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とある車屋の日常。  作者: 和泉野 喜一
25/35

恋敵。

新之助のライバル登場!

レース当日

サーキット到着後、直ぐに準備に取り掛かる。

参加チームにはそれぞれピットが用意されていた。

「うむ。なかなか本格的だな!」

そうこうしていると、続々と参加者が到着し賑わってきた。


荷物の整理をしていると、

「しゃ、社長!大変ッス!」

トイレに行っていた有人が慌てた様子で戻って来た。

「どうしたのだ?」

「いいからこっちッス!早く!」

急かされながら後をついて行く。

「あれッス!」

「ん?・・・なっ!なんだと!?」

とあるピット。そこには1台の車があった。

「セブン160か!?」

「これって、ケーターハム・スーパーセブンすよね!?軽自動車なんスカ!?」

「うむ。コレはスーパーセブンの車体にスズキのエンジン載せて新車で売っている、立派な軽自動車だ!今日の参加者の車か?」


「そう。参加者だ。俺のとこの車だ。」

振り返ると1人の男が立っていた。

「貴様!」

新之助の顔が一瞬で強ばった。


「いよお、久しぶりだなあ。」

男の名は《財前 金治(ざいぜん かねはる)

新之助とは小学生からの腐れ縁で、車屋〝ゴールド・モータース〞を営んでいる。

2人は犬猿の仲であった。


「遊びレースにセブン160とは・・・相変わらず大人気ないのお。」

「あいにく今コレしかなくてねえ。只の遊び車だよ。」

「ほう。確か新車で350万円程したはず、それを遊び車とは豪気だのお。それとも只の金持ち自慢かな?」

「自慢するつもりはないが、そっちより儲かっているのは確かだな・・・ちなみにそっちの車は?」

「マツダAZー1だが?」

「はっはっは!そんな古いオモチャでレースに出ようとは。やる気あるのか?」

「ウチのAZー1は速いぞ?」

「いくら速くともポンコツじゃぁ6時間は持たんだろう。」

「それを言うならスパルタンなセブンではドライバーが疲弊してしまい、下位に終わるのでは?」

互いに笑顔をひきつらせていた。


「あんた準備は・・・あら、新ちゃんじゃない。お久しぶり!」

睨み合っていた新之助と金治へ1人の女性が声を掛けた。

「おう。ハルか!久しぶりだな!」

この女性は金治の妻でハル。金治と同じく新之助とは小学生からの幼馴染みであった。


「人の嫁を呼び捨てにするんじゃねえ!」

「うるさい!ガキの頃からこの呼び方だ!」

堰を切ったように口論が始まった。

オロオロする有人。

と、そこへ

「社長!何やってんですか!?早く準備してください!」

真雪の声が響いた。


「がるるるる!」

「うぬぬぬぬ!」

謎の呻き声で威嚇しあっていた2人をハルと真雪が引き離し連す。

「社長早く戻りますよ!」

「何でアンタ達はそんなに仲悪いかなあ?」


「レースで決着つけてやる!」

「望むところだ!」

最後まで喚きあっていた。


ピットへ戻るなり、

「今日のレースは何がなんでも勝つぞ!いや、最低でもセブン160より上へ行くのだ!」

鼻の穴を膨らませ興奮気味に言った。


「何かあったのか?」

「ゴールド・モータースの財前社長とケンカしたんですよ。」

「超恐かったッス!」

「Rivalネ!」

「財前さんと仲悪いんですか?」

「金ちゃんとハルちゃんは小学生からの付き合いやねん。2人共ハルちゃんが好きでなあ、取り合ったんや。結果2人はいがみ合う様になったっちゅうわけや。恋敵っちゅーなつやな。」

新之助の様子を不思議に思った西長田の質問に詳しく答えたトミ子。

そういうことか。と半ば呆れながら全員準備に戻った。


開始時間となりドライバーズミーティングが始まった。

①参加台数22台。

②一周約2分半のコースを6時間走り切る。

③ドライバー交代は自由。しかし最低3回のピットインが義務。

④車両にはラップカウンターが取り付けられ、何周走ったか記録される。

⑤6時間経過時点で最も周回数を稼いだチームが優勝。

⑥赤旗はその場で停車、黄旗は徐行で追い抜き禁止。


「では、30分後に予選を始めます!」

ミーティングが終わり、スタート準備に取りかかった。

予選は3周走り、一番速いタイムが採用される。


ドライバーは西長田。

「うっし!いっちょやったるか!」

過去に新之助と2人、レースをやっていたこともあるため腕に覚えがあった。

熱い声援を受け、アクセルを踏み込む西長田。

激しく攻めながらも、冷静にコースを見極めていた。


《チーム SHI・N・NO・SU・KE、タイム2分18秒。現在のトップです。》


「いいぞ!ポールも夢じゃない!」

「西長田さん凄ーい!」

場内放送に涌くチーム。

しかし、


《チーム ゴールド・モータース、タイム2分17秒。トップタイムです。》


「なにっ!?ぐぬぬぬ!」

遠くで歓声が聞こえた。

新之助がその方向を見ると、金治がドヤ顔でこっちを見ていた。


「西長田ー!最後の1周死ぬ気で踏めー!」

無線に向かい怒鳴った。

(んな無茶な・・・車が壊れたらどーすんだっ。)


ここで話は冒頭に戻る。

 そう。最後の1周と言っていたのは決勝ではなく予選残り1周のことだ。

金治には絶対負けたくない新之助は熱くなっていた。

だが、思い叶わず結果は予選2位。


「なっはっは!ポンコツもよく走るじゃないか!?」

「がっはっは!セブン使って1秒しか差をつけられないとは、車が壊れていたのかな!?」

新之助と金治は相変わらず火花を散らしていた。


そして、いよいよ決勝レースが始まる。


次話、いよいよ決勝レーススタート!

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