表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある車屋の日常。  作者: 和泉野 喜一
9/35

これこそマッスル!

まさかのエンジン載せ替え!?

場所を事務所へ移し、エンジンについて話し合った。

「では、エンジンは載せ替えるとしてご希望などはおありでしょうか?」

雄二は男性に聞いた。

「先程もお話した通り、何種類かのエンジンがあると知っている程度でして。」


遅れて新之助が現れた。

「遅れて申し訳ない。ちょっとこれを探していたものでね!」

そう言うと1冊の本を出した。

「この本にはマスタングの詳細が載っているのだよ!」

本をパラパラとめくり、あるページで止めた。

そこにはエンジンについての記載があった。


      '64       '66

直6 2800cc/102ps → 3200cc/122ps

V8 4300cc/166ps →    ×

V8 4700cc/213ps → 4700cc/213ps-228ps-275ps


「マスタングは1964年から1966年まで造られたが、エンジンは3種類、排気量で見れば4種類、馬力別では7種類ある。ちなみにファストバックは65年発売で、あの車のエンジンは2800CCだ。」

「そんなに・・・」

男性は食い入る様に本を見た。

「オリジナルに拘らないのであれば、アフターマーケットにマスタング用のエンジンもあるし、更に言えばどんなエンジンでも載せられるのがアメ車だ!つまり、選択肢は無限大というわけだな!がっはっは!」

新之助の言葉に戸惑う男性。

「あの、どれが良いのでしょう?そんなにあるのであれば無知な私では選ぶことが難しいのですが・・・」


「うむ。それはどんな車に乗りたいかで決めれば良いと思いますぞ!化け馬にもポニーにもできる!」

「どんな車に乗りたいかですか・・・」

そう呟くと目を閉じた。

「やはり馬力がある方が良いですね。ただアメリカでの思い出を壊したくはないのでオリジナルでお願いします。」

「では、一番馬力の出ているコレで決まりだな!」

新之助は本のある部分を指差し言った。

「宜しくお願いします。」


こうしてプランが決まり、男性は再び代車で帰宅した。


「社長。今更ですが、オリジナルのエンジンなんて手に入るんですか?」

雄二は率直な疑問をぶつけた。

「うむ。心配いらん!アテがある!」

そう言うと何処かへ電話を掛ける新之助。

「おう!俺だ!実はマスタングの4300CC/275psオリジナルエンジンを探しているのだが・・・あるか!?そうか!では金額などの詳細をファックスで送ってくれ!」

なんと簡単に手配してしまった。

雄二は新之助の手腕に驚きと尊敬の念を抱いた。

のは一瞬。

送られてきたファックスを見て

「なぬ!?これでは予算オーバーだ!」

と叫び、再び電話を掛け値下げ交渉を始めた。

昔のよしみと言うことで多少の値下げと、新之助が持っている部品を譲ることを条件に予算内でエンジンを手に入れた。


数日後、エンジンが届き作業に掛かる。

まず、エンジン本体周りの部品を外し、次にプロペラシャフトを外す。その後ミッションを外したら、いよいよエンジンを降ろす。

古い車のため、比較的スムーズに作業は進んだ。


新しいエンジンを載せるための加工を済ませ、今度は逆の手順で組み上げて行く。


作業をしているのは新之助と西長田。

有人とジェミーは手伝いたそうにしていたが、作業スピードが早すぎて眺めることしか出来なかった。

「よし!あとはオイルを入れれば良いだろう!」

やっと手伝いができるとばかりに有人とジェミーはオイルを取りに走った。


「さあ!エンジンを掛けるぞ!」

キュン・・・キュン・・キュン・キュキュキュキュ・・キュン・・ゴオォォォン!

爆音が響き渡る。

「いー音ッスネ!」

「V8はAmericaノタマシイデース!」

「やっぱアメ車はこうじゃないとな。」

一通りチェックを済ませると

「さて、納車だ!」


新之助と雄二は車を届けるために店を出た。

載せ替えたエンジンのチェックも兼ねている。

少しアクセルを踏むと猛烈な加速をした。

「うむ!すこぶる快調だ!パワーも出ているな!」


男性の自宅へ到着すると、家の前で待っていた。

「お待たせ致しました。」

「すごい音ですね。私の車とは思えない。」

「音だけではないですぞ!馬力もかなり出ている!」

「ほお。この老体に扱えますかな?」

「では、試乗と行きますか!」

男性と新之助は車に乗り込んだ。


「これは、凄いですね。少し怖いくらいです。」

「まだまだこんなもんではないですぞ!」

新之助は運転のレクチャーをする。

「ああ・・・この感じだ。思い出してきましたよ。」


暫く走ると男性は車を手の内に入れていた。

(もう大丈夫だろう。)


試乗を済ませた。

「では、お車の説明は以上となります。何かご不明な点が御座いましたらご連絡下さい。」

「はい。ありがとうございます。早速今からドライブに行ってきますよ。」

ニッコリと笑い男性は言った。


「お気をつけて!」

2人は手を振り見送った。

新之助と雄二は走り去るマスタングを見ながら

「今回は雄二のお手柄だな!」

「え?何故です?」

「路上で声を掛けていなければ、あの人の()()()()()は叶わなかったかも知れないからな!」

「そうですね。お役に立てたなら良かったです!あ、車取って来ます。」

そう言うと雄二は小走りで去った。


「今回も良い仕事が出来た!アメ車の奥深さも知れたしな!」

走り去る姿を眺めながら満足そうに笑顔で頷く新之助。

「社長帰りますよ!」

雄二の声に

「おう!」

と答え車へ歩き出す。


〝フォードマスタングGTファストバック〞

古き良きアメリカを象徴する1台。

男性にとってこの車は若き日へ戻してくれるタイムマシンなのだろう。

無事に終わってよかった!

次は日本車!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ