第4話
ヒュンのクビ宣言に、真っ先に反応したのはユユユだった。
「……あなたは確かに『勇者」だから、パーティー決めにはある程度従うつもりよ。でもね、今のブロードを失ったら間違いなく高難易度迷宮の攻略は難しいわ。できたとしても、怪我人などが出るわよ」
「……んなわけねぇだろ! こいつの能力は嘘に決まってるだろ! あんなのはデタラメにすぎねぇよ!」
「この一ヶ月。あなた何を見てきたの? これまでAランク迷宮しか攻略できなかった私たちが、Sランク迷宮の攻略が可能になったのは、他でもないブロードのおかげでしょう?」
……これまで、俺は自分の能力を隠していた。
だが、隠す必要がなくなったため、俺のやりたいことを共有できるようになった。
これまで一人で補っていた部分を皆で出来るようになったため、攻略できる迷宮が増えたのだ。
「オレたちが成長したからに決まってんだろ!」
だが、ヒュンはそれを自分の実力だと言い張る。
……それもすべてが間違っているわけではない。
結局のところ、俺が出来ることは限られている。
俺自身の戦闘能力は、そこまで高くないからな。
「もちろん、それもあるでしょうけど……たった一ヶ月でSランクまで跳ね上がるなんてのはまず無理よ。それも、ブロードが情報を集め、魔物の弱点、罠の配置、迷宮に必要な荷物などの厳選を行ってくれたからじゃない?」
「はっ、そんなわけねぇだろ。誰かから聞いたに決まってんだよ! こいつは嘘つきだ!」
ヒュンが叫び、ユユユはあきれたように首をふった。
「……ヒュン。あなた本気でそれを言っているの? 迷宮の構造は入るたびに変わるわ。そして、『勇者』のもとに来る依頼の多くは、新規に発見された迷宮のマッピング、罠の種類などの確認でしょう? 一体、誰に聞くのよ。どう考えても彼のスキルが理由でしょう?」
ユユユが俺をかばってくれるが、ヒュンは首を横に振る。
「うるせぇよ! そんなの知らねぇよ!」
「本当に、追い出すの? ブロードは索敵者の中ではかなり戦闘能力も高いのよ?」
……索敵系スキルを持つ人は多くの場合、体が弱いのだ。
俺の場合、索敵系スキルではないので、それには一切当てはまらないが。
「はっ、ブロード程度の戦闘能力なら、そこら中にあふれるほどいるんだよ!」
「いないわ。……戦闘、索敵、両方が高水準でできる人なんて本当に一握りなの、分からないの?」
「おう、そうだぜヒュン。オレは馬鹿だからよぉ、難しいことは分からんがな。ブロードを失ったらやべぇってことくらいは分かるぜ! オレから筋肉を奪っちまうようなもんだぞ!」
ユユユの言葉にガルドスも同意する。ヒュンは顔をしかめる。
元々、俺たちのパーティー仲は悪くない。それでいて、俺がスキルのアピールをしまくったこともあり、皆が俺をかばう。
……ヒュンは俺のことが嫌いだが、俺をパーティーから追い出すのがおかしいというのは馬鹿でもわかるはずだ。
「……ヒュン。ありえない。ブロードを嫌っているからって、外すなんて……最低。パーティーのこと、何も考えてない」
そして、ラフィーアがそう言った瞬間、ヒュンがぶちぎれた。
「オレは勇者なんだよ! オレの命令は国からの命令だ! 何よりオレは伯爵家の長男だぞ! てめぇら! 逆らうのなら、全員牢屋にぶち込むぞ!」
ヒュンが癇癪を起こし、皆が頭を抱えた。
……ヒュンは何かあるとすぐに『勇者』の権力と家の権力を持ち出すからな。
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