表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見る少年と未羽化の蝶  作者: 桜 みゆき
一章 孵化する関係は
3/54

二話 幼蝶は人が嫌い2

 学園生活がはじまり、はじめは緊張していたレンだったが、クラスメイト達ともあっという間に打ち解けていた。

 だが、アカデミーに到着した初日に、気まずい初対面となった同室者ファルだけは別だ。

 というより、そもそも彼はレンだけではなく、誰とも必要最低限の会話以外をする姿を見たことがなかった。

 そんなファルをどうしても放っておくことができず、今朝も話しかけてはみたが完全無視されている。今のところ全敗中だ。

「――お前はいいよなぁ」

 授業と授業の間にある小休憩の時間。レンは隣に座る友人ルークに、ぶすりとした顔でそう言った。

「はぁ? 何がだよ」

 怪訝な顔で振り返った彼は、レンが拗ねているのを見て肩を竦めた。

「だってさぁ、さっきのお前の同室の奴だろ?」

「そうだけど……、なんだよ」

 ルークとその同室者である少年は、ついさっきまで仲良く放課後に出かける予定を立てていたのだ。

「べっつにぃ! 外出の約束なんて、仲いいなって思っただけだよ!」

「羨ましいなら自分もすりゃいいだろ」

 事も無げに言うルークに、レンはむっとする。

 そんなこと出来るならしてるのだ。

 だがこちらは、その同室者から無視され続けている。理由もわからず。だから、レンは羨ましさをかき消すように、わざと憎まれ口をたたいた。

「別に羨ましくなんてないから! それに一緒に出かけたくなんかないね、あんな本ばっか読んでる根暗――」

「あ、おい……」

 ルークの声と、別の方向から感じた冷えた視線にハッと口を噤む。

「…………、」

 しまった、と思った時にはもう遅い。その冷たい視線の先には、いつもの倍は鋭い眼差しでこちらを睨むファルがいた。

 何か文句を言われるだろうか。

 身構えるレンだったが、予想に反してファルはふいっと視線を外す。そして、何事もなかったかのように自分の席についた。

 聞こえなかった、わけではないだろう。だが、文句を言うほどの価値もないと思われたような気がした。

「……おい、レン。謝ったほうが良くないか?」

「…………やだ」

 理性ではルークの言うとおりにしておくべきなのは分かっていた。だが、どうしても素直に頷き難い。

「『やだ』って、お前な……」

 呆れたようなルークの声を尻目に、レンはギッとファルを睨むような視線で見つめる。

 彼の視界に入っていない。存在すら認知されていない。それがどうしてだか、我慢ならないほど腹立たしかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ