憧れの怪盗
突然来店した真雪の友達!
「むう・・・これで170万円か!?」
ここはオークション会場。
新之助はある車の注文を受けて車を買い来ていた。
遡ること数日前。
新之助と真雪の2人は事務所で閉店準備をしていた。
と、そこへ
「こんばんは!」
1人の女性が来店した。
20代前半であろう。
長く明るい茶色の髪の、スラリとしたOL風の女性だ。
「あ、お客さん、申し訳ないが今日は終わっ・・・」
新之助が断ろうとした瞬間、
「香菜!?」
真雪が声をあげた。
「やっほー♪久しぶり♪」
なんと女性は真雪の友達だった。
「突然どーしたの?」
「欲しい車があるの!超可愛いやつ!」
少し興奮気味に答えた。
「社長少しだけいいですか?」
「うむ。構わんぞ!」
2人は香菜の話を聞くことに。
「車好きだったっけ?」
「ぜーんぜん!でもその車だけは別!なんたって憧れの人が乗ってる車だもん♪」
「はぁ?じゃあ何?同じ車買って、お近づきになろうとか?やめときなって。」
真雪は呆れ、首を横に振りながら言った。
「あ、それは無理!お近づきになることが無理なら、諦めるのも無理!だって子供の頃からの憧れの人♪」
「ちなみに誰なの?」
「うっふっふ♪ヒントあげる!赤いジャケットの怪盗♪」
「アニメかい!」
ココで働き始めてから真雪のツッコむ速さに磨きが掛かってきた。
「あ♪わかった?あの黄色くて小さい車が欲しいの!」
「あんた本気?」
「もちろん本気!」
真雪は溜め息を一つき、」新之助の方を見た。
「う、む。」
少し困惑した様子の新之助。
「欲しい車はわかった。率直に聞く、予算は?」
「100万円くらいならなんとか!」
元気よく答える香菜。
しかし新之助は腕を組み、険しい顔で黙ってしまった、
「ダメなんですか?」
不安になった香菜が聞く。
「ダメということではない。ただ限りなく不可能に近い。」
「社長。どういうことです?」
「うむ。説明しよう。まず、欲しい車はコレだろう?」
一冊の本を取り出し見せた。
「あ♪コレ!コレです♪」
「わっ!小っちゃい車!」
「フィアット500という車だ。」
[フィアット500]
全長:2970mm
全幅:1320mm
全高:1325mm
ホイールベース:1840mm
エンジン:空冷2気筒
排気量:479cc
最高出力:15ps
サスペンション:F/シングルウィッシュボーン
R/ダイアゴナルスイングアクスル
トランスミッション:4速マニュアル
重量:470kg
「コレは1957年~1977年に造られたイタリア車だ。チンクェチェントとはイタリア語で500という意味だ。50年代のイタリアは戦争に敗北したことで、主な工業はバイクや自動車産業へと移った。そんな中登場したのがこのチンクェチェントだ。当時は自動車を買える人が少なくバイク中心だったのだが、安価なこの車は手が届き易く爆発的に売れた。生産終了までに400万台生産された。」
「ほえ~。真雪の言う通り、社長さん凄~い!」
目を見開き感心しきりの香菜。
その言葉に少し照れていた新之助だが、
「これが毎日だとねぇ・・・」
香菜とは真逆に呆れている真雪。
「む?車屋が車に詳しくて何が悪いのだ!?」
開き直る新之助に、
「詳しいを通り越してます!」
「むう!」
睨み合う2人。
「そ、それより限りなく不可能に近いってどういうことですか?」
割って入る様に香菜が聞く。
「ん?ああ、それは、まず数が少ないからだ。これを見てくれ。」
新之助は中古車雑誌を取り出した。
「値段の所に《ASK》と書いてあるだろう?これは応相談。値段は相談次第って意味だ!」
「じゃぁこっちが100万円で買いたいって言って納得してくれたら売ってくれるってことですか?」
香菜はかなり楽観的な性格であるようだ。
「買いたい側と売りたい側の額に折り合いがつけばスムーズに売買が成立する。なぜならば、その過程でお互いに価値がわかる人かどうか判断できるからだ!つまり目利きと知識と経験で、相手の考えを読み解くことができなければならない。」
「でも、社長さんなら大丈夫ですよね♪」
「そうなのだが、まだ問題が2つある。まずこの予算では足りない。次に手に入ったとしてだが、扱いが面倒臭い。エンジンを始動するにも手順があるし、故障も多い。」
「話を聞いてたら不安になってきた・・・憧れの車は憧れのままの方がいいのかな?」
香菜は項垂れていた。
「うむ。手がないことも無いのだが・・・」
「どんな手ですか!?」
新之助は提案するのであった。
筆者も憧れました!特にカリオストロの城が好きです♪




