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僕のヒーローは泣かない  作者: 人畜 有害
2/8

2.人気者は辛いね

 それから5分くらい王様らしき人の話が続いた。

内容はあんまり覚えてない。でも何故か王様や周りの騎士達の目線が僕に集まっている。人気者は辛いね。ああ、それと話は変わるのだけれど王様の目の前で手を頭の後ろで組んで膝をついている奴が居るらしい。そんな奴いる訳ないと思われてしまうかもしれないが本当に居るのだ。まあ僕だった。ここで勘違いして欲しくないのは僕が好きでこんなポーズを続けている訳ではないという事だ。何故なら僕の両肩はハル姉と瑠璃によってガッチリと固定されているからである。別に2人は怖がっている訳では無さそうだ。怖い訳では無いのなら離してくれても良さそうなんだがなぁ。そんなこんなで王様の有難いお話が終わった。次の演目は勇者御一行による無秩序な質問タイムだ。群衆が騒めく中、凛とした声が響いた。

「国王陛下っ、質問がございます。」

生徒会長の質問に一同が静まる。やはりこういう時にハル姉は頼りになると実感する。

「私はこの生徒達のリーダーをさせて頂いている西園寺 遥と申します。この国の法律について詳しく教えて頂きたく存じます。」

ハル姉が玉座まで2メートルという所まで近づく。

「其方が勇者達のリーダーであるか。この国の法律について知りたいと申しておったな。法律についてはこの本に書かれておる。」

ハル姉は異世界の本をスラスラと読み進めていく。それを見た他の生徒達が次々と王様の方に向かっていく。日本人の性なのか段々とそれが列になっていく。王様は一人ひとりに対応している。さすがはキング、器が大きいものだ。王様の目の前にいた僕は行列の邪魔になると思ったので右後ろに振り向いた。瑠璃はそれで察して僕の右肩を離した。やっとの事で膝立ちから解放された僕は大きな柱があったのでそこにもたれ掛かった。

「ねぇお兄ちゃん。これから瑠璃たちどうして行こっか?」

「そうだなぁ。この中の誰かが勇者に選ばれて魔王討伐にでも行くんじゃないか?」

「お兄ちゃんあの王様の話聞いてなかったの?魔王は30年前に勇者に倒されたらしいよ。」

「じゃあなんで俺たちはこの世界に呼ばれたんだよ。」

「はぁ、ほんとに聞いて無かったの?王様達も好きで地球から勇者を召喚した訳じゃ無いんだってさ。だから瑠璃たちはこれから自由に出来るらしいの。だからこれからどうしようかなって。」

「本当に異世界に来てしまったんだな。今すぐにでも逃げ出したい気分だ。」

瑠璃に右腕を掴まれた。腕を絡めて来たと思ったら恋人繋ぎまでして来やがった。

「異世界にでも行ったら考えるとは言ったが了承した訳じゃ無いからな。大体この世界にも法律があるんだろ?」

「それを今ハル姉が見に行ってくれてるんじゃん。合法だった時は、ね。」

そうこうしているうちにハル姉が帰って来た。少し落ち込んでいる様に見える。瑠璃もそれを察したのか僕の右腕を強く締め付ける。今、僕の腕からポキッという小気味良い音が鳴った。

「瑠璃、良い報告と悪い報告があるけどどっちから聞きたい?」

「悪い方からで。」

聞かれていない僕が即答する。

「むぅ、それじゃあ良い方から。この国の法律では血の繋がった兄弟姉妹での婚姻は合法らしいわ。」

「やったあ。それじゃお兄ちゃん、どっちと結婚するかちゃんと考えといてね。」

「ああ、それともう一つ朗報よ。この国では重婚も合法らしいわ。だから私か瑠璃か、選ぶ必要が無くなったわよ。良かったわね、奏。」

別に僕はハル姉か瑠璃のどちらと結婚するのか考えている訳では無いのだが。まあ、黙って置くほうが身のためだろう。そんな事を考えているとハル姉が僕の左腕を掴んだ。また、身動きが取れなくなってしまった。

「それじゃあさ、悪い報告ってなに?」

「国民の9割が信仰しているヒュンミュール教が教典で兄弟姉妹の婚姻を禁止している事なの。」

「国教という訳ではなくともかなり力を持っているんだな。そのヒュンなんとか教って奴は。」

「それじゃあまさか、お兄ちゃんと教会で結婚式出来ないって事?そんなのって、フェルメールだかキュルミュールだか知らないけど絶対に許さないっ。」

「そうなんだ。だから教典を変えさせるか、ヒュンミュール教を潰して新しい宗教を作らなくてはならないかも知れない。」

強張ったハル姉の顔を久しぶりに見た。あの事件以来だろうか。ハル姉と瑠璃が僕のヒーローになったのはその時だったな。あ、そう言えば忘れていた事が一つあった。異世界に来たら絶対にしなければならない事だ。

『ステータスオープン』

僕は突然呟いた。


☆☆☆☆ステータス☆☆☆☆

名前  西園寺 奏

レベル 1

職業  未設定

称号  勇者

スキル 未獲得

    (SPを使用して獲得可能)


僕は即座にステータスを閉じた。最悪に最悪が重なってしまった。僕の小さな野望は叶いそうも無いな。ただ平穏な日々を過ごしたいだけなのになあ。僕はとんだ不幸者だ。いまだに謁見の行列は短くならない。おい、質問終わったばっかりなのに走って行列に並び直すんじゃ無い。王様も相当不幸だな。人気者は辛いね。

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