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地獄に堕ちた公爵令嬢〜裏切りと婚約破棄の復讐につき、あなたを殺します〜  作者: 久方久米


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第11話『ガードナー参戦』


 ──改めて戦況を見ていた。


 前線に着いた私たち。


 ルミナスが必死にフォローしている。


 我が軍の兵も敵兵を討ち取っている。


 状況は良さそうに見えるけど……。


 人数の暴力は卑怯だなとつくづく思う。


 いくら兵を倒しても無限に湧いてくるようだった。


 伊達に三百も兵がいる軍隊だな。


 数の力は凄まじい。


 それに抗えているのは、紛れもなくルミナスのおかげ。


 やはりルミナスは天才だったんだ。


 自動回復って凄いんだと自覚させられた。


 毎秒で我が軍の兵士の体力が全回復する。


 ケガなんてしたって一瞬で治ってしまう。


 こんな逸材を冒険者は腐らせていたのか……。


 見る目がないやつもいたものね。


 ガードナーにも戦況を見せる。


 拮抗しているようでジリ貧。


 歯切れの悪い展開だ。


 「まさかあれと戦ってんのかい?」


 「そうよ……国王軍と戦っているの」


 「反乱軍の大将だったのかよ」


 「女王様と呼びなさい」


 「一緒じゃねーか」


 「いけるわよね?」


 「……ちと数が少ないんじゃないか?」


 痛いところを突いてくる。


 ──戦力差10倍。


 その戦場にただが飯一つで依頼したんだ。


 無理ならもう戦いを降りてもらって構わない。


 あまり期待してなかった訳だし……。


 軽く前線に出てくれれば御の字だ。


 無理を承知での依頼。


 判断はガードナーに任せよう。


 「やっぱり無理よね。嫌なら降りていい」


 「そういう意味じゃねーよ」


 「じゃあ、何なのよ」


 「敵の数が少ないって言ったんだ」


 「──何ですって!?」


 数の計算も出来ないのか。


 絶対不利の戦況を拮抗するまででやっとなのに。


 やはり、任せるのは間違いだったのか。


 「たかが三百の兵士だろ」


 「あなたならやれるの?」


 「優秀な回復術師が居るな」


 「そりゃ……いるけど……」


 「じゃあ、問題ない。すぐ片付ける」


 「信頼していいのよね?」


 「さっさと行きな。行くところあるんだろ」


 「……健闘を祈ります」


 「その前にそのパンを寄越しな。腹が減った」


 「……拾い食いはお腹を壊しますよ」


 前線を任せることにした。


 傭兵として培った戦いのセンスがきっとある。


 そう信じることにした。


 ガードナーに別れを告げる。


 目指すは本丸の敵陣営だ。


 そろそろヴァルが小隊長と衝突する頃合い。


 戦闘が始まっていても不思議じゃない。


 向かわなければ……。


 ヴァルが倒してくれない私も動けない。


 部隊が崩壊した後が私の本番。


 でないとマリアの隙を突くのは不可能に近いんだ。


 それまでどうか前線よ。


 持ち堪えてほしい。


 「道のりが少し遠いね」


 「そうね。でもあんまり疲れてないでしょ」


 「バレちゃったか」


 「分かるわよ。ずっとルーカスと居るのよ?」


 「僕のことがよく分かっていらっしゃる」


 「私の暴走に巻き込んだのは悪いと思ってるわ」


 「あの盾役のことかい?」


 「それ以外無いでしょ」


 「狂ってるけど面白いやつじゃないか」


 「何も面白くない!」


 ルーカスめ……。


 私をからかって楽しんでやがるな。


 こんなのは行き当たりばったりだ。


 都合が良かった。


 ただそれだけのこと。


 まともな状況ならまず相手になんかしていない。


 けどあんなところに傭兵がねぇ……。


 内戦があるところには現れるものなんだろうか。


 金になるんだろうし、そんなものなんだろう。


 「ガードナーはやれると思う?」


 「僕もあんな傭兵は知らないかな」


 「有名じゃないのね」


 「実力は未知数だ」


 「……なんだか雲行きが怪しいわね」


 「怪しいやつには違いない」


 「そうよね。絶対に女にモテなさそうよあれ」


 「でも嬉しかったんじゃないか?」


 「それはどうしてよ」


 「惚れろって言われていたじゃないか」


 背筋がゾクッとした。


 そうだったな。


 急に言うもんだから、つい悪態を晒してしまった。


 盾役のくせに自分のモラルは守れないなんて……。


 人の心をどこかに置き去りにしたのかな。


 同じ人間だと思いたくない。


 「もう……思い出したくもないわ」


 「アリスはやけに当たりが強いね」


 「だってセクハラ変人じゃない」


 「いっそ、雇うのを辞めて仲間にしたら?」


 「それはアドバイスで言っているのかしら」


 「いや……悪い冗談だよ」


 普段はそんなこと言わないじゃないか。


 口出ししないって条件なのに。


 今回だけよ。


 この戦いが終わったら、もう会うこともないんだから。


 ルーカスに睨んで一喝した。


 「けど引っかかるね」


 「どうして?」


 「あの敵兵の数に驚きもしていなかった」


 「勝算があったのかしら」


 「それは……難しいんじゃないかな」


 その理由も分かる。


 私の勝手なイメージの話し。


 盾で攻撃を防ぐだけ。


 防御特化の役職。


 だけど、パーティにとっては大事な役割でもある。


 その役職があの余裕な表情だったんだ。


 「盾って攻撃が出来るのかしら」


 「一つだけあるよ」


 「どんなスキルなのよ」


 「シールドバッシュ……いわば盾殴りだね」


 「強いのかしら」


 「微妙なところだろうね。スキルを覚えないと使えない」


 「それで三百の兵士を倒せる?」


 「無理だね。時間がかかり過ぎる」


 「そ……そうよね……」


 決定力不足の解決には至らないか。


 だけど、マリアさえ殺してしまえばこの戦争は勝つんだ。


 何も殲滅だけが勝利条件じゃない。


 戦争には戦い方がいくつもあるんだ。


 私に合った戦い方をすればいい。


 ──私は弱いんだ。


 今は仲間に全て頼りっ放しだけどそれでいい。


 知恵と工夫で勝負する。


 知恵は弱者にとって最強の武器になる。


 今頃マリアは慌てふためいていることだろう。


 奇襲を仕掛けたのに、戦況が動かないんだから。


 まさか貧民街のやつらに下剋上をされるなんてね。


 「もうヴァルは戦闘を始めているのかしら」


 「そうだろうね。相手が可哀想だ」


 「可哀想なの?」


 「ヴァルが相手じゃ勝ち目がないからね」


 「そんなに強かったのあの男……」


 「昔は国王軍の精鋭部隊で副団長をやっていたからね」


 「……初耳なんですけどそれ!」


 「誰にも言っちゃダメだよ。禁句ってやつさ」

 

 「なんで辞めてまで反乱軍なんかやってるの?」


 「色々あったのさ」


 今度ちゃんと聞いてみるかな。


 教えてくれるんだろうか。


 ヴァルなりの因縁があるらしい。


 そうでなければ反乱軍なんかやってないはず。


 国王はどこまでいっても腐っているのね。


 都合が悪くなると殺して始末する。


 その手口に私も巻き込まれた口だ。


 生きているだけで被害をもたらす害獣と一緒だ。


 どうせまだ出番でもないし……。


 ヴァルの戦いを見守ろう。


 「それだけの実力があっても魔法が扱えないのね」


 「ヴァルには必要ないんだよ」


 「それ本人も言っていたわ」


 「もし魔法が扱えていたら世界最強は彼だったさ」


 「じゃあ今のヴァルは?」


 「──ただの最強そのものさ」


 「……ルーカスよりも強いの?」


 「僕はあんな戦闘狂じゃない」


 「だってアビスを生還するほどじゃない」


 「あれはただの素材採取だよ」


 ルーカスも実力を隠しているタイプだな。


 隠す必要なんてないと思うけど……。


 まだ私の知らないルーカスがいる。


 どんな魔法を使うんだろう。


 少し気になる私がいる。


 なんか考えるだけバカらしい。


 いつか、活躍するルーカスを拝める日が来るのかな。


 なんて……期待しちゃったり。


 長く話し過ぎた。


 ──早くヴァルの元に急がなくては。


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