Trick or Treat !《ヘリオス&シュゼル+ウィスカ》
この話は《ヘリオス&シュゼル+ウィスカ》編です。
コミカル寄りの小話となっています。
ハロウィン限定シリーズ最終話です。
昼下がりの談話室。
香ばしい甘い香りが立ち込めるその部屋の奥に、シュゼルはいた。
「……こんなものか」
出来上がった品々を見て頷くと、一度布をかける。
後片付けが終わる頃、ちょうど扉の開く音がした。
「シュゼル! ここにいる?」
部屋にいなかったから、探しに来たのだろう。
ヘリオスの声を聞き、シュゼルは奥から顔を出した。
「どうした」
「あ、いたいた。えっと……トリックオアトリート!」
いきなりの宣言に、シュゼルは一瞬だけ瞬きをした。
そして何事もなかったかのように頷く。
「……今日はハロウィンだったな」
「え、知ってたの?」
「行事ごとは一通り記憶している」
そう言いながら、彼は再び談話室の奥へと足を進め、手招きする。
不思議そうにあとを追うヘリオスの前で、調理台にかけていた布を取った。
彩り豊かなクッキーやチョコレート、そしてかぼちゃのケーキ。
どれもハロウィンらしい装飾が施されている。
「すごい! どれもおいしそう!」
目を輝かせるヘリオスに、シュゼルは穏やかに微笑む。
「好きなものを好きなだけ食べていい。今日は特別だ」
「いいの!? 本当に!?」
「ああ。普段は制限しているからな」
シュゼルは栄養管理を徹底しているため、普段なら「糖分の摂り過ぎはよくない」と言われるところだ。
どうやら今日は例外らしい。
「ありがとう、シュゼル!」
「礼を言うほどのことではない」
そう言いつつも、どこか満足げな表情を浮かべている。
二人の様子をじっと見ていたウィスカが、ソファの背もたれに飛び乗った。
「……ハロウィンって、甘やかす日だったか?」
「え?」
「お菓子をもらう日、じゃなくて“もらわせる日”に見えんだけど」
思わず笑い出すヘリオス。
シュゼルは苦笑しながら、柔らかく答えた。
「そういう日があっても、悪くはないだろう」
「うん、僕もそう思う!」
笑い声が響く中、ウィスカはふわりと尻尾を揺らす。
その動きを見たシュゼルは、そっと別の皿を差し出した。
そこには飾り切りされた果物が並んでいる。
「君用も用意しているが」
「ねだったわけじゃねーよ」
「では、いらないのか?」
問いかけに、ウィスカは一瞬だけ顔を顰めたが、ふいと顔をそらして答えた。
「……食ってやってもいい」
どこか照れたような声に、また笑いがこぼれる。
「では、テーブルに運ぶか」
「あ、僕も手伝うよ」
いつもの日常の中の、小さなイベント。
穏やかなティータイムの始まりだった。
お読みいただきありがとうございます!
これで《ハロウィン小話シリーズ(全3話)》は完結です。
ベルナルド、ノクス、シュゼルたちそれぞれの「Trick or Treat!」を楽しんでいただけたなら嬉しいです。
ちなみにシュゼルは少し前から、街に着くたびこっそり材料を準備してました。
どう見ても食べ切れる量ではないので、この後談話室に来た人たちとも一緒に食べたとおもいます。




