第15話『遠隔追尾式盾魔法』
【ルミナス視点】
──魔力が途切れた。
全身に力が入らない。
そのまま、力無く倒れ込んでしまった。
ボクはもうダメなのか……。
悲観してしまう。
ボクの魔力供給もなくなり、戦線部隊は崩壊した。
死人はまだ出ていないけど、それも時間の問題。
ボクの復帰は難しい。
魔法が使えないボクはもう生きる屍だ。
すると、その時──。
「お前のせいだったのか」
敵兵に見つかってしまった。
動く体力も残っていない。
絶対に逃げられない。
そうか、ボクを殺しに来たんだ。
この部隊の戦力の要だった訳だし、当然のことだろう。
弱っているのなら丁度いい。
始末してしまおう。
考えているのは、きっとそんなところ。
「そうだよ。ボクがやったのさ」
「そうだったのか。お前さえ殺せば我々の勝ちだな」
敵兵は、剣を振り上げた。
これで死ぬんだな……。
みんな……頑張ってくれてありがとう。
楽に殺してくれたらそれで良い。
負けた責任は、ボクが取る。
強靭な剣が振り下ろされた。
その剣が首元まで迫った時──。
──クイック・シールド。
聞き慣れない男の声がした。
それと同時のこと。
その不思議な盾は、ボクを強靭な剣から救ってくれていた。
なんて機動力の速い盾なんだ。
剣の速度に合わせて一瞬で現れた。
「──なんだこの盾は!?」
「気になったのかな雑魚兵隊さん?」
ボクを救ったのは、どうやらこのオッさんらしい。
新しい敵なのか!?
アリス様からは、何も聞いてない。
警戒しておくべきなのか。
あまりの突拍子の無い登場。
困惑が募るばかりだった。
「何やつだ……まさか増援!?」
「バカだなぁー。増援なんてある訳ねぇーだろ」
「じゃあ、貴様は何なんだ!」
「──オレは傭兵さ」
「傭兵だと……冒険者かぶれが!」
「なんとでも言え」
──スキル発動。
──シールド・バッシュ。
勢い良く敵兵に盾で殴りつけた。
無力化に成功したみたい。
「良くやったな少年」
「あなたは……」
「アリスに雇われた傭兵さ」
「アリス様が!?」
「もしかしてお前がルミナスか?」
「そうですけど……」
「よくここまで耐え抜いたな。後は任せろ」
見たところ盾職だ。
アリス様からの援軍。
本当に頼もしい。
頼もしいけど、なんで盾職なんだ。
防御が基本となる役職。
盾でこの戦況を覆せる訳がない。
助けてくれたのは嬉しい……。
けど、そうじゃない。
戦線が維持出来るだけでも正直言ってありがたい。
ボクには、何も出来なかったから……。
ボクのかわりに戦ってほしい。
「ボクからもお願いするよ。名前は……」
「ガードナーだ。すげぇよお前」
「何がさ……こんなザマで……」
「この数の敵兵を一人で抑えてたのか」
「ボクに出来ることをしたまでさ」
「そうかい。じゃあ、早く終わらせてくるわ」
ガードナーは何を言っているんだ。
終わらせてくる!?
意味が分からない。
君は盾職だろう。
突破力なんかある訳ない。
ボクの常識がおかしいのか!?
ガードナーは、一切の揺らぎがない。
本当にやるって言うのか。
あの数を前に盾だけで……。
半信半疑にもなるよ。
アリス様が雇われたこの盾職。
一体、何者なんだ……。
──ファンネル・シールド。
ガードナーが魔法を唱えた。
その魔法は、珍妙にして不可思議。
数を数えることが出来ないほどの盾が出現した。
一体、いくつあるんだ……。
天を埋め尽くす小型の盾。
その盾が敵兵に目がけて射出された。
「こっから話しかけるなよ。操作が繊細なんだ」
盾が敵兵を次々と殺していく。
敵兵も負けじと、遠距離魔法部隊が応戦していた。
ただし、それすらも効果が薄かった。
ガードナーの盾は、遠距離魔法部隊の魔法を弾く。
攻撃も守備も抜かりはない。
完璧に魔法攻撃を対処していた。
そして、カウンターが決まる。
遠距離魔法部隊の合計百人。
追撃も入って、その全てを盾で殴殺した。
殺すまでの時間は、1分ほどしか経っていない。
──この男は、化け物だ。
敵兵の泣きごとも聞こえてくる始末。
なんで盾職がこんなこと出来るんだ。
敵を蹂躙する様は、まさに魔獣そのもの。
起こっている事実にボクは眼を塞ぐしかない。
「どうなってやがる。我が軍が追い詰められている!?」
「オレを止めたきゃ、一万の軍隊でも用意するんだな!」
「我らが……全滅するのか!?」
「オレはもう止まらないぜぇー!」
──数分が経過した。
抗う術のない敵兵を盾が執拗に追いかけてる。
また一人、殺していた。
追尾する盾って存在するんだ。
変な関心を抱いてしまった。
盾が飛ぶ速度も速い。
剣士も盾の速さについていけていない。
魔法剣士部隊も全滅した。
ボクは何を見せられている。
これは勝ったも同然じゃないか。
呆気にとられていたら、もう戦闘は終わってしまった。
──ボクたちは、小隊の殲滅に成功した。
「凄すぎるよ……」
「言ったろうが。終わらせるってな」
「あんな盾魔法みたことない!」
「オレの盾はすげぇーだろ」
バカっぽく自慢するのがなぜだか癇に障る。
傭兵とはこんなに強いものなんだろうか。
魔法も技術も卓越していた。
こんなに強いのなら有名にもなるはずだ。
珍しい盾魔法だって、平気で扱う化け物。
このガードナーって男……。
確かに強いけど、信用して良いんだろうか。
その強さを見込まれて、この戦場に来たのか。
アリス様のことが分からなくなってしまった。
「君は本当に傭兵なの?」
「そうさ、オレは傭兵だ」
「これでもボクは冒険者をやっていた」
「それがどうしたよ」
「噂を聞いたことがないんだ」
「噂ねぇ……」
「そんなに強い盾職をボクは聞いたことがない」
「なんかさっきから褒めてばかりだな」
「嘘をついているだろ。やましいことでもあるのか?」
絶対に違う確信があった。
こいつは、傭兵なんかじゃない。
常識を超えるあの強さ。
異能の力。
かつていたとされる勇者にも似ている。
絵本で読んだ話しだけど……。
ただの架空の話し。
それがもし実在していたとしたら。
恐ろしいことを考えてしまった。
「どうしてオレに噂が無かったか教えてやるよ」
「訳ありって……こと?」
「そう海よりも深ーい訳があるのさ」
「焦ったいな。早く教えなよ」
「常に餓死寸前で依頼どころじゃなかったのさ!」
「──はぁ?」
「おまけに久しぶりのパンが道に落ちてたんで拾ってみたらこのザマよ。落とし穴に引っかかった」
「──もう……黙ってくれないかな」
──ボクの抱いた幻想を返せ!
何が勇者に似てるだ。
似ても似つかないじゃないか。
ちょっとでも思ってしまったボクが恥ずかしい。
落とし穴ってきっとあれだ。
アリス様が用意しろって言ってた足止め用の罠。
こんな単純な罠に引っかかるなんて……。
きっと、コイツはバカなんだ。
落ちてるパンを食べようなんて発想にも至らない。
毒かもしれないとか、普通は警戒するはず。
戦闘の時は、頭が良さそうなのに。
空腹は、人を狂わせるらしい。
アリス様……聞いて下さい。
貴女は恐ろしい変人を見つけたみたいですよ。
──変な盾を扱う変な人でした。
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