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進化

明日は免許の更新の為、投稿出来ないかもしれませんm(_ _)m

 

「いっせーのーせっ! むぐっ……おぇぇ……んぐっ! ……ックン! あ〜不味かったァ……」


 ユニコーンから出て来た四つの聖石。色は真っ白で綺麗だったけど、やはり味はウン……みたいだった。

 何故あたしがその味を知ってるかと言うと、この世界に生まれて目が辛うじて開いた頃、間違えてママの出した物を口にした事があったのだ。直ぐに吐き出したけど、その時の記憶は猛烈に残っている。苦い思い出だ。

 しかし、良薬口に苦しとは良く言うけど、聖石だけは何度食べても慣れない。美味しい心臓と一緒に食べれば誤魔化せるのかしら? 今度試してみよう。


「こ、これが聖石じゃと!? ……んーまーいーぞー!!!!!!」

「オイラも初めて食べやすが、これは何とも美味いもんですぜ!」

「おーいしー!」


 ――ッ!?!?


「う、嘘……でしょ!? あたし、すっごく不味くて飲み込むのに一苦労だったっていうのに、みんなは美味しかったの!?」


 信じられない! みんなであたしを騙しているとしか思えない……!


「うむ。ワシも初めて食べたのじゃが、これ程の美味さだとは思わんかった。ほろ苦さの中にコクが有り、更に甘さまで感じる味わいじゃ。これはクセになりそうじゃのぅ」

「オイラの感想もタートの旦那と同じですぜ! 文句を付けさせてもらうなら、もう少し水気が欲しい所ですかね」

「甘くて美味しー!」

「そ、そんなぁ……!」


 白虎形態から獣人形態へと戻り、あたしは膝から崩れ落ち項垂れた。出来るだけ考えない様にしてたけど、あたしの味覚がお子様だという事に愕然とする。まさか……ヒナにも負けるとは。

 次があるかは分からないけど、今度聖石を食べる時はしっかりと味わってみよう。そう、あたしは心に誓った。


「さて。腹も膨れた事じゃし、明日もたくさん移動するのじゃから、そろそろ寝るとするかの」

「そうっすね、タートの旦那。オイラも眠いっすわ」

「……zzzz」

「ヒナは既に寝ておる様じゃ。いつまでも項垂れておらんで、ビアンカちゃんも早う寝た方が良いぞい?」

「……分かった」


 祠状の寝床の一番奥にヒナを運んで寝かせ、そのヒナの傍でミズチが小さく細長い体を横たえる。その二体を守る様にタートが三番目に入り手足を引っ込めて丸くなったのを確認した後、あたしが入口を塞ぐ様に横になった。


「はぁ……毛づくろいして寝よ。獣人だと、毛づくろいも一苦労よね。舌が届かない所あるし」


 横になったまま手から毛づくろいを始め、足へと進める。甘噛みしながら舌で毛並みを整えていくけど、獣人形態だと体の半分も毛づくろいが出来ないのが難点だ。かと言って、今のあたしは白虎形態になると体が巨大なので、寝床から外に出ないと毛づくろいが出来ない。

 昼間ならそれでも良いが、寝る前なのでそれは面倒だ。なので、舌が届かない所は手を舐めて、手の平を唾液で濡らして毛並みを整えた。


「……お風呂、入りたいかも」


 毛づくろいが終わって寝ようとした所で、人間だった頃の記憶が頭に浮かんで来た。今は体を綺麗にするのに毛づくろいをしているけど、前世ではお風呂に入って綺麗にしていたのだ。お風呂、入りたい。


 そんな事を考えていたけど、いつの間にか眠っていたみたい。寝床の外からは小鳥の囀りが聴こえているし、森の中が明るくなり始めている。


「おはよう、みんな!」


 寝床から外へと出て、清々しい朝の空気で肺を満たし、気分が良くなった所でみんなへと挨拶をした。聖石を食べたからか、いつもよりも体が軽く感じられ、とても良い気持ちだ。


「うむ、おはようじゃの、ビアンカちゃんや」

「おはよっす、姐さん!」

「おはよー!」


 タート達は初めて聖石を食べたと言っていたけど、新たな魔法とか、体に変化とかは無いのだろうか。タートから順に、元気な挨拶と共に寝床から外へと起き出して来る。


 …………。


 ――ッ!?!?!?


「た、タート……だよね……? それにミズチ? え……ヒナも!?」


 あたしは我が目を疑った。何故ならばタートをはじめ、ミズチやヒナまでもがすっごく変化していたのだ。ここまで劇的に変化するとは思わなかった。あたしの時とは大違いだよ。


 先ずはヒナから説明するね。


 ヒナは……炎の鳥になっていた。炎とは言っても、実際に燃えている訳では無い。頭の上にある一本だけ長い羽根は燃えてるけど。

 体が成鳥の大きさ……体長1・5mになっただけでも驚きなのに、体が炎と言うかオーラと言うか、とにかく炎が燃えている様に見えるのだ。

 いくらヒナの種族が火を食う火食鳥と言えども、体全体が炎の様に見える事は無い筈。その雰囲気は、既に聖獣の物と言えるかもしれない。


 次に説明するのはミズチね。


 ミミズにしか見えなかったミズチは、ミニチュアドラゴンに変化している。何故、ミニチュアなのか。体長が1m程のドラゴンだから、ミニチュアなのだ。

 ヒナ、タート、ミズチの中で、一番体が変化したのはミズチだと思う。ミミズがドラゴン。有り得ないでしょ!?

 あ、ドラゴンっていうのは、あたしの前世の記憶なんだけど、T・レックスと言う恐竜に蝙蝠の羽が生えてる魔物の王様の事ね。前世の世界で、一部の人から神聖な生物として崇められてた記憶があるから、一応聖獣なのかもしれない。まぁ、物語の中でだけど。


 最後は、我らが物知り博士のタート。いつも頼りにしてます!


 そのタートだけど、(まさ)しくカメの大魔王といった姿に変化していた。体長はミズチとほぼ同じの1mだけど、甲羅からは鋭い突起が幾つも生えている。以前、ハヌマンとの戦闘時に『甲羅スパイク』と言う魔法をタートが使った時よりも、今の姿の方がより凶悪だ。聖獣とは一体何ぞや? と問いたい所存である。


「良く、寝床の中に居れたわね……。かなり窮屈だったと思うけど」

「何がじゃ、ビアンカちゃん?」

「自分の体が変化した事にも気付かないなんて……ボケてしまったのね、タート……!」

「失敬なっ!! ワシはボケてはおらんぞい!」

「……本当に?」

「本当じゃとも! ……な、何じゃあ!? ワシの体が大きくなっとる上に、何故に後ろ足だけで立てるのじゃ!?」


 うん、やっぱりボケたみたいね。でも、気付いたのだからマシなのかな?


「お、オイラの体もでっかくなってやす!」

「うち、飛べるー!」


 ミズチとヒナも変化に気付いたみたいね。ミズチは視線の高さで気付き、ヒナは本能なのか、羽を広げて宙を飛ぶ事で気付いてた。


 でも、みんな凄い。こんなに変化したんだもの。あたしも変化したのかと手足を見て確認したけど、どうやら今回は変化しなかったみたい。まるで変化が見られなかったもの。


「みんな、聖獣に一歩近付いたわね。あたしも嬉しいよ! 今回あたしは変化しなかったけど、みんなはたぶん新しい力を得ていると思うから、しっかりと自分の力を把握する様にね?」


 体が変化したという事は、間違いなく新しい力を得たという事。今までのあたしがそうだったのだから、みんなもその筈。今日は移動しないで、みんなの力の検証に充てる事にしよう。


「ワシらが変化した事は驚いたが、ビアンカちゃんも新たな変化をした様じゃの」

「え? あたし、どこも変化なんてしてないよ?」


 何度も確認したのだから間違い無い。獣人の体のまんまだ。タートは、あたしのどこが変化したと言うのだろうか?


「やはりのぅ。その変化は自分では見えぬものじゃから分からずとも仕方あるまい。まぁよい、額に手を当ててみれば良かろう」

「額……? あっ!!」


 タートに言われるがままに額を触ったら、そこには今まで無かったはずの物が生えていた。


「これって……角、だよね。触った感じだとユニコーンの角だけど、どう見えるかな、ミズチ?」


 ユニコーンの角を見た事があるのは、あたし以外にはミズチしか居ない。なので、ミズチに確認してみた。


「確かにユニコーンの角ですが、姐さんのはもっと短くて、何だか可愛らしく見えますぜ?」

「ば、バカじゃないの!? か、可愛いだなんて……そ、そんな事……!」


 可愛いと言われて、正直に言うと嬉しい。だけど、この世界で可愛いという事は弱いという事に繋がる。つまり、敵に()められるという事だ。


「ママ、可愛いー!」

「うむ。より可愛らしくなったの、ビアンカちゃんは」

「ヒナにタートまで……!?」


 みんなの可愛いと言う言葉に、あたしは複雑な気持ちのまま天を仰いだ。

お読み下さり、真にありがとうございます!

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