ボンド
ほのぼの第1弾[愛車!]同じ時間軸の話です!
「うーむ。どれも見事な出来映えだな!」
新之助と雄二はモーターショーに来ていた。
しきりに唸る新之助。
所狭しと並ぶ車。
そのどれもが綺麗で目移りする。
車の傍らには美しい女性が立ち、華を添える。
会場を歩いていると、
「おや?新堂社長ではないですか?」
振り返るとそこには年配の男性がいた。
「おお!これはお久しぶりです!その後お車の調子は如何ですかな?」
「お陰様で快調そのものですよ。」
「それはよかった!あ、コレ、ウチの社員です!」
「槇田と申します。宜しくお願い致します。」
雄二はスッと名刺を出した。
「これはこれはご丁寧に。」
「雄二!この人はな、K大学の教授で世界的に有名な自動車工学博士だ!コレクターとしても有名でな、それは一見の価値があるぞ!ついでにこのイベントの実行委員長でもある!」
「大袈裟ですよ。大したことはないですから。」
「そう謙遜なさるな!」
男性の背中をバシバシ叩く新之助。
(偉い人なんでしょ!?)
雄二の思いとは裏腹に仲良さげに話す2人。
「今日は視察ですか?出展リストにお名前は無かった様ですが?」
「はい。今日は取引先へのご挨拶と、今の流行りを知るための視察・・・というのは建前で、ただ単に新堂が来たかっただけです。」
雄二はそう答えると新之助を見た。
「お!ハコスカ!」
「こっちはコスモか!」
右へ左へ走り回っている。
「あっはっは!相変わらずですね、あの方は。」
「新堂とは長いんですか?」
「私の教え子ですよ。」
「えっ?あ、それでココに来たがったんですね。」
「社長ってどんな学生だったんですか?」
「それはそれは優秀な学生でしたよ。」
そんな風には見えないと思ったが、口に出すのはやめた。
「それはそうと新堂さん。今度別のイベントを催すのですが、そこへ私の車を展示しようと思っているのですよ。そこで、また貴方に診て頂きたいのだが。」
「お任せくだされ!また、というとアノ車ですかな?」
「そうです。数あるコレクションの中でもアレだけは特別ですから。」
男性はニヤリと笑った。
「それと、良ければ貴方も1台展示しませんか?」
「宜しいのですか!?実は先生に見て頂きたい車があるのですよ!」
「ほう。それは楽しみですね。」
「楽しみにしていてくだされ!」
今度は新之助がニヤリと笑う。
「では、詳細は後程。」
「承知しました!」
そう言うと男性は去って行った。
「社長。あの方の車って何ですか?やっぱり凄く希少な車なんでしょうね。」
「うむ。英国の名車だとだけ言っておこう!」
「それはそうと。K大出身なんですね。」
「・・・中退だ。」
「・・・」
イベント終了後、男性の自宅へ。
「この車です。お願いしますね。」
「コレは!ジャガーEタイプですよね!?」
「そうだ!よく知っているな!」
[ジャガー・Eタイプ]
全長:4440mm
全幅:1650mm
全高:1220mm
ホイールベース:2440mm
エンジン:直6
排気量:3781cc
最高出力:265ps
最大トルク:36kg-m
サスペンション:F/ダブルウィッシュボーン
R/ロワーウィッシュボーン
トランスミッション:4速マニュアル
重量:1223kg
「こいつは1961年~1975年まで造られた車だ。このボディラインは世界一美しい車と言われている!こいつはクーペだが、オープンボディも存在するのだ!生産中に3回モデルチェンジが成され、初期は3リッター直6だったエンジンは最終的に6リッターV12になったのだ!ちなみに映画007のボンドカーとしても有名だな!」
「観ましたね~!007!私はアストンマーチンDB5が好きですね!」
「うむ!あれも名車だな!しかし、ボンドカーと言えばトヨタ2000GTだろ!」
「いやいや、Eタイプが1番格好いいですよ。」
3人の間には火花が散った。
「では、お預かりしますぞ!」
「あれ?でも昔は・・・」
新之助は男性の顔の前にスッと掌を出し、言葉を遮った。
「あの頃とは違います!今回こそは!」
乗り込もうとする。
「ちと狭いな。」
必死に乗ろうとする。
「足が!」
ジタバタともがく。
見かねた雄二が言った。
「・・・社長。私が運転します。」
「うおーー!またEタイプに乗れないのかーー!」
身体が大きい新之助は今も昔も入らないのであった。
世界一美しい車です!
乗ってみたい!




