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僕のヒーローは泣かない  作者: 人畜 有害
6/8

6.君のヒーローになりたい

人畜 有害と申すものです。趣味で小説を書いています。感想や質問など気軽にしていただけると幸いです。

僕は、人生で一番大切な日に偉大な寝坊をした。別に楽しみで寝れなかったと言うわけではないのだが。寝過ごして待ち合わせの時間に間に合わなかった。やっちゃった。待ち合わせ場所に彼女の代わりに手紙が置いてあった。その内容についてはもう少し待って欲しい。今はまだ、思い出したくもない。


その日は珍しく朝日と共に目覚める事が出来た。僕の両腕ではハル姉と瑠璃が眠っていた。その時僕は泣いていた。あれは僕にとっては悪夢と言って良い。だが、安心して欲しい。高校2年生の僕は悪夢を見ようと流石におねしょはしないのだ。危なかった。ギリギリだった。2人はまだ眠っている。今日は1人で外に出てみることにするか。

2人を起こさないように何とかして2人の腕を外す。何を言っているか分からないかもしれないが、僕にも分からないんだ。毎度の事だがハル姉と瑠璃は寝る時ですら僕と腕を組んで寝ているのだ。早く脱出しないと、と焦る気持ちを抑えるので必死だった僕は自分がこの世界の文字を読めない事や一文無しである事など頭の片隅にもなかったのである。そんなマヌケが最初に向かったのはこの町の中心にある噴水広場だった。そこでは商品を搬入している人が多く見受けられた。かなり活気のある町の様だった。そんなありきたりな屋台の中でまたもやありきたりな怒鳴り声が響いた。

「泥棒だっ!」

町の人達はそれに慌てる事はしなかった。この町は、この異世界はそういうところなのだろう。

「やっと捕まえたぞ。誰か衛兵を連れてきてくれ。お前は犯罪奴隷として暮らす事になるぞ。ざまあねえな。」

とうとう捕まった様だった。泥棒の犯人はどうやらフードを被った子供の様だった。僕の予想だと女の子だ。そこで僕はスキル〈鑑定〉を使用した。いつそんなスキルを手に入れたのかって?今はそんな事の説明をしている暇はないので簡単に説明すると昨晩に新しい装備の能力を調べるために取得したのだ。その鑑定で3人の装備を調べたがよく分からない特殊能力ばかりでよく分からなかった。そんなことよりも早くフードの子供について調べたい。やはり僕の予想通り女の子だった。しかも13歳のだ。相手がロリだと分かった僕の動きは速かった。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

「なあ、おじさん。こんな小さな子供相手に酷いことするなよ。林檎の一つくらい分けてやれよ。器が小さいと嫌われるぞ。13歳の女の子を奴隷にするなんてロリコンの僕が黙っちゃいないぞ。」

おっと、最後の一文は口に出すつもりはなかったのだが。つい、熱くなって口走ってしまった。これ以上熱くなっていたら恥をかくところだった。

「おいおい、なんだよあんたは。いきなり出て来てロリコン宣言とは面白いじゃないか。まあ、悪いがこっちも商売なんでな。あんたがこいつの代金を支払うってんなら考えてやるぜ。えーと確かこれで3回目だよな。それじゃあ45ガルムって所だな。」

一文無しの僕に何を言ってるのやら。まあ、とりあえず懐を漁っているフリでもしてみる事にする。すると、なんか入ってた。袋の様だ。中にはおそらくこちらの世界の貨幣が入っていた。そこに一緒に手紙が入っていた。

『お兄ちゃんへ

人助けするのは良い事だけど、他の女の子に手を出すのは許さないからね〜帰ったらお仕置きね。


               可愛い妹より』

手紙に対する僕の恐怖が増加した。ここまで行くと未来を知っているみたいじゃないか。末恐ろしい妹だ。ありがたい事にこれでこの場を納める事が出来そうだ。だが僕にはこの世界の貨幣の価値をよく知らない。でも大丈夫。僕は袋のまま貨幣を手渡した。

「オヤジ、これで足りるか?」

「おっ、おう。ちょっと待ってくれよ。なあ、あんた。これはちょと多過ぎだぞ。残りは返しとくぞ。」

なんとかこの場は収まったようだ。それにしてもこの子、どこかで見たような気がする。だが、今の僕には13歳のお友だちは居ないから気のせいなのだろう。

「とりあえずそこら辺のベンチに座ろうか。話はそこからだ。」

3人掛けのベンチの両端に座った。

「あっ、あのさっきはありがとうございました。あなたが居なければどうなっていたことか。」

そういえばこの子の声を初めて聞いた。でもこの声どこかで…

「なあ、そのフードを脱いで顔を見せてくれないか?」

「ごめんなさい。このフードはどうしても外したくありません。」

何か事情があるようだ。まあ、そんな事ロリコンである僕には全く関係ない。僕はお構いなくフードを脱がせた。これを要約するとロリを脱がせた、となる。以上ロリコン講和でした。

「きゃっ、なっ何するんですか。フードは脱ぎたくないって言ったじゃないですか!」

そう言う彼女の顔は昨日夢に見たあいの昔の姿そっくりだった。

「あい?」

「なっ、なんで私の名前を知っているんですか。通報しますよ。」

「なんでこの世界にあいが居るんだ?しかも、こんなに可愛いなって。そうか、僕はロリコンと言うわけでは無いのだ。あいに対してだからこんなにも狂った事が出来たのか。」

「お兄さん、自分が狂っている事は理解しているんですね。でも、私はお兄さんの事は知らないですよ。だからそんなに息を荒げないで下さい。本当に通報しますよ。」

「すまない。ちょっとした出来心なんだ。違う違うただの人違いだ。」

「人違いですか…そんなことよりお兄さんはなんで私の事を助けてくれたんですか?」

「それはほらあいちゃんが僕の好きだった人に似てたから…なあ、そんなに怖い顔をするなよ。分かった分かった。そうだなぁ、僕も誰かのヒーローになりたかったからかも知れないな。」

「お兄さんって本当は良い人なんですか?」

「いや、僕はまだまだなんだ。僕はこれまでに3人に命を救われているんだ。だから、まだまだ救い足りないよ。」


「じゃあ私を救えるものなら救ってみてね、奏くん。もしかしたら、今の君になら私を救えるかもしれないよ。」


久方ぶりに聞いたあいの声はとても綺麗で儚げで今にも飛んでいきそうなほど希薄だった。だけどベンチにはあいの姿もあいちゃんの姿も無かった。その頃にはあの頃のように日が沈み掛けていた。ハル姉と瑠璃の声が遠くで聞こえて来た。あいちゃんが座っていた所を見ると手紙が置かれていた。


『奏くんへ

久しぶりだね。今、私はとある事情で直接会う事が出来ないのでまた手紙で伝えるね。私は囚われています。だけどそれは私が悪いし奏くん達を巻き込みたくは無いの。それでも奏くんは助けてくれようとするでしょ?だから忠告しとこうと思ってこの手紙を書いたの。まず、私は奏くんの知っている私では無いの。そして、今の奏くんが私の所に来ても“また”死ぬだけ。だから、もっともっと強くなってそうして、



私を殺して。おねがいね。


               灰の女王より』


その後、僕はハル姉と瑠璃により確保された。それで何があったのかと聞かれたが僕が黙秘権を行使する事で収まった。だけど、両腕の痛みは治らなかった。とりあえず僕はお腹が空いたのでなんでも良いから食べたいが、2人がそんな事で許してくれる訳もなくこっ酷く怒られる事となった。僕のヒーローはもう、助けてはくれなさそうなので自分でなんとかするしか無いのだ。だって僕のヒーローが助けを求めているのだ。だったら僕が立ち止まる訳にはいかない。そうして物語は一つ目の終わりに向かって突き進むのだった。

ご一読ありがとうございます。感想や質問などお待ちしております。

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