憧れたのは・・・
簡単な修理のはずが、まさかの事態に!
マスタングの部品が届いた。
早速交換を行う新之助。
僅か1時間程度で作業を終わらせた。
「うむ!これで良かろう!」
鍵を捻った。
キュキュキュキュキュ・・・ブオン!
エンジンに火が入った。
その音に皆が近づいて来た。
「なんかイマイチ迫力ないッスネ。」
「これは普通の直6だからな。」
「Oh・・・V8ジャナイデスカ。」
そこへ雄二がやって来て、
「あ、修理終わったんですね!お客様に連絡して良いですか?」
「うむ!頼む!」
「わかりました!」
雄二は事務所へ戻って行った。
エンジンを掛けたまま暫く話をしていた。
すると、ガガガガ・ガガ・ガ・・・
エンジンが突然止まった。
「おう!?何だ!?」
慌てて新之助がボンネットを開けた。
焦げたオイルの臭いが漂う。
「あ!社長!下!下!」
西長田が指を射しながら言った。
慌てて車体の下を覗くと何やら液体が漏れていた。
「まさか!」
そう言うと新之助はオイル量を確認した。
「スッカラカンだ・・・なんてことだ」
最悪の結果だった。
エンジンが焼き付いたのだ。
「ん!?いかん!雄二に話さねば!」
慌てて事務所へ走った。
「雄二!連絡は待つのだ!!」
「どうしたんですか?」
「マスタングはまだ返せない!トラブルだ!」
「えっ!?もう終わったって連絡しましたよ!」
「遅かったか・・・」
夕方になりマスタングのオーナーである男性が来店した。
雄二はもう一度連絡し、簡単に状況は伝えていた。
とりあえず車へ案内し、詳しく説明する。
「つまりエンジンが壊れていたのですね。」
「申し訳ありません。こちらの点検不足です。」
「いやいや、1度はエンジンが掛かったのでしょう?でしたら見立ては間違えていなかったということだ。」
「そう言って頂けて幸いです。」
そこへ新之助がやってきた。
「この度は此方の不手際で大変ご迷惑をおかけしました。」
深々と頭を下げた。
「いやいや、槇田さんにも申しましたが、これは貴殿方の責任ではありませんよ。」
「それで今後なんですが、如何いたしましょう?もし、手放されるのであればこちらで買い取りをさせて頂きますが?」
雄二は申し訳なさそうに提案した。
「そうですね・・・」
男性は工場内を見渡し
「ココはとても良い店だ。自分達に非がないのに、ここまで誠意を尽くしてくれる。やはりあの故障は貴殿方と出会うためだったのですね。」
男性は笑顔で言った。
続けて、
「実は私、若い頃アメリカに住んでいたのです。その時この車を所有していた友人に借りて乗ったのですが、それはもう衝撃でした。いつしか憧れるようになり手に入れると誓いました。これはようやく巡り会えた車なんですが・・・実は私が憧れた車とは違ったのですよ。」
「憧れの車はマスタングではなかったと?」
「いえ、エンジンが違ったのです。これは購入した後に知ったのですが、何種類かエンジンがあったのですよ。」
「うむ。確かに直6とV8、排気量は4種類はあったはずだ。」
「そうなんです。私がアメリカで乗ったのはもっとパワフルでした。そのパワーに衝撃を受けたのに、この車には1番大事なそれがない。」
「ではエンジンを載せ替えると?」
「できますでしょうか?」
雄二はチラッと新之助の方を見た。
「うむ!任せろ!」
新之助は胸をドンッと叩いて答えた。
こうしてマスタングはエンジンを載せ替えることとなった。
さてさて、とりあえず方向性は決まった!