 「ボクの幻想が打ち砕かれたからだよ……」


 「ふーん、変わったやつなんだな」


 「君には言われたくないよ!」


 「なんだよ、また褒めてくれんのか照れちまうぞ」


 「君と会話をすると疲れるんだね。知らなかったよ」


 「疲れたのか。ちゃんと休めよー!」


 「ちょっと黙ってくれないかな……」


 あまり会話が得意ではないようだ。


 やはり……バカだったらしい。


 こんなやつと遊んでいる暇はボクには無いんだ。


 早くアリス様の元へ行かなくては。


 マリアのことやヴァルのことも気になる。


 戦果を花束に報告したい。


 アリス様に褒めてもらって慰めてもらおう。


 嫌なことが有り過ぎて、心身共に疲弊している。


 慰めてさえもらえれば……。


 きっとボクはすぐ元気になるはずだ。


 「なんだよもう行くのか?」


 「報告しなきゃいけないからね」


 「オレも着いて行くわ」


 「絶対に来ないで」


 「オレもアリス嬢に用事があるんだよ」


 「君がアリス様に用事だと?」


 「報酬を貰ってないからな」


 「か……金ならないぞ!?」


 「金じゃねぇーよ。食糧だ!」


 どこまでいっても、空腹なんだな。


 何だかこの人……可哀想だ。


 下手に哀れんではいけない。


 女神様の気持ちになって慈悲を……。


 無理だ……やっぱ辞めた。


 「共に戦ったんだ。挨拶ぐらいしようやー」


 ハイタッチを要求された。


 一応、これも礼儀だ。


 冒険者の慣わしの一つ。


 変なやつとはいえ、助かったのも事実。


 金輪際、関わり合いたくはないが仕方がない。


 今日だけ特別にしてやろう。


 ボクはハイタッチを受ける側に回った。


 すかさず、ガードナーが手を触れようとする。


 この時、ボクは気づかなかったんだ。


 ガードナーとボクとの身長差について。


 ガードナーは勢いのあまり、ハイタッチを空振り。


 慌てて掴んだその先は──。


 ──ボクの胸だった。


 「あー、わりぃ。外れたわぁ。もう1度するぞー」


 「さわ……さわ……」


 「どうした落ち着きないぞー?」


 「触った……な!?」


 「なんだよ胸に当たっただけじゃねーか」


 「……ボクは……」


 「まさか……男の娘!?」


 「ボクは女の子だぞ!」


 本っ当にサイテーだ。


 女の子の胸を普通、鷲掴みにするか!?


 ──セクハラだ。


 ──非常識だ。


 ──超弩級の変態だ。


 初めてだったのに……。


 男の人に胸を揉まれるなんて……。


 もう生きていけない。


 バカ変態に身体を穢されてしまった。


 アリス様にだって揉んでもらってないのに。


 この男……絶対に許さない!


 「確かに……ほんの少しだけ膨らみがあったような」


 「……」


 「でも違うな。あれは女の胸じゃねぇー!」


 「そうか……お前はボクをバカにしてるのか」


 「えっマジ……。あれが……おっぱい!?」


 女の子の胸を揉んでおきながらその発言はなんだ!?


 確かに……ボクはまだ子供だ。


 それ故に発育途中でもある。


 このクソ男は否定したんだ。


 男な訳ないだろ!?


 女の子の胸もロクに知らないのかこのおっさん。


 サイテーを通り超えている。


 小馬鹿にした態度も気に入らない。


 酷いよ……なんでそんなことを言うんだ。


 「──あの世へ行く準備は出来たか?」


 「ちょっと待てって!貧乳はステータスなんだぞー」


 「お前は……何を言っているんだ」


 「希少価値らしいんだぞー」


 ──その言葉により、一瞬で頭が弾け飛んだ。


 ──癇癪かんしゃくを起こした。


 ただ、ひたすらにボクは泣きじゃくる。


 こんな恥ずかしめを受けるなんて。


 ズバッとザックリと言われてしまった。


 これでも、思春期の女の子。


 それなのに、貧乳だと!?


 言って良いことと、悪いことの線引きも出来ないのか!?


 だんだん、この魔獣が怖くなってしまった。


 デリケートな話し。


 私だって気にしてはいるんだ。


 デリカシーのカケラもない化け物め……。


 考えれば考えるほどに涙が止まらない。


 「悪かったって。別にいいじゃねーか貧乳ぐらい」


 頭を撫でようとしてきた。


 まるで子供扱いだ。


 というか、ボクに触れるな。


 これ以上、汚い手でボクを穢すな。


 「はいもう一回ハイタッチしようやー」


 「触んないで」


 「あんまり泣くと可愛い顔が台無しだぞー」


 「触んないで」


 「さっきから触ってねぇーよ!」


 「触んないで」


 「そんな君が美しい!」


 「呼吸しないで」


 「オレに死ねとおっしゃいますか」


 「触んないで」


 「ヘイ!彼女。イカしてるねぇー!」


 「アリス様に言いつけてやる」


 「それだけはマジで勘弁してください……」


 泣き疲れてしまった。


 気持ちは少し落ち着いた。


 なんて憎らしい男なんだ。


 関わるべきじゃなかった。


 コイツに出会いさえしなければ……。


 こんな屈辱を受けずに済んだのに……。


 反省してる素振りすら見てはいない。


 ことの重大さが分かっていないんだ。


 この人生の中で初めて殺したい人が出来た。


 ──いつか、殺してやる。


 そうだ、ヴァルに頼んでアイツの腕を切断してもらおう。


 腕があるから、こんなことになったんだ。


 腕さえなければ、胸なんて揉めやしない。


 合流したら相談してみようかな。


 怨みとは、こうやって連鎖していくことを知った。


 少しだけ、ボクも大人になった気がするよ。


 それまで……この男をどうするか……。


 「なぁ許してくれよー」


 「許すって何のことですか?」


 「貧乳を気にしてるんだろ?」


 違うそうじゃない。


 胸を揉んだのが問題なんだ。


 「ボクが許すとでも思ってるのか……?」


 「細か過ぎるってのー。いいかげん許せってー」


 「アリス様に言いつけて一生無賃で働く奴隷にしてやる」


 ガードナーは、言葉を失っていた。


 当然の報いであり、私なりの報復だ。


 命があるだけでも、ありがたいと思え。


 アリス様、聞いて下さい。


 こんなクソ変人であり、クソ変態のことです。


 このセクハラ中毒のおっさん。


 全女性の敵でした。


 速やかに、このモラハラ男を葬る許可を下さい。


 準備は万全です。


 いつでも殺す準備は出来ています。


 アリス様が出会ったからこうだったんでしょうか。


 またもう一度会って話しをしてみたいです。


 おすすめの処刑法方とか知っていますか?


 今なら何でも出来そうな気がするのです。


 ──この怨み聞き届けてください。


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