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とある車屋の日常。  作者: 和泉野 喜一
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思い出のカブトムシ。

今回の車は大衆車の代名詞とも言える1台!

しかし、何やらワケアリな感じ?

ある日の午後。

「たっだいまーー!!」

バンッ!と扉が開き大声が響いた。

声の主はココ〝Garage SHI・N・NO・SU・KE〞の代表《新堂 新之助》

「おかえりなさい!」

「何かいい車ありました?」

事務所には雄二と真雪の2人。


「おう!とびきりの掘り出しモンがあったぞ!」

展示していた中古車が1台売れたため、新たに並べる車を仕入れるべくオークションへ行っていたのだ。


「見たら驚くぞ~!ヒッヒッヒ・・・」

怪しげな笑いを繰り出しながら2人を手招きする。


((なんか嫌な予感がする))

2人はそんな気持ちを抑え、手招きに応じ表へ出た。


「な、なにこれーーーーー!!!」

「嘘でしょ・・・」

目にした瞬間、真雪は叫び雄二は唖然とした。

「がっはっは!!良いだろう!こいつはまだまだ現役だぞ!」

自慢気に笑う。


そこにはトラックに積まれた1台の車。

見た目はボロボロで錆びも酷く、穴も空いている。

車というより鉄屑にしか見えない。

辛うじて丸まったボディラインだけは確認できた。


((これはヤバい!トミ子さんがキレる・・・))

同時に思った。

トミ子は経理を担当していた。

とてもケチ・・・もとい、倹約家で無駄な出費を極端に嫌う。

だが、新之助に任せていたらとっくに店は潰れていただろうということは従業員全員が理解していた。

そして、トミ子がキレると怖いということも。


2人はゆっくりと目を合わせコクンと頷く。

考えることは同じ。

((この場から逃げる!!))


車に夢中の新之助を放置し、恐る恐る事務所へ一歩踏み出した瞬間

「戻ったでぇー。あら、みんなで何してはんのん?」

トミ子が帰って来た。

((逃げ遅れたーー!!))

愕然とする2人。


「おう!トミちゃん、どーよこれ!」

ドヤ顔の新之助。

トミ子は顔をしかめて車を見る。

冷や汗が止まらない2人。


「これ、どないしたん?」

「買ってきたのだよ!」

((終わったーーー!!))

2人の頭の中で地球がパカッと割れた。


「ふーん・・・綺麗にしたらなな。」

「当前そのつもりだ!」

そう一言残すとトミ子は事務所へ入って行った。


((あれ?この鉄屑見て怒らないの?))

再び目を合わせる2人。

とりあえず助かったと胸を撫で下ろした。


「社長。なんでトミ子さん怒らなかったんでしょう?」

「ですよね!私、絶対怒られるって思いましたよ!」

不思議に思い聞いた。


「ん?何を言っている。トミちゃんが怒るわけないだろう?」

「何でですか?」


「コイツはトミちゃんにとって、亡くなった旦那との思い出の車だからな。わっ!」

「「えっ!?」」

新之助がポンポンと叩くとボロッと錆びの塊が落ちた。


詳しく聞きたい気持ちもあったが自重し、2人は事務所に戻る。

中ではいつも通り、トミ子が電話で喚いていた。


その日の夜。

新之助は1人で工具の整理をしていた。

と、そこへ。

「社長・・・。」

少しモジモジした様子の真雪が声を掛ける。

「何だ真雪くん。まだいたのか?」

「はい。ちょっと事務所の片付けをしてて・・・」

一瞬の沈黙。


(目線を合わさず、恥ずかしそうに・・・会社で2人っきり・・・なぬっ!?)

この状況に新之助は何かを察した。

「ま、待つのだ真雪くん!俺と君では親子程の年齢差があるのだよ!確かに俺は魅力溢れる男だ!しかし!気持ちは嬉しいが・・・いかんぞ!」

オロオロしながら言う。


グワッ!と目を見開き、

「断じて違ーーう!!私が社長のことを!?何でそんな話になるんですか!?」

「え?違うの?こういうシチュエーションの場合・・・」。

「赤らめてませんし!ドラマの観すぎです!ついでに言えばカッコいいとか魅力あるとは言えませんからね!!」

「真雪くん、それはヒドイよ・・・カッコいいとは言っていない・・・」

その言葉にショックを受けた新之助はガクンと項垂れた。


(やっちゃった~!)と少し後悔しつつ、

「そ、それより!今日社長が買って来た車は何て名前なのかな~って気になって!」


新之助はピクンと反応し、バッ!と真雪を見た。。

「そんなに聞きたいのかね!?」

その目はキラキラと輝いている。

「は、はい・・・」(立ち直り早いなぁ・・・)


「あれは〝フォルクスワーゲン・タイプ1〞通称〝ビートル〞と言う車だ!」

「ビートル?カブトムシ?」

先程までのことは既に忘れているようだ。


「うむ。この流線型のボディからそう呼ばれる様になったのだよ。」

「ビートルか・・・よし!社長!私も協力しますから絶対綺麗にしましょうね!!」

何か吹っ切れたように笑顔でそう言うと、真雪は事務所へと小走りで戻って行った。


「だから当然だと言っておろうが!それに素人の協力などいらん!」

がっはっは!と豪快に笑いながら言った。


「ん?結局あやつは何しに来たんだ?」


最後には新之助の疑問だけが残った。




真ん丸ボディに真ん丸ライトが可愛い車♪

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