表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

狩嶋鍼灸院は今日もヒマ

俺の名前は狩嶋伸。自分で言うのもなんだけど、俺は天才鍼師だ。


どういうふうに天才かというと、俺には経絡が見える。患者の体に意識を集中すると、体が透明になって、赤いスジが見えてくる。それが経絡。


ついでにいえば、俺にはツボも見える。病気に罹ると経絡の上に黒い影ができる。影じゃなくて、白い光が見えるときもある。その影や光が見えるポイントがツボ。


黒い影が見えるときは、父さん直伝の捻転瀉法。

白い光が見えるときは、挿気補法を使う。


瀉法と補法。このたったふたつの手技だけで、どんな病気だって治せる。今まで、俺の鍼で治らなかった患者はいない。まあ、俺は天才だから当然。


患者が来る。ツボが見える。鍼を打つ。それだけで、すべて解決。料金は高め。

それが俺流。

「お客さんですよ」


「三人目? めずらしいな」


「三人でめずらしいなんて言ってたら、本当にココ、潰れちゃいますよ」


「そういうことは、あとにしろ。お客さんに聞こえるだろ」


「はーい」


 美織のやつ、経営というものがわかっていない。


 鍼灸院はイメージが大切。お客が少なくても、繁盛しているフリをする。それが鍼灸院の鉄則。


「あっ、三波さん、お久しぶりです。今日はどうなされました?」


 言葉づかいは、ていねいに。これが全ての基本。


「寝違えちゃってね、このあたりが痛むのよ」


「あー、ここですね。少し赤くなってますよ」


「そうそう、そこ」


「もしかして、温めちゃいました?」


「いや、何もしてないよ」


「そうですか? おかしいな、これは温めた感じだけど……」


「血行が良くなると、治るのが早いかな、と思って、熱い風呂に入ったけど、それって関係ある?」


 それだよ、それっ!


 でも、上から目線のお説教は厳禁。中卒の俺がそんなことしたら、三波さんみたいなガンコ爺さんは二度と来てくれなくなる。


「寝違えたときは、冷やしたほうがいいみたいですよ。お風呂に入ると患部も温まって、かえってよくないらしいです」


「そうなの?」


「はい。でも、鍼を打てば、すぐに良くなりますから、安心してください」


「まあ、とにかく、よろしく頼むわ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ