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とある車屋の日常。  作者: 和泉野 喜一
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ランチアって?

かなりマニアックな内容ですがお付き合いくださいま~せ~m(_ _)m

「はっは~。音の正体は君だな。それと・・・」

手早く故障箇所を見つけてリストを作成した。

「うむ!では真雪くん。コレをまとめた後、慎ちゃんに連絡を頼む!」

「慎ちゃん?って誰ですか?」

「何を言う!デルタの慎ちゃんだ!」


(いつの間にそんな関係になったんだ!?)

真雪は呆れながらも指示に従う。

「もしもし?お世話になります。私〝Garage SHI・N・NO・SU・KE〞の高野と申します・・・」

電話する真雪を横目に新之助は工場へ戻った。


有人とジェミーが何やら話し込んでいる。

「名前は知ってるけど、ちゃんと実物見たのは初めてかも。ジェミーは見たことあるッスカ?」

「Daddyガモッテタヨ!トテモノリヤスイ!」


「ほお。ジェミーは乗ったことがあるのか。」

2人の会話を聞いていた新之助が割って入った。


「あ、社長。デルタってラリーで強かった車ッスよね?ジェミーの言う乗りやすいってのは速くないってことじゃないんスカ?」

「No!デルタハヤイ!」

咄嗟にジェミーが反論する。


「お前の車は乗りにくいのか?」

「まぁ、あちこちイジッてるッスからね~。でも速いッス!」

「ふーむ。ではランチアという会社から説明してやろう!」


西長田はチラッと新之助達の方を見たが気にせず作業を続けた。


新之助が話し出す。

「ヴィンチェンツォ・ランチアが創始者の名だ!彼はフィアット社のレーシングドライバーだったが、そのまま入社し研究開発を行ったんだな!そして独立。ランチアを立ち上げた!これが1906年のことだ。」

「へぇー。フィアットってそんな古くからあるんスネ。」

コクコクと頷きながら話を聞く2人。


「うむ!フィアット社については別の機会に話すとして、ランチア社は速い車を造ることを目標にしていた!彼の死語、息子のジャンニがその想いと会社を継いだわけだが、この男が偉い!!アルファロメオ社でレースマシンを設計していたヴィットリオ・ヤーノを招いた。これにより、アウレリアという名車が生まれたのだ!」

「ランチアってデルタ以外に凄い車あったんスネ。」

「何を言う!他にもストラトスやラリー037があるだろう!」

「あ、そーいえば・・・」

「HaHaHa!」

有人は新之助の言葉で思い出した様だ。

ジェミーは知っていたと言わんばかりに笑った。


「まぁ良い。アウレリアはかなり古い車だからな。知らんのも無理なかろう!それまでランチア社は速い車を目指していたが、あくまでも高級車にスポーツカーの要素を加えたものが多かったんだ!その証拠にヴィンチェンツォの時代にはレースに参戦することがなかった!しかし!息子のヴィットリオは違う!アウレリアを使って様々なレースに参戦し、果てはル・マンやF1にも挑戦したのだ!ここも偉いポイントだ!」

「スゲー!ランチアってF1に出てたんスネ!ラリーだけかと思ってたッス!!」

「Oh・・・Amazing!」

驚く2人を余所に話を続ける。


「しかし、速い車を目指し過ぎたとでも言おうか・・・経営悪化によって倒産。2代目にしてランチア一族は経営から離れることになり、ヤーノも去ったのだ。」

話しながら床にヘタり込んだ。


「しっかーし!倒産したランチア社を買い取った男がいたんだな!」

次の瞬間勢いよく立ち上がり叫んだ。


有人とジェミーはビクッとし、直立不動。

新之助は完全に自分の世界に入っている。


「だが、今度は技術に加えてデザインに拘り過ぎた!結局20年程で再び経営悪化した。」

今度は項垂れる。

(感情豊かッスネ)


それも一瞬。今度は真顔で、

「その後フィアット社に売却されるんだな。そしてこのデルタはフィアット社傘下になって登場した車なんだ。つまり、弱小メーカーの拘りではなく、大手メーカーの元で生まれたデルタは、乗りやすに速さも兼ね備えていたわけだ!」

「なるほど!」

「Excellent!!」


「ま、結局ランチア社はフィアットグループの1ブランドとして統合や縮小を繰り返し、今ではイタリア国内でしか存在しないんだ。しかし、こいつはヴィンチェンツォやヴィットリオにとっては理想の車なのだよ!」

遠い目をしながら話を締めくくった。


「ランチア社の歴史はこんなもだが、わかったか?」

「勉強になったッス!」

「Daddyのウンテンがナツカシイ」

3人は清々ししい顔でデルタを眺めていた。


「こらぁ!!いつまでくっちゃべっとんねん!さっさと仕事しーやー!タイムイズマネーやでー!!」

事務所のドアが開きトミ子が叫んだ。


3人は蜘蛛の子散らした様にワタワタと仕事に戻る。

西長田はヤレヤレとばかりに首を横に振りつつ作業を続けた。


数日後、修理が終わったデルタはオーナーの元へ帰って行った。

「やはり良い車だ!再確認できてよかった!」

走り去る姿を眺め、満足そうに笑顔で頷く新之助。

「社長!電話でーす!!」

真雪の声に

「おう!」

と答え事務所に向かい歩き出す。


世界を制した〝ランチア・デルタHFインテグラーレ〞

この名車は速さを求めた天国のヴィンチェンツォ・ランチアにとって《夢の車》だろう。

次の車はアレ!アレよアレ!!

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