鳥将軍の二合殺しは深い闇 その6
「カネに糸目はつけない?」
大将の目がスルドク光った。
炭に火を移し、焼き台の下に放り込む。動きが速い。
炭火の上に隙間ができないくらいの串を並べ、扇風機のスイッチを入れた。
昔はうちわであおいでいたらしいけど、今は扇風機を使って手間を省いている。
最近の患者不足のせいで、俺は節約生活をしている。もう1か月くらい、肉を食べていない。
焼き鳥のいい匂い……、もう、たまりません。爺ちゃんは酒に夢中だ。焼き鳥は俺がいただく!
「やっぱり、炭焼きは、おいしいですね」
「そうだろ」
「備長炭ってやつですか?」
「そう。中国製だけどね」
「中国? 中国がどうしたぁ?」
ダメだ。爺ちゃん、完全に酔っぱらっている。
「史門は何をやっておるのじゃ。史門を呼べ、史門を!」
「父さんは、いま、中国ですよ」
「どうして?」
「どうしてって、鍼の修業でしょう。爺ちゃんが自分でそう言ったじゃないか」
「史門の腕は確かじゃ。今さら鍼の修業でもあるまいて」
「違うの? じゃあ、どうして父さんは中国に行ったんだよ?」
「決まっておるじゃろ。助けるためじゃ」
「助けるって、誰を?」
「うるさい。ワシは寝るぞ」
爺ちゃんは座敷の上で一升瓶を抱えたままイビキをかき始めた。
「権蔵の呑みっぷりは、相変わらずだねぇ。惚れ惚れするよ。店で一番高い酒を二本も飲むとは、あっぱれ日本男児」
「一番高い酒?」
「そう。権蔵さんは、お目が高い」
恐るべし、二合殺し。




