第3話
ここまで説明しても、ヒュンはまだ理解していないようだ。
ユユユとラフィーナは、俺の言いたいことが理解できてきたようだ。
「ここで、俺のスキルの話になる。俺はこれから、ラフィーアが答えを言う前の時間に戻るんだよ」
「……あぁ? どういうことだよ?」
「時間を巻き戻せば、本来ならラフィーアしか知らない情報を俺だけが知ることになるだろ?」
ヒュンが目を見開き、それから鼻で笑った。
「……はっ、時間を巻き戻るだぁ? デタラメだ。やってみろよ」
「ああ、今から見せてやるよ」
俺は問いかけながら、この時間で『セーブ』した。
「それで、ラフィーア、何歳までなんだ?」
「……じゅ、十一歳」
ラフィーアは顔を真っ赤に絞り出すようにそういった。
「……ありがとう、貴重な情報だ」
「や、やめて……あ、あとでデートしてもらうから……っ!」
俺はすぐに先ほどの時間を『ロード』した。
戻ってきたのを確認してから、俺がヒュンを見る。
「おい、いきなり何固まってるんだよ」
「十一歳」
「!?」
ラフィーアが顔を真っ赤にした。
その反応で、答えを言い当てたことが分かるだろう。
「ほ、本当に十一歳なのか!? おい!」
ヒュンが驚いたように声をあげると、ラフィーアがきっと睨みつけた。そして俺まで睨む。なぜだ。
ユユユが腕を組み、納得した様子でいった。
「……なるほど。ブロード、あなたはその能力を使ってこれまで索敵やマッピングなどをしてくれていたのね?」
「そういうことだ。この能力を使えば、時間を巻き戻せる。だから、俺は敵の情報はもちろん、初めて訪れる迷宮内の構造、罠に至るまですべてを把握できるんだ」
俺がそういうと、全員が目を見開いていた。
俺の能力について、彼女らはよく理解してくれたようだ。まとめるように、続ける。
「これが、俺の本当の『セーブ&ロード』の力だ。悪いな、これまで騙していて」
俺がすっと頭を下げる。……俺が黙っていた一番の理由は、ヒュンなんだけどな。
こいつ、口が軽いから平気で人にスキルの話しとかしそうなのだ。
だが、俺は『勇者』パーティーに残りたかった。だから、スキルについて明かした。
「……いえ、別にいいわよ。凄すぎて、正直信頼関係が生まれるまでは話されても信じられなかったわ。本当に凄い能力ね」
ユユユが納得した様子で言っていた。
ガルドスが、スクワットしながら笑う。
「つまりおまえは、何度だって筋トレしなおせるということか!」
「まあ、そうだな……」
「羨ましいなおい!」
「筋肉はつかないがな」
「いつだって新鮮な気持ちで筋トレができるではないか!」
ガルドスがにかっと笑ってスクワットの速度を速めた。
……まあ、この二人は受け入れてくれると思っていた。
そして、ラフィーアも羨望した眼差しをこちらに向けてくる。
「ブロード……凄い。けど……デートはしてもらうから」
「いや、おまえからは聞いていないから」
「『ロード』する前に聞いたんでしょ?」
「……やけに頭が回るな。……まあ、とにかくだヒュン。俺の真の能力はこんな感じだ」
……あとは、これで彼が俺を認めてくれればそれですべて解決だ。
そう思ってヒュンを見たのだが、彼はどこか不満げに頬を膨らませる。
「……ふん、そうかよ」
……相変わらず敵意は消えていない。それどころか、さらに増しているようにさえ思えた。
……今はまだ、受け入れられていないだけだろう。
きっと、一ヵ月間頑張れば、ヒュンも俺を受け入れてくれるはずだ。
俺がここまでヒュンのパーティーに拘る理由は簡単だ。
『勇者』になるには、一定以上の爵位の貴族、『勇者』の推薦状が必要だからだ。
……ヒュンには期待していないが、ヒュンと一緒に行動することで、貴族、『勇者』と関われる機会が増える。
推薦状を書いてもらえるくらい仲の良い貴族、『勇者』を作れるまでは、このパーティーに残りたかった。
そして5月1日。ヒュンは俺たちを集め、高らかに宣言した。
「おまえを追放する!」
なぜだ……。
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