ご令嬢なの!?
今回は塗装作業についてが中心です!
香菜の目は輝いていた。
待ちに待った初の愛車(仮)が目の前にあったのだ。
最初に欲しかった1955年~1977年のモデルではなく、2000年代のモデルではあったが満足だった。
「これ、いつから乗れますか!?」
「うむ。諸々の手続きと、簡単な整備があるからな。2週間あれば確実だ!」
「あ!またいる!香菜あんた仕事は!?」
車が入ったと聞いて飛んできた香菜を一喝する真雪。
しかし全く聞いていなかった。
「でもこれ白ですよねー?」
「ん?それはそうだが?」
「あの方の車は黄色だったしなあ」
「どっちかと言うとクリーム色だな。」
「じゃこれもクリーム色にしましょう♪」
「なにっ!?100万円ではそこまでは無理だぞ!」
「あといくらくらいかかるんですか?」
「40万円はいるな!」
「40万円かあ・・・はい♪」
バッグを漁り封筒を出す。
「なっ!なぜそんな金を持っている!?」
「あ~これ?パパに白じゃなくて黄色がいいって言ったらくれたんです♪」
「貴様・・・まさか・・・」
「あ~社長。香菜が言っているのは変な意味のパパじゃなくて、本当のお父さんですよ。香菜の家って建築会社やってるからお金持ちなんですよ。」
一瞬戸惑った表情をした新之助を見て、真雪がフォローを入れた。
「では何故100万円なのだ?」
「自分の初めての車は自分で買いたいじゃないですか!」
その言葉を聞き少し香菜を見直した新之助。
「う、む。」
初愛車の色を替えるお金はいいのか?と思ったが、本人が良いと言っているので受けることとした。
さっそく塗装に取り掛かる。
まず、ドア、ボンネット、トランク、フェンダーといった外装部品を外す。
外した部品とボディの元の塗装を剥がす。
小さな凹みをパテで修正し、ボディを滑らかにする。
油分をしっかり洗い流し下地を塗ると、再び研ぐ。下地は粒が粗いため、このまま塗装するとザラザラとした手触りになってしまうためだ。
ここで色を調合する。
今回はクリーム色だが、黄色に白を混ぜるだけの単純な物ではない。
色に深みや鮮やかさを出すために少量の赤やオレンジを加える。
色が出来上がれば塗装だ。
下地は灰色であるため、クリーム色をこの上から塗ると少し暗くなる。
色を綺麗に出すため、まずは白で塗る。
外した部品からムラにならぬ様に、且つ大胆に塗料を吹き付けてゆく。そしてボディへ。
塗り終え、乾かすと光を当てムラなどが無いかチェックする。
あれば再び同じ手順で塗り直す。
ここまで終えるといよいよ本塗装だ。
クリーム色を塗ってゆく。
薄く、2度塗りをすることで綺麗な色となる。
1、2日置きシンナーが抜けるのを待つ。
最後にクリアを塗り、艶を与える。
塗装作業開始から約2週間後
「うわぁ♪綺麗~♪」
クリーム色となった愛車(仮)にうっとりしている香菜。
「なかなか良い色だろう!?我ながら会心の出来だ!がっはっは!」
ドヤ顔の新之助。
「正に憧れた車です♪ありがとうございます♪」
と言いながら香菜は新之助に抱きついた。
「がーはっはっはっ!」
鼻の下を伸ばしながら高らかに笑う。
「香菜、なにやってんの?」
「いんこーッス!」
「いや嫁にすんじゃね?」
「仲人は任しとき!」
「BOSSハ、ワカイがスキ。」
「式場はどこがいいでしょうね?」
振り返ると勢揃いしていた。
その目は一様に冷ややかであった。
「ち、違うのだ!変な意味ではないぞ!」
「私はいいかも~♪」
「こら引っ付くでない!」
そこへ、旧チンクへ乗り兄がやって来た。
「なんだ、やっと嫁見つけたか?」
降りるなりニヤニヤしながら言う。
「お前たちいい加減にしろー!」
そんなやり取りの傍らで、陽を浴びキラキラと輝く2台の新旧チンク。
〝フィアット500〞
国民的怪盗が乗ることで、よく知られた1台。
時を経て生まれ変わっても、一目でそれとわかるデザインを持つ車は数少ないだろう。
この車もまた名車だ。
アバルトチューンに乗ってみたい!!




