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密談?

 メイド2人を買収した目的は、これと言って決めていないが、結構都合が良いかも知れない。


 メイド達にお願いした無理な依頼も驚かずに引き受けてくれた。


「あの、リンさんを連れてきて欲しいのですが……。それも眠らせたままで」といった普通では無い依頼であった。


 2人は頷くと、音も立てずにドアから出て行った。


 それから5分も経たずにリンが寝たまま2人に両脇から抱えられて連れられてきたのには驚きより恐怖を感じてしまう。


 リンはそのままベッドに運ばれて横たわらせる。

 綺麗な金髪が顔に掛かり、その美しさを隠しているが、相当な美人であることに変わりない。

 顔は母親に似ているのだろうか?

 僕の感想として、惜しむらくはCまでない胸だけだろう。



 しかし、……どうやったんだ?


 仮にも雇い主なのに、お金の威力ってすげーな。


 いや、もしや銅貨の価値が違うのか?


 普通の乙女ゲームやRPGでは、1番安いお金の単位の筈だが、違うのか?


「銅貨で買える物は何があるんですか?」


 近くにいた銀髪のショートヘアのメイドに聞いてみるが、平然と答えた内容には、驚くような内容は無かった。


 りんごなら5玉、お酒なら1瓶、宿屋なら素泊まり1泊というものだから雇い主のリンを拉致するには他に理由があるのだろう。


 もしや、この2人はリンを以前から嫌っていたなら納得がいくのだが、眠らせることは簡単には出来ないのではないか? まだまだ疑問が残ってしまう。


「もしかして、2人ともリンさんに何か恨みでも?」


 2人の顔を交互に見つめるが、視線を外すだけだった。しかし、それで十分過ぎる。

 当たっているからこそ、僕のことを直視出来ないんだろう。


「あの、私は誰にも言いません。私も先ほどグラスに変なお薬を入れられていましたから、困っていたところです。もし宜しければ、少しの時間で結構ですから、私にあなた方を雇わせて頂けませんか?」


 ちらりと2人の前に銀貨を取りだしてさっとポケットにしまう。

 2人はお互いの顔を確認してから、私に頷く。


 これで契約が成立した。



 ◇◇◇



 その後、僕達は3人で相談した。


 リンを眠らせた方法を真っ先に聞き出したが、部屋の中で既に寝ていたそうだ。

 やはり、ワインの中身は睡眠薬だったのだろう。

 吐き捨てて正解だった。


 2人には信用料として、銀貨を1枚を前金で支払っている。

 残りの1枚は、成功報酬という形で渡す事となった。


 どうやら、1枚の銀貨は彼女らのお給料の3ヶ月分に相当するらしい。

 そして、ついでに貨幣価値も教えてもらったが、これは他のゲームとは少しズレがあった。

 銀貨1枚が銅貨の100枚の価値があるそうだ。


 いま思えば、勿体ない事をしてしまったと思うのだが、この2人はなかなか頭が良くて行動力もあるから味方としては十分であり、心強いといえるだろう。

 このまま知らずに敵に回せばえらい事になっていたはずだから安い買い物だったと思う事とした。


 なにせ、この世界自体を知らないとは公言出来ない立場というのが僕の弱点だと痛感してしまう。

 僕は王女と間違われているので、世間知らずで通じるのがせめてもの救いだね。


 そんな背景まで考えると、2人は本当に心強い味方といえる。



 2人の名前はルナとアルテミスという双子の姉妹。

 綺麗な銀髪でショートカットで青い瞳がルナであり、セミロングで緑の瞳がアルテミス。

 容姿は言わずと知れた美形であり、プロポーションも大概にせいとばかりに女らしい。

 身長は僕よりと多少低めとなっている。160cmぐらいかな?

 髪型と瞳の色がが同じなら見分けがつかない。


 彼女達は小さな頃に気付いた時には施設に預けられていたという。

 その施設からギルバートに引き取られて、安価な賃金で朝から晩まで働かさせる毎日を送っていたそうだ。そんな彼女らにリンは冷たく接していたらしい。


 裕福な生活を夢見ているが手に入らない生活の中で、リンに対する憎悪が募っていったのだろう。


 しかも、2人の両親のうち、片方は貴族であるから尚更悔しいだろう。

 このゲームの中では金髪と銀髪キャラは貴族と決まっていたから聞かずともわかる。


 同じ孤児院暮らしという点も親近感が湧いてしまう。


 年の頃は中3ぐらいかな? 

 可愛い妹が出来たみたいで、少し楽しい気分になっている。

 『このまま僕と行動して貰いたいなぁ』って気持ちになってしまう。




 さすがは乙女ゲームといえども見事に美形ばかりがそろい踏みだ。

 あまりカスみたいなのは目にしてない。


 あまりというのは、門番とか通行人とかのキャラは適当な感じだったような気がする。

 だが、いままでに無い程、転生後の行動や考察は真剣だったため、どうでも良い情報は頭に抜かっていないので詳細に思い出せない。


 しかし、何といっても容姿は主人公の僕が1番勝っていると言う事実は変わりない。

 乙女ゲームで主役が可愛くないなんて、乙女ゲームとは名乗れないし、クソゲーだ。


 そんなのは、まず買わない。


 いや、誤解を招くといけないから、1つだけ言っておくと僕も買ってない。

 そんな趣味の奴が施設内にいたから、暇つぶしに遊んでみただけなんだが、その時は……思い出したくない。


 ……あんな奴に落とされてしまうのだろうか?


 このまま進めば、第1章を終えずに攻略されるのが目に見えている。


 しかし、今さらながらこのゲームをしといて良かったのだろうか?

 ゲームをしたからこその苦悩であるのかは判断つかないのだが、RPGでステータス1から生きるよりも状況的には悪くは無いだろう。



 ただし、1点だけを除いて…………。



 そうです。

 性別が変わっているという所だけです。



 ……もしも男になんて攻略されてしまうのなら、いっそのこと死んでしまいたいよ。

 そうだ、短刀は肌身離さず持っておこう。

 いざという時には決意しておかねば……。



 本当にもしも、万が一でも、そうなってしまったらとても大事なものを無くしてしまう予感がする。




『男の尊厳』というものを。




 転生する時に記憶をさっぱりキレイに消してくれたならどんなに楽だっただろう?



 さてと、まずはギルバート潰しに取り掛かりましょうかね。


 アルテミスが紅茶を入れて来てくれたので、3人で一緒に紅茶を戴きながらソファで顔を寄せてコソコソと密談すること30分、何とか方針が見えてきた。



 僕は壁に飾られた細身のレイピアを手に取り、軽く振ってみるが難なく振りきる事が出来た。

 これなら僕でも大丈夫だろう。


 おてんばというゲーム内設定で助かった気がするよ。

 それなりに筋力があるようだ。


 アルテミスにギルバートを呼んで来るように頼んで、僕とルナは細いロープでリンの身体をきつく縛り上げた。


 さあ、どんな反応をするか楽しみだ。


 久々に僕の顔は笑っている事だろう。

 ルナの顔はあからさまな笑顔では無いが、口角が少し上向いていることで心情が読みとれる。


 これなら、裏切りることは無いようだ。

 それからドアがノックされるまで僕とルナは息を殺して待っていた。

PVが凄くて、怖いぐらいです!

読んで頂き、感謝です。

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