ランチ?アルデンテ?グラタン?
1台目はランチアデルタ!
乗ってみたい!
ココ、〝Garage SHI・N・NO・SU・KE〞は郊外の幹線道路沿いにある。
表には5台の中古車が並び、その奥には事務所がある。
中にはカウンターテーブルにお客様用の椅子が3脚、新之助、真雪、雄二、トミ子の机とコピー機。
壁には料金表の他に、車のポスターが貼ってある。
並んだ机を抜けると1枚の扉がある。
この奥が工場だ。
リフトが2台。
他に3台分の作業スペースと塗装ブース。
工具棚や溶接機など修理に必要な道具が所狭しと並んでいる。
一角には休憩室があり、皆の憩いの場だ。
「じゃあ、行ってきます!」
「ガンバッてください!」
「ほな、真雪ちゃん。ちょっとの間、店番頼むで!」
「いってらっしゃい♪」
雄二は商談のため、トミ子は銀行へと外出して行った。
お昼近く、書類整理をしていると1台の車が入って来た。
(凄い音だなあ)
そう思いながら事務所の外に出て迎えようと席を立った瞬間、奥の扉が開き凄い勢いで新之助が外へ飛び出して行った。
「ちょっ!社長!」
何が起きたかわからないながら、とりあえず追い掛けた。
外に出ると新之助が頭を抱えていた。
さらに声にならない声で喚いている。
「社長!ちょっと!あ、スミマセン!いや、いらっしゃいませ!」
慌てて頭を下げた。
「こんにちは。あの、車を診て貰いたいんどすけど。」
来店したのは40代の男性だ。
「はい!では、詳しくは店内でお聞き致します・・・」
案内しようとした瞬間、
「お客さん!コレ!ウチで診ていいの!?」
「あ、はい。そのつもりで来たんですけど・・・」
その言葉を聞き、新之助は両手を広げ天を仰いだ。
「「・・・」」
その姿に客の男性と真雪はポカーンと口を開けて棒立ち。
「はっ!スミマセン!ささっ、こちらへどうぞ!」
新之助を放置し、店内へ案内した。
カウンター越し、対面に座り話を聞く。
「走ってたら変な音が・・・」
「たまに振動が・・・」
客の言うことを全て書き留める真雪。
すると満面の笑みで入ってきた新之助が自分の机に座った。
気にせず客から聞き取りを行い伝票を作成。
詳しくは点検して連絡すると伝えて、代車の用意をしようと席を離れた瞬間。
「お客さん!あの車どこで手に入れたの!?」
新之助が勢いよく立ち上がり質問した。
「10年くらい前にたまたま見つけたんですよ。」
客の男性も嬉しそうに答えた。
しばらく2人で話し込んた後、男性は代車で帰って行った。
「うぉっしゃ!やるぞ!!」
気合いを入れる新之助。
「社長~。なんなんですか?そんなに張り切っちゃって。」
真雪は不思議そうに聞いた。
「なっ!君はあの車を見て何とも思わんのかね!」
「さぁ~?何か変わってます?」
「この車はランチア・デルタHFインテグラーレだぞ!」
「ランチ?アルデンテ?グラタン?お腹が空きそうな名前ですね。」
「ちっがーーう!!ランチア!デルタ!HF!インテグラーレ!!」
[ランチア・デルタHFインテグラーレ]
全長:3900mm
全幅:1695mm
全高:1380mm
ホイールベース:2475mm
エンジン:直4DOHCターボ
排気量:1995cc
最高出力:185ps/5300rpm
最大トルク:31.0kgm/3500rpm
サスペンション:前後ストラット
トランスミッション:5MT
車重:1200㎏
「そもそもランチアはイタリアのメーカーで、ジウジアーロのデザインだ。中でもコレは88年に登場し、88年、89年とWRCを連覇した名車だ!」
「ふーん。なんかそんなに凄そうな車には見えないですね。ま、いーや!社長、これ伝票です。あとよろしくお願いします♪」
(この話は長くなりそうだ)
と思った真雪は一切興味を示さず事務所へ入った。
新之助は車を工場へ移動する。
「有人!ジェミー!リフトに上げるぞ!」
声の方を見た2人は目を輝かせた。
西長田も興味ありげにやってきた。
「デルタじゃないッスカ!」
「Beautiful!!」
「へぇ~。珍しいっすね。」
車を観察するように周囲をグルグルと廻る3人。
「ほら!仕事だ仕事!」
一喝入れ、車をリフトへ。
「さぁ~。デルタちゃん♪どこが悪いのかなぁ~?」
新之助は呟きながら車の下へ潜った。
デルタ編続きます!