第12話『魔剣スカーレッド』
──敵陣営のど真ん中。
ヴァルはそこに立っていた。
私とルーカスはどうにか間に合ったらしい。
まだ戦いが始まっていない。
都合の良いタイミングだった。
小隊長の登場を待つヴァルの横顔は普段と違って見える。
──冷たい眼。
戦闘をする姿を見るのは始めてだ。
どんな戦いになるんだろう。
ルーカスは心配ないと言うけれど……。
展開はどう転ぶか分からない。
岩場の隅っこでその勇姿を見守ろうと思う。
「──よぅ久しぶり」
ヴァルの第一声がそれだった。
敵の部隊長が姿を現したんだ。
──何とも言えない威圧感。
──恐ろしいほどの殺気。
これで小隊長なのか。
まだこれよりも上がいるなんて……。
考えるのはよそう。
「お前……ヴァルモニアなのか!?」
「十年振りの再会だなヘリオス」
「どうしてだ……どうしてお前が反乱軍なんかに」
「今はそんな話し無駄だぜ」
「……どうしてもなのか」
「そうだな……殺してやるよ」
国王軍の関係者だけはある。
やはり知り合いだった。
ヘリオスからしたらヴァルは闇堕ちした兵士。
そう見られているんだろう。
仲が良さそうな……。
そんな気さえ感じてしまう。
だけどヴァルは迷いがない。
本当に殺してしまいそうな。
心を殺す姿があった。
「ヴァルモニアほどの剣士がどうしてなんだ」
「俺は俺の道を進もうとした。それを阻むなら……」
「やはり……殺し合いは避けられないのか」
「終わりにしようぜ。こんな国なんかさ」
これ以上の言葉は、もう必要としていない。
お互いに剣を抜く。
剣先を互いに向かい合わせた。
その時のこと──。
ヴァルの大剣が激しく燃え広がった。
剣が紅に染まる。
全てを飲み込むような地獄の焔。
ただの剣でないことは容易に分かる。
なんだあの剣は……。
神秘的というか、あれは芸術そのものだ。
「あれは魔剣なんだ」
ルーカスが口を突いて出た。
口にするつもりじゃなかったらしい。
自然に出た言葉。
確かに無理もない。
あの剣の美しさに私も見惚れてしまった一人だ。
「魔剣って何よ」
「誰が作ったかも不明だし、出現先も不明の剣だよ」
「なんだかよく分からないわ」
「人が理解出来る代物じゃないんだよあれは……」
「不思議な魅力があるのは確かよね」
「その中でもあの剣は一級品だ」
「そんなに凄いの?」
「見ていれば分かるさ」
両者の睨み合いが続いている。
お互いにまだ攻める様子もない。
なぜ戦いが始まらないんだ。
その答えは、ヘリオスを見れば明らかだった。
──身体が硬直している。
達人同士なら分かってしまうんだ。
今この時、攻め込んでしまったら死ぬ。
それほどの威圧が魔剣から滲み出ている。
勝負が動き出したのは、ヴァルの先制からだった。
「燃え上がれ、スカーレッド!!」
──火力が上がった。
ヴァルの身体を飲み込むほどの怒り暴れる炎。
それだけ炎上したら、身体の方が耐えられないじゃない!
だけど、そんな心配も必要なかったらしい。
あれだけの炎を浴びている。
それにも関わらず、外傷の一つも無い。
あれだけ美しかった炎。
今ではとても荒々しく──。
恐怖を抱いてしまった。
「ヘイルブラスト!」
負けじと、ヘリオスも風魔法を使う。
ヴァルは防ごうともしない。
風の刃が無数に押し寄せていた。
「鬱陶しいな……」
魔法は直撃だったはず。
それでも、ヴァルの身体には傷一つもついていない。
「ちょっと、何よあれ!?」
「あの炎が魔法を焼き尽くしたんだ」
「そんな芸当も出来るのね」
「あの炎は鎧でもあり剣なんだ」
触れた物を焼き尽くす業火。
そう言いたいらしいわね。
魔法の攻撃も受け付けない。
触れた相手は致命傷になる。
反則級の強さだった。
これが単独撃破性能が高いと言われたヴァルの能力。
規格外に強すぎる。
そりゃ、魔法も要らない訳だ。
妙に納得してしまった。
そこら辺の魔術師じゃまず相手にならない。
戦おうとすることすら、おこがましい。
悪魔の様な力だった。
「これもダメなのか……」
「力の差は歴然だろうが」
「これなら……どうだ!」
「──帝国剣術でくるか!?」
炎をまといながらの剣撃の応酬。
どちらも引けを取らない。
だけども、これも技術の差でヴァルに打ち返しをされた。
技術も性能も……。
ヴァルが数段上回っていた。
「やはり強いなヴァルモニア」
「……ヘリオスが弱過ぎるんだぜ」
「少し……無駄話に付き合えよ」
「お断りしたいんだがな」
「なぜ……カトレアを殺した?」
「うっかり殺っちまったのさ」
「嘘だな……お前はそんなやつじゃない」
カトレアとは、女性の名前なのか。
殺したって……どういうことよ!?
ヴァルの過去にも、この反乱軍には意味があるのか。
創設したきっかけであり、ヴァルの因縁。
どうやら関係があるな。
ルーカスめ……。
こんな大事なことなんで黙ってたのよ。
知らないはずがない。
もしかして恋人とかだったりするんだろうか。
きっと聞いても教えてくれない気がする。
「守らなきゃならない存在だからこそ殺さないといけないこともあるんだぜ。それに……とっくに俺は覚悟を決めた」
「国を裏切ってでもしなきゃならんことなのか!」
「そうだ、だから俺はここに立っている」
「今ならまだ間に合う。反乱軍なんか辞めろ」
「反乱軍?そんな幼稚な組織やってねーぜ」
「じゃあ、今のお前は──」
「──project Alice。そう名乗ってる」
「お前がリーダーじゃなかったのか!?」
「ウチにはいるからな。絶対的な女王様が!」
「どこまでもふざけたやつだな……」
「──今はただの部隊長だぜ。楽しく殺ろうや」
理由もなく、ヴァルがカトレアを殺したとも考えにくい。
また……国王なのか。
人を狂わせる元凶。
策略にハマって復讐に燃えるようになった。
なんだ……。
ヴァルと私は最初から似た物同士じゃないか。
思えば、初対面から優しかった印象がある。
哀れんでくれていたのかもね。
悲運な私に少しでも慰めてやれるように。
共闘の約束の時もそうだった。
──ここ一番って時以外は戦場に立つな。
何よ……こんな約束。
私にこれ以上気づいてほしくないんじゃない。
そんな思いで私にそう言ったんでしょ?
バカよね……。
格好つけ過ぎなのよ。
そんな私を女王様だなんで崇めちゃったりして。
ヴァルの知らない一面が見られた。
ここまでされたら、私はもう負けられないじゃない!
「派手に踊ろうぜヘリオス」
「冥土まで送り届けてやるぞヴァルモニア!」
この戦いも終わりに近づいている。
魔剣の炎が更に燃え上がるのが伝わってきた。
己の野望と信念を賭けた戦い。
どんな幕引きでも私は責めたりなんかしない。
思いっきりやってきて。
その先にヴァルの本物がある。
欲しいものがあったから、あなたはこれまで辛い戦いを続けてきたんでしょう?
私とヴァルの目指すその先。
国王を殺す為に──。
その剣を振るうといい。
これは、私が命じた私の責任。
ヴァルの後悔は、全部私が背負うから。
業を燃やしたその剣でヴァル自身の未来を切り開け。
その英雄の姿を前に、私の心は狂おしいほど熱くなった。
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