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いざ、アズール皇国へ!

 父王からもらった剣で、小枝を切ると、当然のようにサクっと切れる。


 これが、剣独自の切れ味なのかどうかは分からないため、太い幹の低木を切ってみた。


 またもやサクっと切れる。


 剣の切れ味もさることながら、僕の持ち前の能力がこの剣にも使えているみたいで安心した。

 いくらナイフで無双出来ても相手に届かなければ意味は無い。

 更に、自分の腕に剣を押しつけるが、かすり傷1つもつかない。



 他も同じだろうから、気にせず左腰に差すと、さすがに鋼鉄製のレイピアとは重さが違って動きやすい。

 こればかりは、父王に感謝と思うが、さっきの失態というか、みなさんの前で辱められた恨みだけは帳消しには出来ない。



 いつか、何かいい案が浮かんだら反撃してあげよう。

 焦らずに、効果的なものを贈ってあげましょう。

 この可愛い娘からね!


 そんな、こんなしていると出発時間が遅れていた時に父王が勝手に出発の合図をしているから、更に頭に来た。



 ぷんぷん!



 少し、ふくれっ面で見送る父王に向かい、「いーだっ!」とあっかんべーの仕草をしたのは大人気無かっただろうか? 何故、そんな反応を僕がしたのかを父王は分かっていないらしくしょんぼりしているが、いい気味だ。



 王宮の窓から、リーナお母様やルナにアルテミスが手を振って見送ってくれる。

 定番なのだけど、アルテミスがハンカチを口に当てて、目を真っ赤にして見送ってくれる事には感謝している。


 アルテミスはストレートに感情を表すのだけれど、ルナもかなり心配してくれているのだろうね。

 ルナが不器用ということを僕はちゃんと分かっているから、大丈夫だからね。




 王宮から外に出ると、馬の走る速度が急に上がった。

 意外と馬の後に乗るのは結構難しい。



 当初、僕は1人で馬に乗って行くことにしていたのだが、熟度が浅いということや前からの敵襲で殺されないように、人の後に乗る事に決められた。


 決めたのは、言わずと知れた父王とグレイの2人からなので、僕には反論の余地は無く、ブツブツと文句を言う程度しか出来ていない。


 内心では不満たらたらなのである。

 馬に乗っての爽快さは、乗馬をした事がある人なら分かるだろうが、人の後に乗るという事は風を切る気持ち良さも視界に入る風景の楽しさも半減してしまうのである。



 まして、僕の前に乗るのは言わずもがなである。

 つまり、グレイさま。



 フラグを折ったばかりだというのに、凄まじい勢いで再び、見事にフラグが立ちやがった……。


 しかも、騎士という身分ではなく公爵家嫡男という堂々たる地位も付け加わって、棒に恋愛フラグが付けられていたとするなら、今や鉄棒に恋愛フラグが付いている状況だ。



 このフラグを折るには、相当な苦労が必要だろうし、果たして折れるのか?



 曲げるだけなら出来るかも知れないが、それでは結果は一緒になってしまう。




 ……やっぱり――





 …………こうりゃく……されるのだろうか?



 いやいやいやいやいや、諦めたらそれが最後になってしまう。



 ここは、股を引き締めて……じゃなく、気を引き締めて対応していくことに集中しよう。


 でも、ここですでに難儀な事になっている。

 いま真剣に考えていることは他でもない掴まり方なのですよ。



 僕のこの少し小さめとは決して言えない形の良い胸のことで悩んでいる。

 普通ならグレイの腰に両手を巻き付けて、グッと密着するべきなのだろうが、それは余りにもグレイに豊かな感触と妄想を与えてしまうし、僕もなんとなく嫌だ。


 しかし、横座りとなると急ぐ馬からの転落を覚悟しなければならない。


 ……転落ってことは、簡単に死亡する可能性が高いことになる。



 さて、恋愛フラグを取るか、死亡フラグを取るか……。


 事の起こりは、これも父王の言葉が僕には仇になっている。


 早く馬を走らせるには、鎧は必要無いだろうということで、それは至極当然のことと思えるのだが、僕がそんな姿でしかも人の後に乗馬するのなら、かなりの支障が出てくるのだが……。




 男の単純な発想では、これを知りながら、どうこうする気も無かったのだろう。


 たぶん『これぐらいはグレイにサービスしてあげなさい』という男的な気も落ちなのだろう。


 それは僕にも良く分かる。

 かなり良く分かるのだ。


 男って、単純だから電車なんかに乗っていて、可愛い女子の隣に座ってくれるだけで、顔は平然としていながら『ラッキー!』って心の中で思ってしまう動物なのだと自分でも理解している。


 だからこそ、逆パターンとうい状況のいまでは嫌なんだ!


 胸の前にに何か厚手のタオルなんかを充てるという事も考えたが、それはグレイに失礼だ。




 そんな考えが頭の中を駆けめぐったのだが……。


 現在は、そんな考えも虚しく、恥ずかしながらもグレイの背中に身体を預けている。




 …………くぅーーーーーっ! 



 恋愛フラグが付いている鉄棒が一回り太くなった気がするのは被害妄想なのか?


 いいや違うよね!


 でも顔が赤いのを見られないだけでも『まぁいいか』という気になってしまう。



 だけど、グレイのルートが異常に長すぎる気がしているのだが……。



 これから向かうアズール皇国でも本来はイベントが発生する予定なのだが、それはアズール皇国の建国記念を祝う親善団として赴くパターンであって、本来のルートには無い現在の状況では発生しないのだろうか?


 そういったことからグレイルートが続いているんだろうか?



 一旦、誰のルートでもない共通場面にたどり着ければ、攻略はされずに平穏な暮らしを手に入れ等れるのだが……。



 万一、アズール皇国でも新たなフラグが立つなら、グレイとは違うシチュエーションとなることだろうが、グレイのフラグが消えるとは思えない。


 2、3人以上から同時に攻略される前触れなのかも知れないという事だけは、忘れずに覚えておかねばならないだろう。



 帝都を離れて、休息を取る時間、僕は木陰で水を飲んでいたが、隣に立って周囲を見張っているのはグレイである。その凛々しさには感涙ものだが、グレイの顔には誰にも自分の立ち位置を譲る気は無いというような気迫が漲っている。


 僕の味方としては頼もしい限りだが、複雑な心境で飲む冷たい水の味は、何故かほろ苦い味がした。

今日は更新出来ました。


只今、お仕事が立て込んでいますので毎日更新出来ない時もあります。その時には、ご容赦ください。


読んでいただき、ありがとうございます!



ソら

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