力の検証・タート
タート視点となります。
ビアンカちゃんに力を把握しろと言われたのじゃが、ハッキリ言うて、何をどうやって、どの様に検証すれば良いのか全く分からん。
ワシは千年程このアガルタで生きておるが、急激に力を得た事は無かったのじゃ。言うなれば、コツコツと地道に年齢と共に少しずつ力を蓄えた結果、今の様に土の力を得て、あらゆる攻撃から身を守る術を得たという訳じゃ。
「それにしても……この姿は納得いかんわい。ワシは賢者のタートと呼ばれる程に博識を自負しておる。そのワシが、何故にこの様な禍々しい姿に進化したのか……。不思議で仕方ないわい」
ワシの姿を見て、ビアンカちゃんは言うておった……まるで、どこぞの大魔王の様だと。
全くもってけしからん! 仮にも聖獣……いや、今は神獣を目指しておるが、その神獣を目指しておるワシに向かって大魔王だなどと……!
それではまるで正反対ではないかっ! ……と、文句を言うてみた所で是非も無し。ビアンカちゃんを見返す為、先ずは新しく得たであろう力の検証を行うとしよう。
「じゃがのぅ……検証と言うても、どの様に検証すれば良いのじゃ? 土に由来する力であれば直ぐに分かるが、新しい力とやらがどういった物であるかの検討も付かん。ユニコーンめがどの様な力を使うておったのか、ビアンカちゃんに訊いてみるとするかの」
本来であれば、今日も西の荒野に向けて移動する筈であった。じゃがビアンカちゃんは、今日は移動しないで力の検証に充てろと言いおる。
ワシには絶対防御を誇る魔法があるのじゃ。それだけでも良いと思うのじゃが、ビアンカちゃんは許してはくれんかった。
ともあれ、新たな力を使う為の切っ掛けを知る為、ワシはビアンカちゃんの下を訪ねた。
「ビアンカちゃんや。新しく得た力を使う為にはどの様にすれば良いのかのぅ? ワシはコツコツと積み重ねて来た結果今の力を得た為、新しい力の検証の仕方が分からんのじゃ」
「タート……恐い……」
「な、何じゃとぅ!? プリチーでチャーミングで、誰からも愛される容姿のワシが恐いじゃとぉ!? 心外じゃ!」
いくら温厚なワシとは言え、さすがに今のビアンカちゃんの一言は腹に据えかねる。言うに事欠いて恐いなどと……!
確かに今のワシに愛らしい所は無い。むしろ、自分でさえも恐ろしく感じる程じゃ。進化というものに意思は無いであろうが、悪意を感じずにはおられんわい。
「あ、ごめん! でも、その……た、タートの、その、し、シンボルが……ヘビになってるんだもの!」
「な、何じゃとっ!? そんな、馬鹿な!!!?」
ワシらカメの生殖器は、通常尻尾にある排泄口の中に隠れておる。にも拘わらず、ビアンカちゃんはワシのシンボルが見えておるらしい。おかしな話じゃ。しかも、シンボルがヘビだなどと吐かしおる。そんな訳あるまい。
じゃが不安に駆られたワシは、ビアンカちゃんの言葉で自らの股間を確認した。二足歩行が出来る様になった事で、シンボルがある位置が股間へと変わった為じゃ。
すると驚く事に、ビアンカちゃんの言うておった事は事実じゃった。ワシのシンボルが何と、ヘビになっておったのじゃ……!
しかもヘビの様なシンボルでは無く、ヘビその物じゃ。これにはワシも開いた口が塞がらんかった。
「あ、あの、その、タート? し、シンボルをしまって欲しいんだけど? め、目のやり場に困るから……」
目を逸らしながらも、チラチラとワシのシンボルを見るビアンカちゃん。ワシだって恥ずかしいのじゃから、直ぐにでもしまいたいわい。と言うか、見ないでくれんかの?
「す、すまん、ビアンカちゃん……! しまおうにも、ワシの意思ではしまえん様じゃ……。ワシも恥ずかしいが、ただのヘビだと思おて慣れてくれんかの……?」
「わ、分かったわ……! うん、タートのシンボルはただのヘビ、タートのシンボルはただのヘビ、タートのシンボルは――」
ワシのシンボル……ヘビを見ながらブツブツと呟き、ビアンカちゃんは顔を真っ赤にして固まってしまった。これでは、ユニコーンめが使っておった力の事を聞き出す事は出来まい。自力で突き止めるしかあるまいて。
ワシはビアンカちゃんの下を離れ、改めて、新しく得たであろう力がどういった物なのかに集中した。
「シャー。生命力と回復力。シャー」
「生命力と、回復力……じゃと? ふむ。そう言われてみれば、体が若返った様な気がするわい。回復力を試すには傷を負わねばならんが、どうするかのぅ……」
…………。
「だ、誰じゃっ!? 今ワシに語り掛けて来おったのは!!!?」
新たな力がどういった物か分からん以上、当然暴発の危険がある事を念頭に誰もおらん場所へと来たのに、そのワシへと近付き、更に語り掛けて来るとは! まさか、新たな敵か!?
くぅっ……!
ここにはワシだけじゃ。もしもワシが逃げて、その結果ヒナやミズチが襲われたら申し開きも出来ん上にヒナ達の命も危険じゃ。ワシ同様、新たな力を使いこなしておるとは思わんしの。
ワシのヘビを見て呆然としていたビアンカちゃんも危険じゃろう。ここはワシが何とかせねばなるまい!
ワシはいつでも『甲羅シールド』を展開出来る態勢を整え、辺りの様子を窺った。
「敵なら出て来るが良い! ワシはタート、逃げも隠れもせんわいっ!」
敵ならば、恐らくワシの挑発に乗って来るであろう。そう思い、ワシは巨木の陰や草陰に忙しなく目をやる。どこから出て来ようが、瞬時に甲羅シールドを張り、凶悪となったワシの顎にて噛み砕いてくれる。そう、考えておった。
「敵じゃない、シャー。オレはお前だよ、タート。シャー」
「何を訳の分からん事を吐かしおる!? どこじゃ! 姿を見せいっ!!!!」
「さっきから見せてるシャー。オレはお前のシンボル。今じゃヘビとなったけど。シャー」
「何じゃとっ!!!?」
確かに、先程からの声は近くから聞こえておった。それがまさかワシのヘビの声だったとは、予想だにせんかったわい。
むしろ、あえてそれを考えない様にしておった。ビアンカちゃんじゃ無いが、ボケたかもしれんなどと思っておったくらいじゃ。ボケてはおらんがの。
ともあれ、恐る恐る股間のヘビを見やると、ヘビの目とワシの目が合う。やはり間違いなく、ヘビがワシに語り掛けておったとその瞬間に確信した。
「まさか自分のシンボルと会話する日が来ようとは……。じゃが仕方あるまい、受け入れるしかなかろう」
「そういう事だ、シャー。ようやくお前の体に力が馴染み、オレも話が出来る様になったのだ、シャー」
傍から見たら、自らの股間に話し掛けるボケた老カメ。絵面を考えると、とんでもなく切なくなるわい。
ともあれ、一度受け入れると決めたのじゃから、これもワシの新たな力として考えよう。
「ちなみにじゃが、お主に名前はあるのかの?」
もしも名前があるならば、その名前を呼ばねばなるまいて。じゃなければ、本当にボケたと思われる。主にビアンカちゃんに、じゃが。
「オレの名前は無い、シャー。あえて言うなら、タートジュニアだろう、シャー。ジュニアと呼べ、シャー」
シンボルに向けてジュニアは拙い。良くは分からんが、それだけは拙いとワシの直感が告げておる。ならば、名付けねばなるまい。
「お前の名は『スネイル』とする。良いな?」
「分かった、シャー。オレはスネイル。よろしくな、相棒、シャー」
「うむ。よろしくの、スネイルや。さっそくじゃが、お主に質問がある。お主は先程、ワシの新たな力は生命力と回復力と申しておったが、もしやお主には解析する能力があるのか?」
スネイルにその様な能力があるならば、ヒナやミズチ、それにビアンカちゃんの新たな力についても理解する事が出来るという事じゃ。
そして、その様な能力がスネイルに宿るという事は、賢者としてのワシの力による物と言う事も出来るじゃろう。スネイルとワシの相性はバッチリかもしれん。
「見ればだいたい分かるぞ、シャー。オレ自身魔法は使えないけど、アナライズだけは出来る。それと、オレの本体はタートだから、タートの脳が消滅しない限り、いつでも再生可能だ、シャー」
「何と!? うーむ。新たな力はワシにとって、とんでもなく有用な物じゃな。これならどんな敵が現れようとも、立ちどころに対処が出来ると言うもの。賢者のタート、ここに極まれり、じゃな」
「良かったな相棒、シャー!」
これが、ワシが得た新たな力の検証じゃった。途中ビアンカちゃん相手に恥ずかしい思いはしたが、これからはこの姿がワシの新たな姿じゃ。慣れてもらうしかないのぅ。
ともあれ、さっそくスネイルのこの力で、ヒナやミズチ、それにビアンカちゃんの役に立ちに行くとするかの。
ワシはヒナ達の下へ、満足の笑みを浮かべながら向かうのじゃった。
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