虹のカケラ
つらっとTwitterでつぶやいてみた即席話なので、出来はあんまり……まあお軽く流し見してくださいませ……;
とりどりの虹のカケラをその体いっぱいに詰めて殺してあげる
「お前は、綺麗なものが好きだよな」
そう言うと、秋羅は嬉しそうに微笑んだ。
「うん、大好き。だーい好き」
あどけないほどの笑顔で応える口もとを、噛みつくように奪いたくなる。その心情を理性で抑え、夏樹は嘲るように微笑った。
「……もし、俺が魔法を使えたら」
「まほう? あは、現実主義の君にしては珍しく、ファンタジーなこと言い出すね」
「まぜっ返すな。もし魔法が使えたら、綺麗なものの好きなお前に魔法をかけてやる。虹を固めて、そのカケラをな、」
いつにない夏樹の物言いに、秋羅は栗色の瞳をきらきらさせて続きをねだる目つきをする。夏樹は一つ息をつき、口の端にひねた笑みを浮かべてこう告げた。
「そのカケラをとりどりにお前の体に詰め込んで、綺麗に殺してやるからな」
一瞬きょとんとした秋羅は、明るい茶髪をふわりと揺らしてはにかんだ。
「うん。もし出来たら、お願いね」
気のきいた冗談だとでも思ったらしい。自分とは根底から異なる綺麗な生き物に、夏樹は一瞬泣きたくなった。
(ああ、だから俺はお前が)
「嫌いなんだ」「憎いんだ」「殺したいほど好きなんだ」
――どれが一番正しいのか、もう夏樹には分からない。自分の想いが恐ろしい。いつか俺はこいつの純粋さに耐えきれず、自分だけのものにするため、こいつを手にかけてしまうんじゃないか。
そう思いながらなすすべもなく、夏樹はそっと秋羅の背に手をかけた。暗い思考とは裏腹に甘く優しく奪ったくちびるは、確かに虹のカケラを思わせる、植物の蜜の香りがした。(了)