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とある車屋の日常。  作者: 和泉野 喜一
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西長田という漢。

まほのぼのエピソード第2弾です!

ある年の暮れ、全員で事務所の大掃除をしていた。

「社長このカタログ捨てていいか?」

「うん?おう!頼む!」

西長田は袋に詰めて表へ捨てに行った。


真雪は新之助の机の周りを片付けている最中、ある物に気付いた。

「アルバム?」

何気に開いてみる。

そこには古い写真があった。


「これって社長と・・・西長田さん!?」

その声に全員一斉に飛んで来た。

「社長変わんないなぁ~(笑)」

「西長田さん若いッスネ!」 

「Oh!RegentStyle!」

「なんや!ヤンチャしとんな!」

「この一緒に写っている車はアメリカ車ですか?。」


「おう?これは店を始めた頃だな!」

「「「その話聞きたい!」」」

興味津々の5人。

仕方なく話すことに。

「遡ること20年前くらい前か・・・」



西長田は夜中に仲間と遊んでいた。

すると1人の男がラーメン屋から出て来るのが見えた。

「おい。あれ。」

「あん?」

「カモるか!」

軽い打ち合わせをして、此方に歩いて来る男をニヤニヤしながら待った。


男は車雑誌を読みながら歩いていた。

夢中になっているのか自分達の存在には気付かぬまま、通り過ぎようとした。

「オッサン!ちょっと待てや!」

「おう!ちょっとツラ貸せ!」

凄んで声を掛ける。

「ん?何か用か?」

面倒臭そうに答える男。

「金くんねぇ?」

その言葉に

「はぁ?」

と鼻をほじりながら答えた。


すると突然

「うお!シボレーインパラ!しかも59年式か!?お前のか!?」

西長田と仲間は突き飛ばされた。

車へ突き進む男。

「こら!触んな!」

「聞いてんのかコラ!」

「テメー!ざけやがって!」

西長田は男の背中を殴った。

「うおっ!」

しかし殴った手の方が痛かった。


車を覗き込んでいた男はユラッと振り返る。

「痛いではないか・・・」


そう言うと男は静かに右手を上げた。

身長190㎝近くはあろう。

振り上げた右手は2メートル以上の高さにあった。

西長田は初めて恐怖した。

これまで幾度も喧嘩をしてきたが味わったことの無い恐怖。

(な、なんだコイツ・・・)

それまでふざけた態度だった男が鬼の形相で壁のように立ちはだかっていた。


動くことができず、その拳を見上げることしか出来ない。

仲間も同じだった。

そして、拳が落ちてきた。

同時にドンッという音が頭に響き、その瞬間意識が飛んだ。


それからどれくらい経っただろうか?

西長田は目を覚ました。

傍らでは仲間2人も()()()いる。

「ったく何なんだアイツ・・・馬鹿力過ぎだろ!」

車に寄りかかる様に座り、呟きながらタバコを咥えた。

左の頬が痛む。

「歯ぁイッたんじゃねえか?」


するとグラッと車が揺れた。

「何だ!?」

「うむ。目が覚めたか!少々大人げなかった!スマン!がっはっは!」

何と男が車に乗っていたのだ。

「てめ、何で人の車に乗ってんだ!?てゆーか、何でまだいるんだよ!?」

「うん?貴様らが失神していたからな、放っておくわけにもいかんだろう!」

「失神させたのはテメーだ!」

「そうだったか!スマン!がっはっは!」

もう何も言うまいと思った。


しかし、男は続ける。

「これは良く整備されているな!愛情を感じるぞ!」

あくまでもマイペースな男に西長田は諦めにも似た気持ちで答える。

「そりゃ俺がガラクタ集めて組んだんだよ。」

「何っ!自分で作ったのか!?」

「車買う金なんてねぇからな。解体屋行きゃ部品なんてゴロゴロしてるし。」

なるほどと呟きながら改めて車を覗き始める男。


(本当何なんだコイツは・・・変なのにカラんじまったぜ)

なかなか起きない仲間を見ながら思った。


「貴様はなぜインパラなんだ?」

「はぁ?たまたまあったからだよ!」

「うむ。ではインパラのことを教えてやろう!」

男は()()()()()()()()語り出した。

「インパラのデビューは1958年だ!元々ベルエアのインパラスポーツパッケージという1グレードにしか過ぎなかったが、1959年登場の最上級モデルにインパラの名前がつけられたのだ!フルサイズのボディにテールフィンはこの時代の象徴だな!」


['59年式シボレー・インパラ]

全長:5357mm

全幅:2022mm

全高:1372mm

ホイールベース:3023mm

エンジン:V8

排気量:4638cc

最高出力:185ps

サスペンション:F/ウィッシュボーン

 R/半楕円リーフ

重量:1800kg


「たなみに、この2代目は59年と60年しか作られなかったのだ!」

「あんた、詳しいな。」

「うむ。これくらいは常識である!」

「変なヤツだな。」

西長田はフッと笑いタバコを消した。

「貴様、仕事は何している?」

「別に何もしてねぇよ!」

「そうか。ではウチへ来い!車の知識は無いようだが腕はいいからな!がっはっは!」

突然の誘い。

「なっ!勝手に決めんなよ!だいたいテメー何者だ!」

「俺か?俺は車屋の新堂だ!《新堂 新之助》だ!」

「車屋だったのか・・・どうりで詳しいわけだ。」

新しくタバコに火を着ける。

フゥーと煙を吐き、

「・・・しゃーねー。やることもねーし、やってやるよ。ちゃんと給料出せよ()()。」

ニヤッと笑い承諾した。

その左頬は腫れ上がっていた。


「うむ。貴様の頑張り次第だな!何せ明日から始める店だからな!がっはっは!」

「はぁ!?だったらまだ車屋じゃねーじゃねえかよ!?」

「うむ。細かいことは気にするな!して、貴様名前は何という?」

「もう、いーよ・・・」

こうして2人は〝Garage SHI・N・NO・SU・KE〞を立ち上げた。

その後インパラは店の看板として展示していたことで、多くの客を引き寄せた。

しかし、どうしても欲しいという客に譲ることに。

2人は思い出として最後に写真を撮ったのだった。


「と、いうのが西長田との出会いだ!」

「へえー。何か感動的!」

「運命の出会いッスネ!」

「ニシナガタサンCOOL!」

「くっさい話やな!」

「男の友情ですね!」

話を聞いて口々に感想を言う。


そこへ、

「社長、終わったよ。」

と、西長田が入って来た。

全員西長田を凝視する。

「な、なんだよ?」


クルッと振り返りヒソヒソと話し出す5人。

「でも見た目通り、昔[悪]でしたって感じするよね。」

「ヤンキーはいくつになってもヤンキーッス!」

「デモインパラニアウヨ!」

「奥さんは知ってんのやろか?」

「暴走族ではなかったんですかね?」


「あ!テメー!また余計なこと喋ったな!」

何かに気付いた西長田は新之助の首を締めた。

「し、知らんぞ!俺は知らんぞ!」


必死に惚ける新之助。

「テメーらも掃除しろーー!」

西長田は顔を真っ赤にして叫んだ。


怒っているのか、恥ずかしいからなのかはわからない。


シボレー・インパラは2人にとっての青春そのものだ。

腐れ縁ってありますよね(笑)

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