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新たな世界へ

『それでも俺は賢者を目指す!』https://ncode.syosetu.com/n3182fz/

新連載です!

お読み頂ければ幸いですm(_ _)m

 

「あの時は本当にありがとね! ミズチ達が中から攻撃してくれなかったら、あたしだけの力じゃ絶対に勝てなかったよ。それに、タートのシールドもヒナを守ってくれたし」

「何を今更言っておるんじゃ。ワシらは仲間じゃろ? 力を合わせるのは当然じゃ!」

「ミミズー、カッコ良かったー!」

「姐さんに褒められて、オイラも嬉しかったっす!」


 結果から言えば、巨大なイノシシのオオクニヌシは、ミズチの活躍で倒す事が出来た。ミズチの『腐蝕する吐息(アシッドブレス)』で、オオクニヌシの体内に大ダメージを与えたのだ。

 内蔵を腐蝕されて悶えるオオクニヌシを、あたしは全力を込めた『フレア(核融合)』で頭を消し飛ばす事に成功し、何とか倒す事が出来たのだ。正にチームプレイの結果と言えるだろう。


「それはともかく、じゃ。今は龍を倒す事に専念するのじゃ、ビアンカちゃんや」

「分かってる。これで最後だもんね……! 行くわよ、みんな!!!!」

「オッケーっす、姐さん!!」

「ウチも頑張るー!」


 あたし達は今、北の山脈を根城にする龍の目前まで来ている。龍を倒して聖石を喰らえば、晴れてあたし達は神獣として認められ、新たな世界へと行く事が出来る。


 思えば、オオクニヌシの後も色々な戦いがあったわ。敵を求めて東奔西走したし。

 中でも一番の強敵だったのは、三つ首を持つ犬の『ケルベロス』だろう。オオクニヌシの力を得てなければ、間違いなく負けていたと思う。

 ケルベロスは、三つ首から絶え間無く絶大な威力の炎を連発して吐き出し、更には隙を突いての噛み付き。あたし達がオオクニヌシの力を得て巨大化出来なければ、あっという間に全滅だったろう。


 次に厄介だったのが、ヒツジの『ラクシュミ』だ。回復魔法に特化している敵だったから、倒すまでに凄い時間が掛かった。頭さえ残っていればたちまち元通りに回復するんだもん。うんざりしたわよ。今となれば良い思い出だけどね。あ、ラクシュミはヒナの『浄化の炎』で倒したわ。


「そう言えば、ご母堂は残念じゃったの、ビアンカちゃんや」


 龍の下へと歩いてる最中、タートがそう語り掛けて来た。


「うん……。でも、あたしの中で生きてると思えば悲しくないわ……」


 戦ってて切なかったのは、あたしのママとの戦い。お互いに似た様な力を使い、涙ながらに戦って……倒してしまった。

 ママの最期の言葉「強くなったわね、ビアンカ。ママ、嬉しいわ……。これからは貴女の中で生きられる事が本当に嬉しい……」を聞いた後、一週間は泣き続けた。本当に辛かったよ……。

 ママも同じ気持ちだったのかな? お兄ちゃんやお姉ちゃんはママが倒したみたい。悲しい世界よね、この『アガルタ』って世界は。

 神獣を生み出す為に親族とも戦わなくちゃならないなんて。それも、もう少しで終わるけど……。


 あ、忘れちゃならないのが、あたしと同じ獣人形態へと進化した『ミノタウルス』ね。この世界で初めてとなる武器、巨大な斧を軽々と振り回しながら襲って来たもの。どこでその斧を手に入れたのかは知らない。検証してないから分からないけど、もしかしたら武器を創り出す力だったのかもね。

 そんなミノタウルスでも、あたし達の敵では無かった。巨大化したタートの前に自滅して行ったわ。

 ちなみにだけど、ミノタウルスの聖石を食べた事で、あたし以外も獣人形態へと進化したわよ?

 ミズチはリザードマンみたいになって、ヒナは何故か可愛い人間の幼女みたいになった。意外だったのがタートだ。何と、仙人みたいな姿になったのだ。これにはタートも大喜びで、「これでこそ賢者じゃ! 正にワシの姿に相応しいぞい!」と叫んでた。叫ぶ事自体、賢者とはほど遠いと思うけど、喜んでるんだから水は差さない。そう思えば、あたしも成獣になったものだ。


 思い出に浸るのもここまでね。龍の棲み家に辿り着いたわ!


『ほう。お前らが試練を受ける者どもか。良かろう……龍神である我『ケツァルコアトル』を見事倒してみよ!! グオオオオオオオオォォォォォォ!!!!!!』


 龍神ケツァルコアトルの棲み家は、北の山脈の中で唯一ある火山の火口だった。熱くないのだろうか? 龍の神を名乗るくらいだから、今更そんな事を考えても仕方ないけど。


「行くわよ、みんな!! これが最後……必ず生きて、神獣として旅立つのよ!!!!」

「うむ! 防御はワシに任せよ!!」

「姐さんに付いて来て、本当に良かったっす! そして! これからもよろしくっす!! 先手必勝……『腐蝕する爆流(アシッドブレスト)!』グアアアアアアオオオオッ!!!!!!」

「ママ達が怪我したら、ウチが回復するー!」


 ケツァルコアトルとの死闘が始まった。


 全員が体長10mを超える巨大化の能力を使用し、その絶大な力を以て挑めば、ケツァルコアトルもさすが龍神……あたし達の上を行く長く蠢く巨体で応戦する。だけど、今まで色々な力を得て来たあたし達は少しずつ、それこそ針の穴に糸を通す様にケツァルコアトルの防御を掻い潜りつつダメージを与えた。


『よもやこれ程とは……! 我の最強にして、最後の力を耐えてみせよ! 【天の怒り(アポカリプス)!!】――グオオオオオオオオォォォォォォッ!!!!!!!!』


 恐らく、ケツァルコアトルも最後の力を振り絞ったのだろう。その攻撃は、正に龍神の名に相応しい威力だった。


「皆、ワシの傍へと集まるのじゃ!! 絶対に守ってみせる……【天の岩戸(アルテマシールド)!!】」


 それは、正に天の怒りだった。天空より降り注ぐは数百にも上る轟雷。少しでも当たろうものなら、その瞬間に命は失われていただろう。タートが居てくれたからこそ、あたし達は耐え抜く事が出来たのだ。


「ありがとう、タート! あたしと仲間になってくれて……!」

「どういたしまして、じゃ、ビアンカちゃんや。ワシの魔力ももはや限界。後は頼んだぞい?」

「じいじはウチが回復するー!」

「オイラは奴を牽制するっす! その隙に姐さんはトドメを!!」

「うん! これで終わらせる!! ――『魔力領域(マジックフィールド)!』――更に! 『分身創造(クリエイトアバター)!』」


 タートがみんなを守り、ヒナはそのタートを回復する。ミズチはケツァルコアトルを牽制して注意を引き付けてくれた。このチャンス、活かしきってみせる!!

 無限の魔力を山脈一帯へと充満させ、巨大な白虎形態の分身体を瞬時に10体創り出して、ケツァルコアトルを囲む様に配置させた。


「全ての力を一つに合わせる! 喰らえ……!! 【百獣の咆哮(ヘカトンケイル)!】――ガルルルルルアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」


 11体のあたしの口から放たれた力はケツァルコアトルの上空で一つの塊となり、静かに降下を始める。ミズチが心配だけど、きっと範囲から逃げてくれるだろう。あ、大丈夫みたい。上手く逃げてくれた。


『グオオオオオオオオォォォォォォ!!!! ……み、見事……なり……』


 炎、風、水、土の四つの属性に加え、あたしのイメージする力が合わさり創り出された力は、超重力波とでも呼ぶべきものだった。ケツァルコアトルの長大な体の中心にそれが触れると、途端にその体は圧縮され始め、最期の言葉を言うと同時に消滅して行く。後に残された物は、虹色に光り輝くケツァルコアトルの聖石だけだった。


「終わった……わね」

「うむ、そうじゃのぅ」

「終わったー!」

「さすが、姐さんっす!」


 その後、あたし達はケツァルコアトルの聖石を分け合って喰らい、吸収したその力で以て完全なる神獣へと進化を果たした。その姿は人間そのもの。人間の姿は神を模して作られたと聞いた事があるけど、本当なのかもしれないわね。


「……この後って、どうなるのかしら?」

「はて? ワシにも分からんのじゃ」

「このまま姐さん達とこの世界を見守り続けるんじゃないっすか?」

「ママと一緒ならウチ、それでもいいよー!」


【新たなる神獣達よ。その心配には及びません。これからあなた達を、その力を持ったまま別の世界へと転生させます。その世界の名は『アースライト』。その世界を救い、生き物達を導くのです】


 どこからともなく聞こえる声は、あたし達にそう告げた。頭の悪いあたしはいまいちよく分からないけど、とにかくそのアースライトという世界を救えば良い事だけは分かった。望む所ね!


【それでは頼みましたよ? 『神獣転生(リーンカーネーション)』】


 神の力って言うのかな? あたし達を構成する肉体が消滅して、光の玉に変わった。でも、意識はしっかりと残ってる。もっと言えば、今まで得て来た力も感じる事が出来る。

 つまり、この状態のままアースライトへと送り込まれ、そこで生命に宿るのだろう。そんな気がする。


 新しい世界かぁ。どんな所なんだろう? 少し不安だけど、タート達も一緒だから何が起きても大丈夫よね。そう思ったら、何だか楽しみになって来たよ!


「それじゃ、みんな……アースライトでね?」

「うむ! 向こうでもよろしくなのじゃ、ビアンカちゃんや!」

「ウチもウチもー!」

「どこまでもご一緒しやすぜ、姐さん!!」


 こうして、神獣となったあたし達はアースライトへと旅立った。そこではどんな姿になるのか分からないけど、素敵な仲間が居るのだから大丈夫だろう。きっと、アースライトだって救える筈だ。


 だって、あたし達は弱肉強食の世界を勝ち抜いた【神獣】なのだから!




 ☆☆☆




 ――というのが、あたしが獣として白虎に生まれ、力を得て神獣へと上り詰めた物語。どう? 獣も意外と楽しそうでしょ?


 後はアースライトの世界を平和にして、それで生き物を導いて、のほほんとのんびりと世界を見守る生活を送る筈だったのだけど……


「力を使えるのは大人になってからだって!? しかも、あたしまだ二歳の幼児じゃないの!! これじゃ世界を平和にするなんて、早くて18年後……下手すれば、20年以上かかるじゃないのよーっ!!!?」


 ……何故か、あたしは二歳の人間の女の子の体で目覚めた。あたしの言葉でも分かる通り、無力な子供として。

 タート達は誰に宿ったのか分からないし、お陰で頼る事も出来ない。


「ま、いっか! ()()世界は平和みたいだし。また人間として生きるのも悪くはないよね!」


 後に、成長したあたしと、やはり人間として目覚めたタート達四人で世界を救い、勇者として伝説になるのだけど、それはまた別の物語。ここでは語られるべきではないわよね。


 このアースライトを平和にしたら、もしかしたらアナタ達の世界へと送り込まれるかも? ……なんてね♪


「ビアンカ? ああ、起きてたのね。それじゃ神託の儀に行くから準備しなさい!」

「はーい、ママ!」


 あたしは、世界を救う為の道を歩き始めたのだった――!

お読み下さり、真にありがとうございます!


今まで、ビアンカ達の旅にお付き合い下さりありがとうございました。

今回で完結となりますが、続きを書きたくなったら再開するかもしれません。

ともあれ、執筆活動は続けて行きますので、他作品でお目にかかる事もあるかと思います。

それでは、また!

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