第95話 海中開戦
「近くで見れば見るほど人の手で作られたって感じるなぁ。
この世界に魚人族っていう種族が居なければ、昔はここまで陸地だったとでも考えられそうだけど」
「そう考えたとしたらこの世界はおかしいぐらいの海面上昇を起こしたことになりますよ? なぜなら現在推進55メートルあたりですし」
「とはいえ、こんな場所に俺達の祖先が作ったという言い伝えはないしな。
それに父上ですら海神の存在は直接会うまで知らなかったと聞く。
もし、昔もその存在が知らないとされればこんな遺跡が作られる意味がわからなくなってしまう」
「まぁ、昔なんてのは今の俺達には曖昧で不確かなものなんだよ、結局。俺達は今見えてるものが全てだからな。
実際に昔にこんなことがあったというのは証拠や文献から重なる点が多いからそうなるだけで、もし昔の人がその時こうだったという嘘が重なるようになっていたとしたら、俺達からすればそれが真実になる」
「確かめる術がないですからね。それこそその当時に戻らないでもしない限り」
一部が欠けた柱や中央からポッキリ折れてしまっている柱など様々な状態の柱が意味ありげに入口の前に均等な間隔で並んでおり、入口の前の左右には巨象があった。
その巨象はぞれぞれに三又の鉾を持ち、半魚人とも言うべき下半身に尾びれがつき、上半身は人の形を成していた。そして、その巨像は扉の前で鉾を交差させている。
「今の所動き出すことはない、か。まぁ、こういうパターンはゲームだとお決まりだけど」
「どちらにせよ、前に進む以外に選択肢は無いので行くしかないでしょう」
カイ達は左右の柱に囲まれながらその中央を警戒しながら歩いていく。
そして、扉の前に来ると案の定巨像から声が聞こえて来た。
『汝ら、何の用でここに来た?』
「自分達の領土を守るためだ」
巨像の質問に答えたのはルフトであった。
ルフトは「ここは任せてください」と言わんばかりにカイにアイコンタクトを送るとカイは一歩下がる。
『ここは我らが主の支配領域。海は主のもの。
その海にある小さな浮島に住む程度の矮小な存在が我が主に直訴しに来たとでもいうつもりか?』
「全くその通りだ。加えて言わせてもらえば、その主が自分達の領土を侵しに来るとするならば全力で抗わせてもらうつもりだ!」
『よい、返事だ。ならば、その望みこの場で絶って―――――』
―――――バンッ
巨像が言い終わる前にカイが二つの巨像に向かって銃弾を撃ち放った。
それは的確に巨像の眉間を打ち抜き、その巨像は脱力したように前のめりに倒れていく。
「悪いね。こちとら時間が惜しいんだ。だから、スキップさせてもらったよ」
「そうだな。時間がどのくらい差し迫っているかわからない以上、進めるうちはどんどん次に進んだ方が良い。では、神殿の中に――――」
――――ドガアアアアン!
再び音が響き渡る。しかし、今度ルフトが聞いた音源は後ろではなく前。
そして、目の前では固く閉ざされていた扉が内側から爆破されたように崩れている。
その直後、すぐ横を何かが通った。姿は見えない。
しかし、明らかに流れの違う激流が襲ってきたことから考えて、目にも止まらぬ速さの何かが遺跡から飛び出してきたのは理解できる。
ルフトは激流の勢いに吹き飛ばされながらもすぐさま周囲を確認した。
そこには自分と同じように何が起こったか理解不能な兵士達の姿がある。
どうやら兵士達に誰一人被害がない。当然、体にくっついているトトもまた別であった。いない者がいるとすればカイぐらい。
「ルフト様、パパからの伝言です」
「シルビア殿!? カイ殿から!?」
背後から声をかけられたと思えばそこにいるのは人型のシルビアであった。
通常の人型大きさの半分ほどの大きさで、幼女というより赤ん坊に近いその体をパタパタと動かしながらルフトに近づくと伝言を伝えた。
「私達は先ほど襲撃に遭いました。しかし、どうやら敵の狙いはパパ一人のようなので、パパからは『ルフト君達で遺跡を攻略してくれ』とのことです」
「そうか。俺達には目で追うことすらできない敵......確かに俺達が出来ることはなさそうだ。
わかった、遺跡は俺達に任せてくれと伝えてくれ......っと、その前にシルビア殿は今この場にいるが大丈夫なのか? 随分と小さくなっているがそれも関係しているのか?」
「はい。私は能力で分裂できます。そして、分裂同士は意思疎通が可能でルフト様の意思はもう既に伝わっております。
また、私がここにいるのは直接的戦闘は出来なくともサポートは出来るからとのことです。
今の私はルフト様の剣。別に武器は剣じゃなくても大丈夫で具体的なイメージを与えてくれればどんな形にもなれます」
「いつまでもおんぶにだっこじゃいけないと思っていたがな。
とはいえ、この海の惨状的にどうあがいても俺達の手には余る。
だから、シルビア殿。その力貸してもらうぞ」
「仰せのままに」
そして、ルフトはシルビアを使い慣れている二又の鉾に変えて兵士を連れると遺跡の中に突入していった。
――――時は遡り、遺跡の扉が爆発した直後
その光景を目撃していたカイは濃密度の魔力を持った塊が瞬間的に迫ってくるのを感じていた。
それは下手すると先の神影隊の相手よりも魔力を持っている感じで――――
「捕らえた!」
「!?」
直後、青髪の鋭い目つきをした青年がカイの口元を手で鷲掴み、移動スピードをそのままに海中を進んでいく。
その勢いは周囲に衝撃を作りながら、やがて背後の地面から伸びた岩にカイを激突させていった。
「蒼転」
そして、その青年は素早くその場から離れると水をドリルのように高速回転させて作った槍をいくつも作り出し、それをカイ目掛けて全弾射出させた。
ドドドドドドドドドとマシンガンをフルバーストさせたような音ともにカイが叩きつけられた岩は砂を漂わせながら、やがて折れて先端が海へと沈んでいく。
「さて、どうだ? 俺の攻撃は? おいおい、まさか死んでないだろうな? せっかく期待してやってきたんだからよぉ?」
「安心しろ。それぐらいじゃ潰れないほどには楽な生き方選んでねぇ」
砂煙の中から濃い影が迫ってくると同時にカイが現れた。
そして、そのカイが無傷であることにその青年は嬉しそうに口元を歪めた。
「いいねぇ! 俺もすぐ潰れねぇように手加減したが、それでも弱い神影隊の奴じゃ致命傷になるのになぁ!」
「はぁ、前の戦った相手といい、どうにも血の気が多い連中が多いね。で、君は一体?」
そのカイの質問に青年は自慢するように自己紹介をした。
「俺の名はケイネス。神に選ばれた真なる魚人族の王であり、“天水爪”の天恵者の一人だ」
「天恵者......?」
カイはその言葉に聞き覚えがあった。なぜならエンディ自身がその天恵者なのだから。
そして、天恵者に関してもルナリス本人から聞いたことがあった。
「天恵者」......各種族の中でただ一人神の恩恵を受けて超常的な力を得た存在を示す。
その力は正に尋常ならざる力といえ、神影隊ですら手を焼く強者の中の強者。
もともと天恵者というのは神と意思を繋げる巫女的な存在で、その力はその種族を守るための力でなければならない。
しかし、その力がフォルティナによって逆転してしまったのだろう。今やこの世界を破壊させる天使の一人として。
「なるほど、君は王になりたいわけだ」
「なりたいじゃねぇ! 俺こそが王なんだ!」
「だが、君の行っている行為は君を王たらしめる民への攻撃とも言えるが?」
「民だぁ? あんな弱い存在がいる必要はないだろ? だから、この世界を一度ぶっ壊して作り直すんだよ。俺の俺による俺のための最強の魚人国家をな!」
カイは影に手を突っ込むとそこから気合入れる時だけ使うグローブを取り出した。そして、それを装着していく。
「俺達がそんなことをさせるとでも?」
「防ごうとしてんのか? はっ、それは無駄なあがきってやつだ。
お前も気づいてんだろ? ここに来るまでに何がお前達の守ろうとしている国が向かったか?」
*****
――――同時刻 カレットマリン
遠くから巨大な水ブレスを受けた影響で街には一部で甚大な被害が出た。
そして、その最前線にいるソラ、キリア、エンディはエンディの危険察知で間一髪回避に成功して未だ砂浜に伏せたままであった。
「ねぇ、あれ見て!」
伏せた状態のままソラが海に向かって指をさした。その方向を二人見てすぐさま目を見開く。
なぜなら、そこには肉眼でも大きいと判断できる東洋の龍のような存在が海面から胴体を出していたからだ。
その三人、否、カイン、グラウスも含めた五人がすぐさまそいつが海神ネプテューヌであること理解する。鋭き目、禍々しい威圧感、一撃の破壊力、そのどれもが人間の域を優に超えているから。
「不味い! もう一発来るぞ!」
カインが叫ぶと同時に大きく息を吸い込んだネプテューヌが開けた口から再び巨大な水ブレスを放った。
「竜炎咆哮」
その水ブレスに対抗するように起き上がったエンディが同じように息を思いっきり吸い込んで口から炎の砲撃を放ち、対抗していく。その衝撃で交わった場所からは猛烈な勢いから水蒸気が発生した。
しかし、咄嗟に放ったブレスのせいか徐々にエンディのブレスが押され始めた。しかし、エンディは一人ではない。
「キリアちゃん、一緒に行くよ!」
「はい!」
キリアは弓に携えた風の矢を弦が千切れんばかりに引っ張るとそこにエレンが魔法をかけていく。
「嵐の一矢」
「光の導き」
「「合技・晴天の嵐」」
キリアが放った矢は一筋の希望を乗せるように光の尾を伸ばしながら、ブレスが交わった衝撃をものともせずにネプテューヌの胴体に直撃、爆発した。
その攻撃でネプテューヌのブレスの勢いが弱まるとエンディが一気に押し返していき、そのままブレスをネプテューヌに直撃させた。
*****
―――――同時刻、海中
「!?」
ケイネスは魔力の揺らぎからネプテューヌが押し負けたことに気付き、思わず驚いたような顔をする。
それに対し、カイはニヤリと笑って告げた。
「言っただろ? 『俺達がそんなことさせない』って。
それじゃあ、俺達も始めよう。君は色々と知ってそうだからな。
君の場合はそうだな――――国家転覆罪で逮捕する」
読んでくださりありがとうございます(*'▽')




