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父王との対面!

 うたた寝が終わりを告げる。

 ゆさゆさと揺られた感じがして、目を覚ました。

 目の前に居るのは、ナターシャ様だった。


 僕を見ると、目に涙を浮かべて抱き付いて来た。

 懐かしい気持ちがして、僕からも抱き付いた。

 しかし、失礼ではあるが、多少は目方が増えているみたいで、ウエストが一回り大きな感じがする。


「シャルロット、今まで如何されていたの?

 いきなり音信不通になるなんて、とても心配していたわよ」


 優しい言葉には潤っとしちゃうが、初めて知った僕の事実に驚きを隠せない。


 行方不明になっていたとは、隠さなければならない事だったという理解でいいのだろうが、その理由が思いつかない。

 僕を殺めることで、アストラーナ帝国の中に反発でも起こる可能性があるのか、はたまたまだこの企みを知られるのはまずいという事なんだろうか?

 知られるのに時期が早いという事も考えられる。


「えっと、詳しく話せないのですけど……。

 実は、アズール皇国の知り合いが、オメデタなのでお祝いの品を届けついでに会いに行って来たのですよ。

 父王から外出の許可が下りなくて、こっそりと行ったから、皆様はお知りじゃ無かった様ですね。

 ごめんなさい」


「あら、それは仕方ないわね。

 でも、次が有ればこっそりじゃ無くて、私には教えておいてね」


 にっこりと笑って、僕に言う言葉には他意はないと思える。アズールにお祝いの品は、ちゃんと置いて来たから嘘でもない。


 ドラちゃんの鱗を剣の形に加工した残りで、2人にはお揃いのペンダントを作ってあげたのだから!

 加工し難いドラゴンの鱗は、持っていると幸せになれるとの言い伝えがあるらしく、イザールとフィズだけでは無く、ミーシャにもデザインの違うペンダントをプレゼントしている。


 後は大体が屑だけだったけど、その中に細長い二等辺三角形の部分が偶然にも2つ合ったから、それはピアスにして、僕用として取っている。


 残りの屑はミーシャに渡した。

 何やらお薬の原料になるとのことらしい。


 ナターシャ様は話すだけ話をすると、「またね」と言って部屋から出て行ったが、誰が言ったのだろうか?

 まだ、リーナ母様にも会っていないのに……。


「シャルロット様、ナターシャ様はなんと仰られてましたか?」


 ナターシャが出て行った後にアルテミスが小声で質問して来た。

 それに合わせて、僕も小声で話してしまう。


「私の姿が見えなかったから、ここ最近の行動は何をしていたのかの確認でしたよ」


「やっぱり、シャルロット様の事を気になさって、毎日こちらに来られていましたもの」


 ……ということは、ナターシャ様は何か関係しているのかな?

 そういう事なら、今後は要注意人物にしておこう。

 しかし、お母様は僕がいる事に気付いてないのだろうか?


「アルテミス、お母様はどうしていらっしゃるの?」


 僕が聞いた途端にアルテミスの表情が曇る。

 何かあったのかな?


「リーナ様は、今は宮殿の病棟におられます」


 ……やっぱりだ。


 裏で誰が暗躍している様ですね。

 そいつらを根絶やしに追い込んでしまいたい。


「お母様のご様子は?」


「私達には、はっきりとは知らされていません。

 ですが、姫様にはお聞きになる権利があると思うのです。だがら、侍従長にご相談ください」


 アルテミスだけでは無く、ルナまで心配そうな顔をしている。


「侍従長は、私も少し苦手だから、折をみて聞いてみるわ」


 まさか、顔を合わせると捕まるとは言えないもんね。


「はい」とお利口さんの返事だったが、アルテミスの方は、多分、その理由まで多少は知っているみたいに思える。根拠は無いが、なんと無く歯切れが悪い話し方だったから、そう思ってしまう。

 思ったよりも重症なのだろうか?

 ミーシャの万能薬が効くなら、飲ませてあげたいけれど、その前にしなければならない事が山程ある。


 アルテミスにグレイを呼んで来る様に頼んで、着替る事にした。どうせ、グレイはすぐには来れないだろうし、ドレスを替えなければいけない。

 父王に会うには、それ相応の姿になっておかねばならない。そうでなければ、不敬罪として娘であっても父王は容赦しない。


 父王の好みのゴスロリ風なドレスに着替えて、ニーソを履いて、姿見の前に立つ。

 いつ見ても、目眩がしてしまう。

 前の世界なら、これでアルバイトが成立するじゃないか!

 しかも、この容姿ならNo. 1にだってなれるだろうし、どうして父王に会うだけでここまでしなければならないのだろうという思いが強い。


 ただ、今の私が普通に姿を見せるだけで、捕らえられてしまうのは間違いないだろうから、少しは抵抗する為に、父王のお気に入りの姿にならなければいけないだろうし、あわよくばお許し頂けたら幸いだ。


 1時間程度経ってからグレイは現れた。

 僕が父王に会いたいと話を切り出すとグレイは反対して、話を聞いてくれない。


「グレイが手伝ってくれ無くても、私独りで父王の執務室に行きますからね!」というひと言で、やっとグレイが重い腰を上げてくれた。


 一応、父王に会う段取りまではしてくれる事と約束をしたが、その先は未定だ。

 執務室には、僕独りで行く事になるだろうから、グレイの心配が痛い程伝わってくる。


 しかし、父王をなんとかしなければ、どんなに頑張っても進展しないから覚悟は出来ている。

 今は、この命を賭けてでも守ることがある。


 その後は、僕がグレイに捕まえられた形となり、父王の執務室に連れて行かれることになった。


 僕のポケットには青い薬瓶を入れている。

 父王を正気に戻す唯一の手段だ。

 黒い瓶は、万一の時に備え、アルテミスに預ける事にした。僕が死んだ時に口に含ませて欲しいとの伝言をしている。


 あとは、運次第だろうが……。

 後悔しない為にも、頑張ろう。

 そう強く思った。

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