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とある車屋の日常。  作者: 和泉野 喜一
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持つべきものは兄?

チ・ン・ク♪

「まず1つ目はオリジナルチンクを造る。幸いなことにイタリアではまだ部品が流通しているからな。しかし時間と金が掛かる。

2つ目はチンクのボディにスバル・サンバーのエンジンを載せた個体が存在する。これならば普段乗りとして使えるが、数が少な過ぎることで手に入らない。だったら造ってしまおうというもの。しかし、これまた金が掛かる。」

「えー!?無理じゃないですか~!」

話を聞いていた香菜は泣きそうな声で言った。


「うむ。ここまでは現実的ではない。だが・・・どうしてもこのモデルでないとダメか?現行モデルでは納得できぬか?」

「ん?社長、現行モデルって今も造ってるんですか!?」

驚いた真雪が声をあげた。

「2007年から現代版チンクが生産されているが?」

「え?新しいのがあるんですか!?どんなの!?」

新之助は中古車雑誌の違うページに乗っていた写真を見せる。


「これだが?」

「おー!可愛い♪」

「見た目もそんなに変わらないじゃない!これならいくら位なんですか?」

「うむ。現代の中古車だからな。ピンキリだ。」

「じゃぁ100万円くらいで買えるんですね?私これにする♪」

「古いのに拘りがあるんじゃなかったの!?」

「まあいーじゃん♪」

自由な香菜に呆れる真雪であった。


「では、予算100万円で現代版チンクを探すということでよいかな?」

「お願いします♪」


時間は前話冒頭に戻る。

香菜から依頼のあったチンクを買うためにオークションへやってきた新之助。

「やはり良いものは高いな。」


同じ車でも高い安いはある。

それは車の状態によるものだ。

事故歴の有無。走行距離。それまでの整備記録の有無。

その他に長年の経験によるものでなければわからないこともある。

車選びに於いて失敗する点はここにある。

いくら綺麗に見える車でも中身がどのような状態かを知ることは難しい。

長く車を見てきた人間の経験に勝るものはないのだ。


新之助の車選びは慎重だ。

自分が選んだ車で客が満足出来るよう、限られた条件内で最良の物を選ぶ。

しかし今回に限っては少し困っていた。

「100万円でチンクはちと厳しいか。」

もちろん安請け合いしたわけではない。

可能だと判断したからだ。


「仕方がない。不本意だが()()()へ行くか。」

会場をあとにし車を走らせた。


1時間程で目的地へ着いた。

そこは一軒の民家。

「兄貴いるかー?」

ドアを開け大きな声で言った。

ここは新之助の実の兄の家であった。


「あら、新ちゃん。あの人なら車庫よ。」

兄の妻、つまり義理の姉が出迎えた。

言われた通り車庫へ行くと、そこには数台の車が並んでいた。

中には香菜が欲しいと言ってきたチンクもある。

目線を移すと1台のボンネットが開いており、男性が整備をしていた。


「相変わらずイタ車ばかりだな!」

「わっ!」

ゴンッ

「イテッ!」

突然聞こえた新之助の声に驚き、頭を打った。

頭を擦りながら振り向く。


「なんだ。お前か!」

「がっはっは!久しぶりだな!」

彼こそ新之助の兄である。彼もまた大の車好きだった。

というより、新之助が影響を受けたのだ。


「おう。兄貴。前にチンクをどうのとか言ってたよな?」

「ん?俺が〝売る〞と言ったら、お前が〝いらん〞と即答した車のことか?」

嫌味を交えながら言った。

「そう!それだ!」

「値段はいいから、大事にしてくれる客に売ってくれと頼んだだけなのに・・・そんなに面倒臭い注文だったか?」

ぶつぶつ言いながら工具を置く。


「あの時はチンクを売るというから《とうとう秘蔵っ子を手放すか!?》と思い来てみたら、現行モデルだったので興味が失せたのだ!がっはっは!」

「あれを手放すわけないだろう!」

「身辺整理する時は直ぐに言うのだぞ!ここにある車は全て責任を持って大事にするからな!がっはっは!」

「ったく、お前というヤツは・・・」

新之助の言葉に呆れ果てた。


「で、まだあるか!?今なら直ぐ買うぞ!」

「もう無いぞ。」

「なにっ!?どこにある!?」

「さあ?どこにやったっけな?


惚ける兄にイラッとし、

「吐け!」

首を締め兄を問い詰め前後に揺さぶる。

「おおおおおい!」

「さあ吐け!」

「言う!言うから!」

新之助の馬鹿力に観念したのだろう。

「お前がいらんと言うから、知り合いの店で委託販売してもらっている!」

正直に答えるが、

「どこの店だ!?俺が買う!取り下げろ!」

「わかった!わかったから!」

興奮した新之助は手を緩めず、今度は左右に振り回した。


「新ちゃん、お昼食べてく?」

ふいに聞こえた義姉の声に

「うむ。頂こう。」

と答えパッと手を離す。

目目を回し床に倒れる兄。

「本当にお前というヤツは・・・」

弱った声で呟いた。


新之助が昼食を頂いている間に兄が委託先へ連絡を取り車を引き取ることとなった。


「では、もらって行くぞ!」

「大事にする様に言ってくれ。」

「うむ!承知した!」

新之助は希望通りのチンクを手に入れ店へ向かった。



最近走っているのを良く見ます!

小さくて可愛いです♪

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