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心の変化?

 僕が男爵に対して提示した条件はとても簡単なものであった。


『ルナとアルテミスを僕が引き取ること』、『父王への手紙を届けること』、『暫く滞在させること』の3つである。勿論、3食も付いてくるし、ドレスではない着替えもそれに含まれている。


 つまり、簡単に言えば衣食住である。


 父王への手紙の内容はルナとアルテミスに案を出して貰い、検討に検討を重ねた。

 僕は、というかシャルロットはまだ15歳なので学校に通わねばならないのであるが、その先には第2章の存在がある。


 2つの貴族の大御所の御曹司達が待っている。

 いや、待ち構えていると言っても過言ではない。


 大御所とは公爵と侯爵である。世間一般では公爵の方が格が上ではあるものの、現王妃である僕の母は侯爵家出身であるため、優劣は付けがたい。


 まあ、どちらでもいいんだけどね。


 ……じゃなくて、どちらも結構です。間に合ってます。私はそれどころじゃないんですっ!



 ギルバートとの話で、私達は北側の別館に住む事となった。彼もいまや私に忠誠を誓い、言葉遣いも以前の比では無い。

 それに加え、ルナとアルテミスに接する態度も私の配下として、それなりの待遇に変わっている。


 リンもギルバートと同じで、私の身の周りの世話を買って出てくれる。だが、言葉の端々からリンの頭の中には、僕が王宮に戻る時に侍女として王宮に入り込みたいとの思惑が見え隠れしている。


 王宮内には、上級貴族や豪商、他国の王子や上級騎士などの将来有望な若者を真近で見るだけではなく、偶にはお喋りをする機会もあるから、たぶんそれが目当てなのだろう。


 まっ、僕に逆らわないならそれでいいが……。


 僕にリア充なんて関係無いし、反対に関係あるなら大変なことだ。



 ……だから、寂しくてもいいんだよ。



 別宅に移り住むと食材はルナとアルテミスが買ってきてくれるから、毒や睡眠薬などの心配は要らない。

 父王にはギルバート男爵が私を助けてくれた事を丁寧に記して、リンともっと仲良くしたいとの思いから男爵家での暮らしを認めて頂いた。


 ただし、男爵家の周りには近衛師団の1個中隊が取り囲み、私の身の回りの世話をするメイド達も送り込まれた。

 それに加え、1度は顔を出しなさいとの命令が記されている。


 ああ、父王に会わなければならない。



 ────それって、苦痛だ。



 だが、何と言っても今回のことで1番嬉しかったのはお金の件だった。


 ギルバート男爵にも御礼として金貨を500枚という大金を渡されたみたいで、ハリウッドスターの様な奥方は洋服を新調してばかりいるし、館の手直しや新たな使用人を数人雇い始めた。


 僕にも金貨100枚という破格な金額が渡された。

 それでも1月分というのだから、さすがに僕もかなり驚いた。


 早速、ルナとアルテミスにお給料を支払う。

 まずは、金貨を10枚ずつ。

 これで満足な生活は保証されるだろう。


 2人ともとても喜び僕に感謝している。2人が喜ぶ姿は僕にとっても凄く嬉しくて、僕としては不思議なことに不意に目頭が熱くなり頬に涙が溢れてしまった。


 2人は慌てて、僕の事をあれこれと心配しているのだが、僕が涙を流した原因は自分でわかっている。


 乾いていた僕の心を2人が解きほぐしてくれたのだろう。いままでは生きていくだけで精一杯で、何をするにも余裕が無さ過ぎた。

 そのことを正面から受け止める勇気が無いから、何に対しても適当に応対してばかりだったんだ。


 いまならわかる。

 もう、遅いのだけど。


 大切な人が喜ぶ姿を見て、それを喜ぶ自分なんて、前の世界では想像も出来なかった。いまの自分は前の自分よりも素直になっているし、前の自分が出来なかったことをいまの僕はしている。


 このために転生したのだろうか?


 いくら考えても答えは出なかったが、この世界で生きる限り友人を大切にしたいと心の底から思った。



 そのためにも残った金貨はなるべく取っておく必要がある。いつか安心出来る状況になれば、別の国に逃げ込んで新たな生活が出来るように貯めておかねばならない。


 それも出来れば3人で……。





 次の日に早速、王宮に向かうと伝達を近衛師団中隊長であるグレイにお願いすると2時間程度で許可を貰って来てくれた。


 王宮に入るのに私には許可など必要無いのだが、ルナとアルテミスを私の専属として父王に認めて貰わなければならないと思い、2人のために侍従長に許可を得た。


いまの僕には、この2人が大事な友人だから父王に正式に侍女とすることをお願いすることにした。そのついでにリンのことも軽く紹介しておこう。

ただし、リンは父王には会わせず侍従長までの紹介にしておこう。それでも十分過ぎるだろう。


 次の日、僕と他3人を乗せた王家の紋章をつけた馬車はギルバート男爵邸を出発して、30分かけて王宮にたどり着いた。


 公爵家なら5分も必要無いと知っているから、ギルバート男爵の地位はやはり男爵の中でも低い方なのだろう。


 王宮内の自分の部屋と思わしき部屋に通される。

 ゲームの中で見た事はあるから別段、驚きには値しないが、リンの館とは造りや調度品が全く違う。

 さすがは王宮というべきだろう。


 10人のメイドが扉を開けると左右に分かれて待っている。その真正面に11人目の一際美少女なメイドが立って両手を広げて待っていた。


 ……!?


 その美少女メイドは僕を見るなり飛びついて来る。


 詰め物が入っていそうな柔らかな胸の弾力で僕の方が恥ずかしくなる。



 しかし、誰だったっけ?



 意図せず『ステファニー』という名前が頭の中に浮かんで来た。


 確かシャルロットの幼馴染み。

 侯爵家の第2子の姫殿下だったはず。

 そして、僕の身の周りの世話を指揮する僕付きのメイド長だったと思い出す。



 ステファニーに簡単な嘘の経緯を説明をして、ルナとアルテミスとリンを紹介する。


 ステファニーは全然面白く無いというように見えるが、単に3人に嫉妬しているのだろうと思い当たる。



 ……勝手に記憶が作られて心の中に浮かんで来る!?


 これって、マジでヤバいかも?


 もしや、ステファニーは攻略対象だったのか?


 次第に気持ちの余裕が無くなって来た。


 早く男爵の家に戻らねば、予期せぬイベントが発生しそうだ。


 そんなことを考えている時に侍従長が僕の部屋にやって来て、父王が呼んでいることを伝えた。


 僕はリンだけをステファニーに任せ、急ぎ王の居室に向かうのだが、何故か焦りと動悸が止まらなかった。




父王の居室に通されると、僕は自然にドレスのスカートの両側を僅かに持ち上げて跪づき頭を垂れた。僕の後ろにいる2人も同じ動作を優雅に真似る。


暫く待たされた後に、父王が現れたので、僕は再度び頭を低くして口上を述べた。


「皇帝におかれましては……」


というところで父王に話しを遮られた。


「ワッハッハ、シャルロット、久しぶりだな。

元気にしていたか? 父は寂しかったぞ!

偶には父にその綺麗な顔を見せに来なさい」と砕けた口調で会話が始まった。


「皇帝さま、あの〜、お願いがあるのですが……」


「いまは皇帝と言うな。父で良い。人払いもしてあるから心配無用だ。それで、どのようなお願いかな?」


うん、かなり話しやすい雰囲気だ。

僕は意を決して2人のことを話し始めた。

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