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サイコアンドサイ  作者: 左之助
2/2

ファイアーアンドフィアー

記念っすべき一人目デス

生天目さんが可愛い回でもあるかも。

 心を躍らせながら、俺は向坂の部屋へ向かった。彼女の部屋は俺の部屋のちょうど下あたりにある。インターホンが扉の横についていたが、わざわざ押す必要もないだろうと思い扉をノックした。どうせ貸し切りなのだ。多少の音ぐらいで文句は言われない。

「やあ、来てくれて助かる。」

扉を開けた向坂は、そういうと「さあはいりたまえ」というように身振りをした。靴を脱いで部屋に上がると双葉姉妹がババ抜きをしている最中であった。

「おお待ってたした。ほらほら芽衣、彼も来たことだし、この勝負は中止しよう。」

「お姉ちゃん、自分が不利だからってずるいよ。まあいいけど。」

そう言うと二人は持っているカードと捨ててあるカードを集めた。

「佐紀さーん、次はなにするの?またばばぬき?」

「んー君は何かしたいゲームはあるか?」

と俺に話しを振ってきた。

「七並べなんてどうかな」

「私は構わないぞ。双葉たちはどうだ」

「私もー」

「私もそれがいいな」

「じゅあ決まりだ。芽衣、配ってくれ。」

一ゲーム目と二ゲーム目は向坂の圧勝。そして三ゲーム目。惜しくも向坂に惜敗した。双葉姉妹はまるで勝負になっておらず、最終的に俺と向坂が残るといった形になっていた。

「もおぉぉxふたりとも強すぎだよぉ。」

「これじゃあ私たち楽しめないよもぉ。」

そこそこ運が絡むこのゲームでここまで差が出るのも珍しいな。

「まあまあ、次回頑張りましょうよ。」

柄にもなく気を遣った。

「次回もいいんだが、もうそろそろいい時間だな。お前たち、シャワーとかッ着替えとかは大丈夫なのか?」

「あー私シャワー浴びてから行きたいかも。」

「じゃあ一緒に浴びようよお姉ちゃん。さっぱりしてから花火見たいから。」

芽衣さんの耳が少し赤い。これはまさか。そういうことか。

「ということで、私たちはこれで。」

「ああ楽しかったよ。また後でな。」

「あじゃあ俺も。」

「お前は少し待ってくれ。」

「え、はぁ。わかりました。」


双葉姉妹が出て行って、少しの沈黙が流れる。

「このホテルの部屋は防音設備もしっかりしていてな。」

そんなことを言って、向坂はこちらを振り向いた。そして、素早く俺との間合いを詰めてくる。

「多少の物音は外には聞こえないんだ。」

彼女の右手には黒い何かが、いつの間にか握られている。それを架空人している間にも、彼女は目の前に迫っていた。

「今日は楽しかったぞ。花火を一緒に見れないのは残念だが、最後の瞬間も一緒にいれるなんてなかなかロマンチックじゃないか」

息が当たる。少しでも距離を取ろうと思ったが背後には壁。もう距離を取るなんて流ちょうなことは考えても意味がない。

「こうしていると最初にあったころ補思い出すな。」

「懐かしいな。懐かしすぎてあまり覚えてねえけど。」

ふふっと笑う顔。眼はやはり笑っていない。

「あのころから君は変わらないな。いや、少し変わった。いいや、替えられたのかな。」

「いやだな。人をそんなストックがあるみたいないいかたして…ゲームじゃないんだから。」「ゲームみたいなものだろう。少なくとも今は。」

「…それは危機的状況って意味か?」

「人生って意味、かな。」

「あんまりたとえうまくないぞ。それ。」

もう笑う顔とは言えない。ニヤついている様でどこか切ないような、そんな顔だ。

「お前はゲームが好きいだろう。」

「…人生は嫌いだよ。」

彼女の右手が少し震えた。

「抵抗しないんだな。もしかして重度の被虐性癖でも持っているのか」

ぬるい感覚が首に当たる。

「こんな美人にならそんなのも悪くはないかも。でもやっぱりされるよりはするほうがいいかも。」

「なら無理やりこの状況から逆転して、お前の好きなようにするか?」

体が密着される。やわらかい感覚がここまで不快なものになるなんてことを、俺は知らなかった。

「いや、本当はするのも好きじゃないかな。そういうのは愛し合ってからするもんだ。あんたに対してそれが芽生えることはないよ。」

「さみしいな。私もお前を愛しちゃいない。」


一歩、二歩と、離れる。


「ただ」


それはただ美しく、吸い込まれそうな、潤んだ瞳で



「残念だよ。」



破裂音だけが、脳内に反響した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




気持ちが悪い





 反響、そして沈黙。


「……」


「どうだ、驚いただろう。」


「……ふぅ」


「特注で作ったびっくり拳銃だ。」

銃口から「驚かせたしてごめんねー」と書いてある布が垂れている。

「どうだ、どうだ、迫真の演技、本物みたいだっただろう?」


「いえ、わかっていましたから。本物の銃はそんな軽い感触じゃないし、何より、こんな序盤で俺が殺されるはけないじゃないか。」

「それもそうか。」

なるほど、といったように手を打つ向坂。良い子のみんなはマネしちゃだめだぞ。

「じゃあ今度は終盤にやるかな。」

「いや、あんたが俺を殺すことはないだろうよ。もう何年も一緒にいるんだから。」

「人間、いつ変貌するかはわからんぞ。」

「そりゃあ怖いな。」



こんな茶番を終えて俺は自分の部屋へ戻った。シャワーおをあびて少しすると、電話がかかってきた。



「もうすぐ花火があがるから、屋上のテラスに上がってくれ。他の者にも今から連絡する。」



 テラスへ上がると京子と恭介さんがすでにいた。二人で椅子を並べている。

「あ、来たわね、こっち来て早く手伝いなさい。」

そう言って京子はテーブルを指さした。俺には椅子を運ばせてくれないんだな。

 夜のテラスの気温は比較的涼しいので過ごしやすい。若干の蒸し暑さがあるがこれも夏の夜ならではだ。

「お待たせいたしました。あ、増えてる。」

そう言ってやってきたのは生天目さんだった。体の大きさに不釣り合いに合わないような大きな鉄板を持っている。

「おーー。生天目ちゃんありがとう。こんなに大きいの大変だったでしょう。」

レオさんが受け取りながら聞いた。

「いえ、いつもの訓練からすっれば朝飯前ですっ。」

いったいいつもどんな訓練をしているのだろうか。この鉄板、男でも運ぶの大変だろうに。汗ばんだ前髪をおでこにはっつけながらガッツポーズ。健気だ。メイド服が暑そうだが、これを脱ぐわけにはいかないのだろう。

 そうしているうちに双葉姉妹がやってきた。辺りを見回した若葉さんが話しかけてきた。。

「あ、なに、もうじゅんび終わっちゃった感じ?」

「ついさっき終わったところですよ。」

「あちゃー、なんかごめんな。」

「いえ、別に大丈夫ですよ。俺らが早く来すぎただけなので。」

「そっかぁ。まあそれはそれとして…」

耳元で囁くように。

「…トランプの後いったいナニがあったんだい(笑)」

「な、なにもないですよ。」

「若い男女が一部屋に…なんて、もうそれしかないでしょう?」

ふふっ、と。笑い声が耳にかかる。

「ちょっと、やめなよお姉ちゃん。」

顔を赤くした芽衣さんが若葉さんを引きはがしてくれた。

「ごめんなさい、うちの馬鹿姉が、その…男女のひめゴトをちゃかしてしまって…」

「は…」

「い、いえいえそういうことは悪い事じゃなと思いますしお互い了承の上ならなんというかその深め合うという意味でもあると思うので」

「いや違いますからっ、ホント勘弁してください。」

誤解を解こうとしたが、聞こえていたかはわからない。

「ちょっと。」

「きょ京子…」

「…どういうことよ?」。

「どうもこうも、全部誤解なんだって。」

「いい、何も聞きたくない。あんたなんて花火と一緒に打ち上げられればいいのに。」

死ねってことか。


 「あ、そうだ、佐紀さんからの伝言なんだけど、佐紀さん、遅れてくるから先に始めててくれってさ。」

若菜さんが言った。

「そうですか。まあ仕方ないですね。ひとまず彼女なしで楽しみましょうか。レオさんと雅さんもいませんが。」

恭介さんが少し寂しそうな顔でそういうとほかのみんなもそれにうなずいた。

「雅さんは確か、自室で書道してるのよね。レオさんはどうしたのかしら。」

双葉さんが皆に聞いた。

「お部屋で寝てしまっているのでしょうか。私がお呼びしたほうがよろしいのでしょうか…?」

生天目さんがその少し太い眉を顰める。

「大丈夫じゃない?そのうち来るわよ。」

京子がそういうと「わかりました」と生天目さんは了解した。

 生天目さんが腕時計を確認し、言った。

「さあ皆さん、花火があがりますよ。」



 カラフルな火花が打ちあがった。決して大きなものではないが、それでも周りに何もない尾の場所からは何よりもきれいで迫力のあるものだった。

「花火かぁ。」

普段花火を見ることなどないものだから、この瞬間はなかなか新鮮なものだった。テレビに映るものとは違い、腹の奥に響く音や独特の煙。こういうのも悪くない。と。

「花火お好きなのですか?」

生天目さんが飲み物片手に話しかけてきた。

「そうですね。なかなかいいものだと思いますよ。」

「それはよかったです。」

花火があがる。

「お嬢様もお好きなんですよ、花火。」

「あいつのことだから、特大のをよこせ、とかいうんでしょう。」

「いいえ、お嬢様は、線香花火が一番好きだとおっしゃっていましたよ。」

「へぇ、なんだか意外です。」

「…私、お嬢様のことを何も知らないんです。」

「好きな花火とか知っているじゃないですか。」

「いいえ、そういったことではなく。」

生天目さんは少し俯いて言った。

「私、この家について、師匠の元でお嬢様のお世話を始めて二年になるんです。もちろんたった二年の、それも学生の私が何を言っているんだと思われるかと思います。」


……嗚呼。…この人は。


「でもなんだか、私だけ、向坂家から距離を置かれている気がしてしまって。」

「どうして俺にそんな話を?」

「あなたはお嬢様と仲がよろしいようですし、お嬢様自身がおっしゃっておりました。あなたのことを。」

「スケベな奴だとでも言ってました?」

「いいえ。信頼できる友人だ、と。」

「…俺は」

「…なんだか申し訳ございません、楽しい雰囲気が壊れてしまいますね。」

そう言ってこちらを見る彼女は、笑っていた。線香花火のように今にも消え入りそうな、はかない笑顔で。

「生天目さん。」

彼女の瞳を、今にも何かが零れ落ちてしまいそうなその瞳を見て。

「俺よりもあなたのほうが、よっぽど信頼できるいい友人だと思いますよ。」



 それからほんの五分後、レオさんがやってきた。

「悪い悪い、寝坊しちゃったよ。もう終わっちゃったかな。」

「いや、まだだと思いますよ。」

「おぉ良かった。花火の音で目覚めてよかったよ。」

「コーラあるよ、飲む?」

「ありがとうね、いただくよ。」

一人増えて賑やかだ。

「さぁ、今から焼きそばパーティ始めますよ。皆さん召し上がってください。」

「おお生天目ちゃんが焼くのか。」

「あたしも手伝およ。」

「ありがとうございます。ではキャベツをお願いします。」

「ちょっと私トイレ行ってくるー。」

「待ってお姉ちゃん、私もぉ」


「この花火って松田さんが一人であげてるのかな?」

「そうらしいですよ。」

「はあー、完璧超人だね、松田さん。」

「ホテルから少し離れたところにセットしているらしいです。」

「佐紀ちゃんのためなら空も飛べるんじゃないかな、松田さん。」

「師匠はヘリの運転までならできますよ。」

「「「「わぉ」」」」

「…そういえば、佐紀ちゃんは?」

「佐紀はなんか用事で遅れるんだって。もうすぐ終わっちゃうけど。」


「すまないみんな、遅れてしまった。」

若干息を切らした向坂がテラスに現れた。

「…用事はもういいのか?」

「ああ、なんとかな。」

「お、佐紀さん商事すんだのかー。」

向坂背後から双葉姉妹がさらに現れた。二人はトイレが済んだのだろう。

「さあさあ皆さま、焼きそばが出来上がりましたよ。順番に受け取ってください。」

「ちょうどいい、私もいただいていいかな?」

「もちろんでございますお嬢様。味が薄かったらどうぞお申し付けください。」

「大丈夫。お前の料理につけるケチなんかどこにもないさ。」

こうして俺たちは絶品の焼きそばと普通だけどなんだかおいしいぬるめのドリンクで盛り上がった。



 眠りについたのはいつだっただろうか。あの後しばらく盛り上がって、そして部屋についてすぐ眠りに落ちてしまった。結構遅くまで起きていたせいか、いまだベッドで二度寝を繰り返している。


   ドンドンドンドン


激しく扉がたたかれる。朝から何なんだと体を起こし、どうかしましたか、と返事をする。だが返答が返ってこない。朝のイライラが増すことを防ぐために扉を開いた。


「ご無事でございますかっ」


今にも敵が攻めてくるといったような権幕の生天目さんがそこに立っていた。


「は、はい、なにかあったんですか?」



「はい、自、実は」



先ほどとは違い今度は青ざめた顔で。




「雅様が、こ、殺されてしまいましたっ」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ひとまず事態を把握するためにみんながいるという昨日朝食を食べた場所へ向かった。

 「雅が死んだっていうのは本当ですか。」

「はい、それは事実でございます。」

「その、殺されたんですか。」

「…おそらくはそうではないかと。」

淡々と説明する松田さんが、なんだか恐ろしく思えた。

「私、いやよ。」

沈黙を破ったのは芽衣さんだった。

「雅さん、殺されたってことは、まだ犯人この中にがいるってことでしょう。」

「落ち着いて芽衣。この中にいると決まったわけじゃ…」


「ソンなわけないじゃないっッ」


残響と沈黙が流れた。

「この島に私たち以外の人なんていないでしょッいたとしてもどうして殺すのよ…」


誰もがわかっていたはずの真実を彼女が口にしたことによって再認識してしまった。

「不安になる気持ちはわかるがまずは冷静になることが大切だ。」

向坂のいうことはもっともだが、人間本当の恐怖というものにはひどく弱い。冷静でいろというほうが無茶な話である。


「二日後には迎えの船が来るはずです。それまで皆さん一緒に過ごしましょう。古典的ではありますが、そうすることで不審な行動はし辛いはずでございます。」

「食べ物はどうするの」

「私がおつくり致します。」

レオさんの質問にも松田さんは冷静に答えた。

「も、もしもあなたが犯人だったら?」

恭介さんが聞いた。

「…私と生天目はあなた方お客様とほとんど面識がないため、動機もない。つまり私たちは犯人の可能性は薄いかと思われますが…」

「でも…雅さんとは面識があったんですよね」

芽衣さんが若葉さんに抱かれながらそう発した。

「……はい…それは紛れもない事実でございます。」

「だったら雅さんを狙った犯行の動機はあるかもしれないってことですよね」

「待ってくれ、松田はそんなことをするような人間じゃ」


「人間なんてッっ 本性はどうかわからないじゃないですか…」


「ごめんなさい皆さん、この子きっと疲れてて…部屋で休ませますねっ」

そういうと若葉さんは芽衣さんを連れて自室に戻っていった。

「お食事は非常時のものをご用意いたしますっ。」

二人の去り際に松田さんが叫んだ。聞こえているといいが。



やっと物語が進んで参りました。引き続きよろしくお願いいたします。

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