表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

1話 出会い編

彼は口が悪いのでご注意下さい。

貶し系ギャグなので心の広い人推奨です。


「僕と付き合って下さい」

「あ、はい。いいですけどどこまでですか?」

「やったぁあああ!!」


下校中いきなり声を掛けられ答えれば、なぜか喚声をあげられビビった。

遅めの時間でそれほど生徒の姿がないことは幸いだが、昇降口で喋っていた二人が驚いてこっちを見ている。

やめて恥ずかしい!

どうすればいいのか困惑していると彼が正気に戻ったようで話し掛けてきた。


「あっ、あっ! 一緒に帰ってくれるの? 嬉しいなー」


彼は空を見上げて飛んだり跳ねたりしてひとしきり喜んだ後に私を見て言った。

ニコニコと本当に嬉しそうに笑うその顔をよく見れば驚くほど美しく、一瞬言葉を失った。

日本人の中でもそういないだろう真っ黒な髪に彫刻のように整った顔、優しげで爽やかな雰囲気が彼をキラキラと光らせていた。


...ハッと正気に戻り思うが、彼は何を言ってるんだろう?

私は困り、ちょっと小首を傾げて彼を見れば不思議そうに言われる。


「え? どこまでって家までってことじゃないの?」


ううん? えぇと、私はこの人の家まで付き合えばいいの??

うーん、ちょっと荷物持ちとか職員室行くの付き合ってとかなら分かるけど、初対面の人と一緒に帰るのはどうかな~...

そんな風に考えこんでいると彼が泣きそうな顔で見ていることに気付いた。

...なんで泣きそうなの? 私が悪人なの??


「じゃ、じゃあ一緒に帰りましょうか」

「うん!!」


パァッっと花開くような満面の笑顔が眩しいです。

何がそんなに嬉しいの??

モテたこともこんな美しい人と接触したこともないから、二人きりで一緒に帰るなんて緊張する。

そうしてよく分からないまま一緒に帰ることになりました。





「...えーと、あなたの家もこの辺にあるの?」

「あなたじゃなく謙一って呼んで」

「えーと、謙一君の家があるのはこっちでいいの?」


ずっと私と一緒の電車に乗ってるから不安になって聞いてみたら、嬉しそうにニコニコしながら名前呼びをお願いされた。

謙一君っていうのね、この人。

何気に今名前知ったよ。ってかお互い名前も知らないのに一緒に帰るって...


「え? 違うよ。

僕の家は○○駅で乗り換えて○○駅で降りて、そこからタクシーで15分くらいで着く○○○○市にあるよ」


おぃいっ! 全然場所違うじゃん!!

しかもタクシーで帰ってんの!? 何気に金持ち!!


「何でこっちに来たの!?」

「え? だって君の家まで送ってくから。違うの?」


そう言って悲しそうな顔で私を見てくる。

いや、まさか私を送ってくれようとしてたなんて気付かなかったから。

やー、親切な人だね。


「いや違くない...ってか謙一君って優しいんだね。

私を送ってくれようとする人なんて普通いないから」


言って自分に自嘲する。

私はお世辞にも美人じゃないしよく言って普通、悪く言えばブスだ。

その上デブだ。ポッチャリじゃない断言するデブだ!

そんな私を心配して送っていこうなんて言ってくれる人っていないから、正直言うとすごく嬉しい。


「そうだよねー、百合子を送ってこうなんて物好き僕以外にいるわけないもんね」


ん? 今なんか侮辱されたような...? ってか私の名前呼んだ!?


「私の名前!!」

「ん? そりゃ好きな人の名前くらい知ってるよ」

「は? ...好きな人?」


名前のことを聞いたらなぜか「好きな人の名前」というおかしな言葉が返ってきた。

どれほど首を捻っても言われた意味が理解できず聞き返すが、なぜか朗らかな返事がきた。


「あはは、実は僕って2年前から百合子のこと好きだったんだよねー♪ 驚いた?」

「え、あ...あはは。またまたご冗談を!」

「え? ...本気で言ってるんだけど」


ニコニコと嬉しそうに言われるから冗談だろうと思って笑ってみたら低い声で固定された。

その声音が恐ろしい...

あんなにニコニコしていたのが嘘のように無表情になってしまった。

なんか負のオーラのようなものを感じるんだが。

恐怖を紛らわすように世話しなく視線をさ迷わせて打開策を考えていると、突然の声に思考が中断される。


「付き合ってくれるって言ったよね?」


あっ、あれはそう言う付き合ってだったのか!!

あまりに自分に縁遠いことだから気付かなかった!!

己の失敗が悔やまれる。

とてもじゃないけど勘違いしちゃって、テヘぺろ☆ で済まされない気がする!

...ってかブスの私がそれしたら殺される!!

顔のいい人って断られたことないから断られると激怒したり異様に執着したりするっていうし...

私が思考する間も謙一君の冷たい目にずっと見詰められ...私は観念した。


「いっ、言ったよもちろん! 私達恋人同士だよね☆」


緊張の為つい右目の辺りでピースしてウインクして舌を出してしまった。

テヘぺろだ!

普通の人ならゲロ吐く行為だが、彼は頬を染め嬉しそうに笑ってくれた。


大丈夫かこの人...?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ